東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

表紙真ん中にバルセロナ・トラクション会社事件の画像、帯に「国際法に強い法曹、公務員、ビジネスマンへのナビゲーター」とコメントあり

書籍名

ロースクール国際法読本 グローバル法務人材のための国際法

著者名

中谷 和弘

判型など

162ページ、A5変

言語

日本語

発行年月日

2013年9月17日

ISBN コード

978-4-797-23349-0

出版社

信山社

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ロースクール国際法読本

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本書は国際法の概説書ではなく、主に国際経済に関連する具体的な事案をとりあげて、国際法の面白さを伝え、国際法は「役にたつ」ことを実感してもらうことを目指すものである。国際金融や国際航空といった国際法学では看過されてきたが重要な分野もとりあげて、従来のテキストの隙間を埋める役割もある程度果たすようにした。ロースクールの授業の教材として使用しているが、例えば第5講「海外旅行と国際法」では、国際線をなぜ飛ばせるのか、どの程度飛ばせるのかという航空協定にかかる問題やローマには3つの「国家」(イタリア、バチカン、マルタ騎士団) があるという意外な事実の意味にもふれて、初学者にも興味を持ってもらえるように配慮した。グローバル化の進展とともに非欧米諸国との経済関係が今後益々増大することは必至であり、国際法の出番も増大が見込まれる。第10講では、産油国や新興国が巨額の資金を保有・運用し、国際経済の世界で大きな役割を有するようになった政府系ファンドについて国際法上の課題を検討し、また、第11講では、石油開発契約に含まれる安定化条項や国際贈収賄について検討した。なお、グローバル化は自由化一直線という訳ではなく、安全保障のための外資規制や安全保障輸出管理は、国際法上、容認・要請され、このことは経済安全保障の観点からも重要であること (第2講)、また今日では忘れられた二国間通商航海条約がしばしば国際裁判において重要な役割を果たしたこと (第9講)、を失念してはならない。

経済以外の主題についても、例えば、大臣の対外的発言の国際法上の効果 (第1講)、条約・安保理決議の解釈 (第4講)、大使館の国際法上の地位 (第7講) といった外交の現場で日常的に生じる国際法の諸課題についても検討し、さらに国際法違反に対する国家の主要な政策ツールである経済制裁についての国際法上の諸課題も検討を加えた (第8講)。

外交官志望者や渉外弁護士志望者はもとより、広く国際関係に関心を有する方々や法曹志望者に本書を手にとって頂ければ幸いである。

私自身のこれまでの主要業績については、[東京大学法学部・大学院法学政治学研究科ページ] を参照されたい。私自身は、国際法の様々な分野における研究を精力的にすすめて成果を「論文」として公表することが自分自身にとっての最も重要な任務だと考えている。2017年1月現在は、為替操作、宇宙資源開発、多言語条約の解釈、共同領有に関する国際法の諸課題ついて検討をすすめている。

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 中谷 和弘 / 2017)

本の目次

第1講 国内法曹も国際法を知っておこう
第2講 国家安全保障に基づく外資規制及び貿易規制
第3講 国家の対外債務は返済しなければならないか
第4講 条約及び国連安保理決議の解釈
Intermezzo 1 「バルセロナ・トラクション会社事件」をめぐって
第5講 海外旅行と国際法
第6講 近隣国・地域との関係をめぐる最近の国内判例
第7講 大使館と国際法
第8講 経済制裁と国際法
Intermezzo 2 世界で最も不思議な国際裁判 -- Aaroo Mountain仲裁判決
第9講 友好通商航海条約の解釈・適用
第10講 政府系企業、政府系ファンド (SWF) と国際法
第11講 途上国ビジネスと国際法
第12講 法曹実務と国際法 (座談会)

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