東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙の中央にイラスト、ベージュの帯

書籍名

債権法改正を深める 民法の基礎理論の深化のために

著者名

森田 宏樹

判型など

454ページ、A5判、上製

言語

日本語

発行年月日

2013年8月30日

ISBN コード

978-4-641-13656-4

出版社

有斐閣

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民法典の債権関係の改正については、2015年3月31日に「民法の一部を改正する法律案」(閣法第63号) が国会に提出され、2017年5月26日に可決・成立した。本書は、2009年11月から法務省の法制審議会民法 (債権関係) 部会において検討が行われている時期に、『法学教室』誌上に2010年4月から2012年3月まで連載された論稿に、連載終了後に公表された「民法 (債権関係) の改正に関する中間試案」との対応を付記して、一書にまとめたものである。
 
民法典が定める規律は、現代社会において生起するさまざまな問題について、私法の一般法として、あるべき解決を考えるうえでの共通の思考枠組みを提供するものであるが、債権法の改正提案の中には、従来の思考枠組みの組換えを志向するものも多く含まれていた。しかし、従来の民法典の部分的な改正とは異なり、その対象がきわめて広範で検討課題も多岐にわたることとも相俟って、これまで十分な議論の蓄積がないものも少なくなかった。特に立法論として、思考の枠組み自体を組み換える場合には、相互に関連する論点についての周到な目配りが必要なはずであるが、改正提案をめぐる議論においては、問題を一面的に切り取ってその観点からのみ論ずるものもみられた。さらに、これまでの判例の展開や学説の議論の中で形成された重要な法理ないし準則であって、改正提案を行うさいにも検討の基礎にすえられるべきでありながら、近時の教科書等ではきちんと説明されることがなく、それらをふまえた検討が十分になされているとはいえない状況にあった。本書は、このような問題状況に鑑み、債権法改正について、一定の視角から検討すべき重要な課題をとりあげて、それに多面的に光を当てて、いったい何が問題となるのかをその基礎から考えることによって、それに対する理解ないし議論を「深める」ことを目的としたものである。
 
著者の恩師である星野英一教授は、立法論や解釈論において妥当な結論を提示するという法実践に役立つことを直接の目的とする実定法学においては、法学者は実務家とともに法実践を行うことも多いが、学者本来の仕事があるとすれば、それは法実践ではなく、良い実践のための基礎的作業を行うことにあるとされ、学者としての法学者の任務は、問題を「より広く、深く、遠くから」検討することにあると説かれた。本書は、改正作業について時評的に解説するものではなく、このような見地から、民法の「研究者」として債権法改正をめぐる論議について分析検討したものである。
 
本書は、民法 (債権関係) の改正規定について、なぜそのような改正がなされるに至ったのか、さらに、改正規定はいかに解すべきであるかを考えるうえでも意義を有する民法の基礎理論を提示するものであり、本書にじっくりと取り組むことによって読者には豊かな知見がもたらされるであろう。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 森田 宏樹 / 2017)

本の目次

第1章 債務不履行責任における「帰責事由」
    -- 契約上の債務の内容・射程による結果債務と手段債務の区別の意義
第2章 双務契約における一方の債務と反対給付債務の牽連性
第3章 賃貸人の地位の移転と敷金の承継
第4章 諾成的消費貸借における要物性の意義
第5章 預金債権の消滅時効
第6章 債権者代位権の「転用」と特定債権の保全

関連情報

Book Information (有斐閣ホームページ)
債権法改正を深める - 民法の基礎理論の深化のために
http://www.yuhikaku.co.jp/static_files/BookInfo201310-13656.pdf

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