アジア法教育プロジェクト(総合)

  • 目標3:すべての人に健康と福祉を
  • 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
  • 目標8:働きがいも 経済成長も
  • 目標10:人や国の不平等をなくそう
  • 目標11:住み続けられるまちづくりを
  • 目標12:つくる責任つかう責任
  • 目標16:平和と公正をすべての人に
平野 温郎
法学政治学研究科
教授
基本認識~持続的で健全な経済発展に寄与する「法の支配」と責任ある企業活動
アジア各国の法体系は多様で独自の発展を遂げてきたが、実態としては法整備の進捗に差があり、古い植民地時代のままになっていたり、社会の実態から乖離していたりする国もある。そもそも「法の支配」(Rule of Law)が確立されておらず、権力者による恣意的な「法による支配」(Rule by Law)が行われている国もある。この「法による支配」は「法の支配」とは似て非なるもので、人権侵害や格差、汚職・腐敗、不平等を生み、社会や経済の持続可能性を損なう温床となり、適法かつ適切な企業活動の阻害要因ともなっている。アジアの経済発展にはやはり日本など先進国企業の進出が欠かせず、その促進には法整備や法の支配の確立が不可欠である。

一方、企業は、法を駆使して自らの正当な権利を守り、競争力や収益性を高めて投資家の期待に応える責任を負う反面、その活動は現地社会の一員として倫理的、互恵的であることが求められる。現地国法の理解と遵守はもちろん、法の支配に配慮しつつ活動することが求められており、近年は、たとえ合法でも児童労働により生産された原材料は使用しないなど、いわゆるフェアトレードを重視する企業が増えている。投資家側にも、そうした高次の社会的責任を果たしている企業を選んで投資するESG投資が普及しつつある。

目指すもの
「法の支配」に貢献する人材を育てることを目指す。日本企業のアジア事業展開を念頭に、アジア諸国の法制度全般や契約法・会社法・労働法など、主なビジネス関連法を“正しく知る”ことからスタートする。各国の大学教授や企業法務弁護士と東京大学の教員が共同で、日本の法・社会と比較しながら各国法の特徴や相違点、背景にある社会との関係性を解説する。これらの知見を基に、学生が、アジアの持続可能な発展の基盤となる「法の支配」の意義や、企業活動上の課題・リスクを自ら見出すよう促し、将来それぞれの立場でその解決に貢献できるような、バランスのとれた視座、法的センスを獲得できるように働きかけるという場である。

具体的な教育研究の内容
本プロジェクトでは、毎年、下記の体系図に示したような講義科目・セミナーを開講している。 中でも「Asian Business Law Seminar」(演習)では、シンガポールやインドネシア、タイを始めとする各国の講師を招聘し、各国のビジネス法に関する体系的な講義を英語で展開しているほか、より専門性の高い社会人向け公開セミナーも行なっている。また、夏季に行なう「東アジア法集中講義」では、民法のほか、ビジネス法として会社法や、企業の知的財産権を守ることでイノベーションを促すとともに社会の発展にも寄与する知的財産権法も取り上げている。この講義は、中国・香港、韓国、台湾の大学教授が自国の法制度を解説し、日本法の専門家である東京大学の教員や学生と、特徴的な論点を比較検討する双方向の演習方式で進めている。

更に一歩進んで、アジアの発展途上国では、法律の適切な起草や運用能力を持つ人材を育成することが「法の支配」の確立を促し、健全な経済成長のために必要だと認識され始めている。これに寄与する日本の「法制度整備支援」について講義で触れるとともに、法曹の卵である法科大学院生向けに連続講演会を開催し啓発に努めている。
アジア法教育プロジェクト 講義体系図
アジア法教育プロジェクト 国際セミナー 2020年1月

共同実施者

オーストラリア国立大学
シンガポール国立大学
インドネシア大学
タイ・チュラーロンコーン大学 他
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