東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に緑の写真、帯に「執行・倒産手続きまで視野に入れて民法を理解する」とコメントあり

書籍名

債権回収法講義 [第2版]

著者名

森田 修

判型など

408ページ、A5判、上製

言語

日本語

発行年月日

2011年4月15日

ISBN コード

978-4-641-13600-7

出版社

有斐閣

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債権回収法講義 第2版

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本書は、民法及び民事執行法・倒産法を学部において一応履修したことを前提として、ロースクール科目として開講された、「債権回収法」という講義のテキストとして執筆された。
 
民法をはじめとした私法が取り扱う紛争の中で、重要な意味を持つものとして、金銭債権を実現する営み、すなわち債権回収の場面で生じるものがある。本書は、この紛争をめぐって論じられている学説や、重要裁判例を整理して、債権回収法という独自の領域を切り開こうとした日本で最初の書物である。
 
債権回収法という領域は、従来の民法学においては、民法の債権総論及び担保物権の分野であり、東大法学部では、従来学部カリキュラムの「民法第三部」の中で講義が為されてきた。
 
民法第三部の中でも、債権回収に関わる部分は、民法のカリキュラムの中でも取っ付きにくく、難解なものとされている。その原因は、一つには、財産法の最後に講じられることもあって、民法総則、物権、契約、不法行為等の内容を習得していることを前提としている点に求められるだろう。しかし、難解さのもう一つの原因は、民法という実体法の知識だけではなく、民事執行法・倒産法という手続法の知識がなければ、民法という実体法の論理も理解できないという事情にある。
 
そこで、学部教育では分断されている手続法の知識と実体法の知識とを横断的に連絡させて、債権回収の実際の紛争の解決のために動因可能な生きた認識枠組とするために、ロースクール科目として債権回収法が構想された。
 
本書は、債権回収の局面で、実体法上の議論が、いかなる手続的環境の中で作動しているのかを、民法学の議論のみならず、民事執行手続や倒産手続に関わる民事訴訟法学の議論にも立ち入ることで、具体的・動態的に捉えようとしている。民法学の議論はしばしば回収すべき金銭債権が成立し、そのための法的な手段が付与されるところまでで終わるが、債権回収法はそこから始まる。そのような道具立てをどのように組み合わせ、実際に金銭を回収するのか、そのためにはどのような手続を踏まなければならないのか、そこにはなお実際の制度にいかなる不備があるのか、それを回避するために実務はどのような工夫をしているか、等々の、実践的な、従ってやや生臭い素材が取り扱われる。
 
しかし、それはハウツー的な知識の寄せ集めではない。そこでは、一人の共通する債務者をめぐって存在する複数の債権者の間に、どのような法律関係が成立するか (債権回収の集団的秩序)、この秩序は通常の個別債権の個別財産からの回収の段階である民事執行手続の段階、あるいは総債権者のための債務者財産全体からの回収の段階である倒産手続の段階において、どのように変容し、あるいは貫徹されるのか、を解明することに向けた理論的な枠組の樹立が目指される。

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 森田 修 / 2016)

本の目次

序章
第1部 金銭債権からの債権回収
 第1章 債権者代位権
 第2章 債権者取消権
 第3章 債権譲渡
 第4章 相殺
第2部 動産からの債権回収
 第5章 在庫担保
 第6章 購入代金担保
第3部 不動産からの債権回収
 第7章 占有型執行妨害
 第8章 賃貸不動産
 第9章 抵当不動産の任意売却
第4部 保証と債権回収
 第10章 弁済代位
 第11章 主債務者の免責
 第12章 保証に関する特約
 結章

関連情報

初版についての書評:
松岡久和 法律時報 (日本評論社) 80巻8号 (2008年07月) 105-109頁

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