日本各地域の文化資源保全と地域アイデンティティ構築への貢献

  • 目標4:質の高い教育をみんなに
  • 目標10:人や国の不平等をなくそう
本郷 恵子
史料編纂所
所長/教授
史料編纂所は、従来より、自治体教育委員会等と連携した史料調査・研究、数多くの自治体史編纂への参画などにより、地域との連携を蓄積してきた。成果を広く公開して地域の歴史資料を研究素材として活用しうるように整えるとともに、地域の歴史資料の保全の一翼を担ってきた。現在では、共同利用・共同研究拠点という枠組みを加えて、日本各地域の研究者・博物館等・自治体と共同して、地域関連の歴史資料の研究資源化を進めている。成果を地域に還元する工夫を凝らし、歴史資料を通じた地域のアイデンティ構築、さらには地域の活性化に貢献している。地域で歴史資料を継承し活用する人材の育成の役割も果たしている。なお、自治体史編纂の一部は、受託研究として遂行している。 この事業は、特定の地域に限定せず、多くの地域と同時並行で連携を進めていることが特徴である。個別プロジェクトの一端を紹介すると、[1]兵庫県立歴史博物館との共同研究で豊臣秀吉自筆書状の新発見があり、本年7月7日の記者発表は全国紙各紙に大きく掲載された。共同研究の成果は、同博物館の今秋の特別展で一般に公開される。[2]島根県・益田市と、史料編纂所所蔵「益田家文書」と現地所在の関連史料につき共同研究を実施し、その成果は今秋、益田市等が主催する島根県立石見美術館の企画展で一般に公開される。益田市が認定を受けた地域再生計画「歴史を活かしたまちづくり」に寄与している。[3]愛知県新城市主催で、長篠・設楽が原合戦(1575年)の共同研究の成果還元のため2016年2月にシンポジウムを行い、その後、同市設楽原歴史資料館で関連史料の展示を行った。[4]那覇市で2015年12月に琉球関係史料に関する共同研究の成果としてシンポジウムを行い、2017年5月に書籍を刊行した(下掲)。[5]長野県立歴史館の「地域と共働した信濃史料・善光寺関係史料データベース等構築・公開事業」は、『信濃史料』収録史料に関する共同研究から発展し、2014年度に文化庁「地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業」に採択された。[6]秋田県公文書館所蔵秋田藩家蔵文書等を対象に、同館等と共同で調査・研究し、成果を撮影デジタル画像にメタデータとして付与し、史料編纂所閲覧室に加え、秋田県公文書館からも史料編纂所サーバにつないで閲覧可能とした。地域歴史資料の地元での公開という意義は大きい。また、2016年から、「あきたスマートカレッジ」で史料編纂所特別講座を継続している。[7]2017年、京都府立京都学・歴彩館および公益財団法人陽明文庫と協定を結び、史料編纂所が作成した陽明文庫(京都近衛家)所蔵史料のデジタル情報(画像・史料情報)を、史料編纂所閲覧室に加え、同館から公開することを可能とし、史料伝存地域での研究環境を大きく向上させた。
2017年秋石見美術館企画展チラシ
島根県立石見美術館
秀吉自筆文書新発見を伝える毎日新聞

プロジェクトに関するURL

主な関連論文

・黒嶋敏・屋良健一郎編『琉球史料学の船出』2017、勉誠出版
・佐伯徳哉ほか「島根県浜田市三隅歴史民俗資料館寄託「三隅二宮神社文書」中世分の翻刻と紹介」2016、『史料編纂所研究紀要』26
・たつの市立龍野歴史文化資料館『秀吉からのたより・(村井祐樹編)脇坂家文書集成』2016
・新城市設楽原歴史資料館『古戦場は語る 長篠・設楽原の戦い』2014、風媒社
・田島公編『近衛家名宝からたどる宮廷文化史―陽明文庫が伝える千年のみやび』笠間書院 2016年

問い合わせ先

  • 担当: 史料編纂所総務チーム
  • 電話: 03-5841-5997
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