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クリーム色と茶色の表紙

書籍名

労働紛争処理法

著者名

山川 隆一

判型など

372ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2012年1月30日

ISBN コード

978-4-335-35521-9

出版社

弘文堂

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労働紛争処理法

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本書は、近年における個別的労働紛争の増加やそれに伴う労働紛争の解決手続の整備の進展を背景として、労働紛争処理制度や手続等にかかわる法的規律を包括的に検討したものである。
 
具体的には、第1部において、労働紛争の意義や解決をめぐる基礎的な視点を示したのち、企業内の自主的な紛争解決も視野に入れたうえで、労働紛争解決システム全体の現状を紹介し、そこでの課題を指摘した。
 
次に、第2部においては、労働紛争の解決のために用いられる主要な制度およびそこでの手続につき、行政上の制度と司法上の制度とに分けてそれぞれの内容を紹介し、そこで生じている論点については、裁判例や学説を踏まえてやや理論的な検討も行った。
 
さらに、第3部では、労働法における要件事実を取り上げた。要件事実は、実体法上のルールを裁判等による紛争解決という観点から整理し直したものであるが、ここでは、労働紛争をめぐる主要な訴訟類型において問題となる要件事実についての検討を行った。
 
労働法学においては、これまで、労働法の対象領域として、総論、個別的労働関係法、集団的労働関係法、及び労働市場法という4領域が主に想定されてきたが、本書は、それに加えて、労働紛争処理法という領域が存在するという発想に立って、当該領域における法規律の体系化を試みたものであり、その点で理論上のオリジナリティーが存すると考えている。
 
また、法律学においては、最近、裁判実務等を念頭に置いた要件事実の検討が盛んになっているが、労働法における要件事実の検討は必ずしも十分ではなかった。そうした中で、本書は、労働法における要件事実を包括的に検討することによって、労働法における理論と実務の架橋の役割を果たすこと、また、要件事実という、訴訟手続における主張立証責任を踏まえた観点から労働法における実体的ルールを見直すことを意図したものであり、労働紛争の有効な解決を考える際の一材料になるという点で、一定の社会的な意義もあるのではないかと考えている。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 山川 隆一 / 2016)

本の目次

第1部 総論
 第1章 労働紛争の意義と解決
 第2章 労働紛争解決システムの現状と課題

第2部 労働紛争の解決制度と解決手続
 第1章 行政による労働紛争の解決
 第2章 裁判所における労働紛争の解決

第3部 労働法における要件事実
 第1章 労働紛争の解決と要件事実
 第2章 主要な訴訟類型における要件事実

関連情報

最新版:
労働紛争処理法 <第2版> (弘文堂 刊 2023年2月22日)
https://www.koubundou.co.jp/book/b618403.html
 
受賞:
第35回 (平成24年度) 労働関係優秀図書賞受賞 (労働政策研究・研修機構 2012年10月)
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2012/10/pdf/089-097.pdf
 
書評:
中山慈夫 評 (『日本労働研究雑誌』627号80頁 2012年10月)
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2012/10/pdf/080-085.pdf

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