歴史資料を未来に伝える保存技術の研究とその共有化

  • 目標4:質の高い教育をみんなに
  • 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろ
尾上 陽介
史料編纂所
副所長/技術部長/教授
歴史資料あるいはその複製物は、現段階で利活用するばかりでなく、保全し子孫に伝え、未来社会に生かすことも求められる。そのためには、現状の把握と記録、劣化を防ぐための適切な措置(修理など)と最適環境での保管が必要となる。保全を実現するための技術は、多様な学問分野の知見・技術を活用する研究から生み出され、その研究は文理融合研究の好適事例となりつつある。史料編纂所では、技術部史料保存技術室を中心に、教員と技術職員が協力し、関連事業者とも協業して遂行している。さらに成果として得られた保存技術をオープンにし、一機関の成果に止めないことにも努めている。具体例を挙げると、[1]原資料のうち紙媒体資料では、光学的技術に基づく他分野の研究成果を応用し、紙の組成を分析して修理の基礎データとする研究を継続している。最近ではデンプン粒の分析の専門家を招請して新たな知見を得つつある。採取すべき数値データの定型化を図り、データベースとして公開を準備している。データの共有化は、資料保存の基礎となるだけでなく、歴史研究の素材としての活用にもつながる。[2]ガラス乾板(フィルムの前の写真素材)では、各機関で扱いに困惑する状況のもと、デジタル撮影の方法から資料情報のデータ化、保存までのモデルタイプを率先して確立し、更なる発展を目指している。データベースシステムの配布や書籍刊行で成果の周知を図り、高い評価を受けている。[3]デジタル写真では、組織として保存・活用するため、撮影から管理・利用まで一貫した方式を他機関に先駆けて確立し、見直しを継続している。成果はシンポジウムなどで公開するとともに、大分県からの需めに応じて、博物館学芸員や自治体職員を対象に撮影に関する講習会を重ねている。複製物の保全研究は、災害対応としても重要である。
和紙の組成分析のための透過光観察
大分県立先哲史料館における史料撮影技術講習会

主な関連論文

・久留島典子・高橋則英・山家浩樹編『文化財としてのガラス乾板―写真が紡ぎなおす歴史像―』2017、勉誠出版
・東京大学史料編纂所研究成果報告2015-1『東京大学史料編纂所所蔵『中院一品記』修理事業に伴う調査と研究』2015
・東京大学史料編纂所研究成果報告2014-8『組織によるデジタル撮影画像の生成・管理』2014

問い合わせ先

  • 担当: 史料編纂所総務チーム
  • 電話: 03-5841-5997
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