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白い表紙に橋の写真

書籍名

少年法

著者名

川出 敏裕

判型など

406ページ、A5判、上製

言語

日本語

発行年月日

2015年9月10日

ISBN コード

978-4-641-13912-1

出版社

有斐閣

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少年法

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本書は、広く少年法に興味を持つ読者に向けて、少年法の現状とそれを取り巻く問題の状況を伝えることを目指して執筆されたものである。少年法という法律の存在は国民一般に広く知られており、とりわけ少年による重大事件が起きると、少年法に基づき少年を特別に扱うことの当否が問題とされることが少なくない。しかし、そこで語られる意見の中には、少年法の内容やその運用につき、正確な理解に基づいていないものや、時には明らかな誤解に基づくものが少なからず見受けられる。
 
そこから、本書では、何よりも少年法の現状を正確に描き出すことに重点を置いた。少年法は、刑事訴訟法と比較すると条文数が少ないこともあり、実務の運用が、その姿を形作るうえで大きな役割をはたしている。そのため、関連する裁判例はできるかぎり取り上げるとともに、重要なものについては、その内容について詳しい検討を行った。少年法の教科書において、ここまで詳細に裁判例の検討を行ったものは存在していない。また、現在の運用を基礎づけている基本的な通達や、運用の現状を示す各種の統計データも積極的に取り上げることにより、裁判例というかたちで現れてこない実情も明らかにしている。
 
それと同時に、実定法学である少年法の解釈を示すという観点から、それぞれの手続過程において生じる問題につき、少年法の基本理念である少年の健全育成の意味に立ち返ったうえで、体系的な考察を行った。これまで、少年法については、その刑事政策的側面に注目が集まり、密接な関係のある刑法や刑事訴訟法における研究成果が十分に反映されていなかった面がある。そこで、本書では、個々の問題について、関係する刑法及び刑事訴訟法の研究成果を踏まえて、少年法の独自性を考慮した解釈論を展開している。
 
本書のもう一つの特色として、少年法の改正問題を詳しく取り上げている点をあげることができる。少年法は、この15年ほどの間に、4度にわたる大きな改正を経験したが、それぞれの改正にはその時々の少年法を取り巻く状況が反映されており、少年法の現在を知るためには、その内容を理解することが不可欠である。そこで、本書では、少年法の改正問題を取り上げた独立の章を立てるだけでなく、関連する箇所で、改正の経緯や背景まで含めて、できるかぎり詳しい説明を試みている。それを通じて、少年法がどのように変わってきており、今後、どのような方向に進んでいくのかを見通すことができるようになっている。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 川出 敏裕 / 2017)

本の目次

第1章 少年法の概要と基本理念
第2章 非行少年の発見過程
第3章 事件の受理と調査
第4章 審判過程
第5章 終局決定
第6章 上訴
第7章 保護処分の取消し
第8章 少年保護事件の補償
第9章 少年の刑事裁判
第10章 少年事件の報道
第11章 少年法改正の歴史

関連情報

最新版:
少年法 第2版 - 2022年施行の改正少年法に対応 (有斐閣 刊 2022年6月)
https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641139589
 
書評:
林浩靖法律事務所 (林浩靖法律事務所ホームページ 2016年1月25日)
http://www.hayashihiroyasu-lawoffice.jp/blog/2016/01/post-181-1507450.html

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