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書籍名

世界文化シリーズ4 ドイツ文化55のキーワード

著者名

宮田 眞治 (編著) 、畠山 寛 (編著)、濱中 春 (編著)

判型など

296ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2015年3月30日

ISBN コード

978-4-623-07253-8

出版社

ミネルヴァ書房

出版社URL

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ドイツ文化55のキーワード

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東西ドイツが統一されて25年目に本書は刊行された。「分断国家ドイツ」と聞いてもピンとこない世代も増えているなか、近過去と現在にも目を配りながら、ドイツ文化の持つ多様な相に接してもらいたいという想いで本書は編まれた。
 
入り口はいまのドイツである。さまざまなメディアを通じて現れてくるドイツ、私たちの暮らしのなかにもさまざまな形で入り込んでいるドイツの「モノ」と「コト」を出発点とする。そこから過去へ遡ったり、現代への道筋を大きな歩幅で辿ったりするなかで、そうした「モノ」や「コト」の様々な相貌が浮かび上がってくる。
 
ステレオタイプ化された <ドイツ> のイメージをひっくり返し、単層的なイメージを複合的でダイナミックなものへ組み替えるきっかけとしてほしい、というのも大きな願いであった。例えば、「ドイツの森」といえば観光案内のポスターにも頻出し、「ノスタルジック」に「太古からの森」としてメルヘンと結び付けながら語られることも多いが、「ロマン派の <森への愛> は、実際のドイツ森林史に何の根拠ももたない非歴史的なもの」だった。ドイツの森林は、ドイツ中世森林乱伐期以降、荒廃の一途をたどった。現代ドイツの森林は、18世紀後半以来の植林により再生したものである。しかし「憧憬ないし郷愁の対象としての理念の森」は、観光用のイメージというにとどまらず、自然保護運動においても参照されるような、「現実の森林が危機に瀕したとき (…) 自らの根源を象徴しつつ立ち現れる」ものでもある (以上、引用は大野寿子氏執筆の「森」より)。
 
現代ドイツにおける社会史研究やメディア研究、<記憶> 研究などを踏まえ、それぞれのエキスパートである32人の執筆者の手になる本書は、類書にあまり見られない項目や視点を提示したものになったのではないかと自負している。
 
ひとつの事象へ向けられたまなざしが、様々な領域のいろいろな出来事を呼び寄せ、そうして生み出されるささやかなネットワークが、<ドイツ> というきわめてやっかいな複合体へ接近する手がかりとなることが目指された。そうした関連の一端を視覚化するために、本文の傍らに関連する項目の番号を付すクロス・リファレンス方式を試みた。各項目に関する参考文献とともに活用していただければ、<ドイツ> を考えるためのかなり有効なツールになるのではないかと思う。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 准教授 宮田 眞治 / 2017)

本の目次

まえがき
第一章 <ドイツ> とは - アイデンティティと多様性 -
コラム1 ソルブ人
第二章 社会制度 - 変わるもの、変わらないもの -
コラム2 EUのなかのドイツ
第三章 記憶と記録
コラム3 日独文化交流
第四章 ことばと思考
コラム4 詩人の恋 - バッハマン、ツェラン、フリッシュ -
第五章 メディアと技芸 (クンスト)
コラム5 おもちゃの文化史
第六章 暮らしと文化
コラム6 スウィーツ
参考文献
写真・図版出典一覧
索引

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