東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

アイボリーの表紙、書名にオレンジで装飾がしてある

書籍名

グローバル化とショック波及の経済学 地方自治体・企業・個人の対応

著者名

小川 光 (編)

判型など

228ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2016年10月15日

ISBN コード

978-4-641-16485-7

出版社

有斐閣

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グローバル化とショック波及の経済学

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日本の経済環境は、1990年代初頭を境に大きく変わった。短いサイクルでネガティブなショックに見舞われる機会が多くなり、また、ショックの一つ一つが大きな影響を持つようになっている。
 
ショックの背景にあるのは、東日本大震災に代表される自然災害であり、またタイを発生源としたアジア通貨危機や米国発の世界金融危機といった、海外と経済的につながっていることから生じる経済ショックである。もちろん、リスクの波及は一方通行であるわけではない。東日本大震災は、国内企業のみならず、海外にも経済的な打撃を与えた。経済のグローバル化を国境を越えた経済活動の結びつきの強まりと捉えれば、グローバル化により、我々は貿易や投資、人材の交流と移動を通じて様々な経済的メリットを受け取ることができると同時に、ある国で生じた経済危機が容易に国境を越えて、他国へ波及するというリスクも抱えることになっている。そして、各国の経済的結びつきの強まりは、一時的な停滞はあるにせよ、大きな流れが止ることはないであろう。それは、すなわち世界のどこかで生じる何らかのショックが今後もより一層強く日本に波及してくることを予想させると同時に、日本で生じたショックが世界各国にも影響を与えていくということである。グローバル社会において避けることのできないこのような国境を越えて生じるショックの影響に対して、その影響を受ける家計、企業、地域の自治体の立場から、事前・事後の対応を分析しているのが本書である。
 
分析にあたっては、時系列データを用いた長期的な視点にたって、経済主体が、どのように外的ショックに対応してきたのかについて包括的に分析する方法がある。それとは対照的に東日本大震災などの個別事例に焦点を当てて、当該ショックが生じたことに対する経済主体の対応をあぶりだすという方法もある。また、家計、企業、および政府のうち、どの主体に焦点を当てて分析するのかという対象の違いもある。
 
本書では、長期の時系列データを用いた分析により、我が国の自治体が外的なショックに対して、どの政策手段を用いて、またどのくらいの期間をかけてショックを吸収してきたのか、それは諸外国とどのように違うのかを明らかにしている。また、事例分析により、過去に経験した個別のショック (感染症・リーマン・ショック、東日本大震災)、およびこれからその発生が危惧されている災害 (東南海トラフ地震) に対する家計、企業、自治体の行動変化と対応を分析し、今後の外的ショックに対する対応と求められる政策の参考になる知見を提示している。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 小川 光 / 2016)

本の目次

第1章 グローバル化と外的ショックの時代 (小川 光)
第2章 グローバル・ショックに対する地域経済の反応 (山本庸平)
第3章 財政ショックと市町村の政策対応 (別所俊一郎・小川 光)
第4章 財政ショックへの政策対応の国際比較 (小川 光)
第5章 市町村の予防接種助成 - 予防か横並びか? (別所俊一郎・井深陽子)
第6章 リーマン・ショックと金融支援の効果 - 金融円滑化施策は中小企業を助けたか? (小川 光・穗坂一浩)
第7章 自然災害ショックと中小企業のリスクマネジメント - 東日本大震災の経験をもとにして (家森信善・浅井義裕)
第8章 南海トラフ地震と個人の対応 - 住宅の賃貸行動を通して (内藤 徹)

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