東京大学
白から黄緑へのグラデーションになった表紙
書籍名 講座

東アジアの知識人

[全5巻]
著者名 趙 景達、 原田 敬一、 村田 雄二郎、 安田 常雄 (編)
判型など 総1904ページ、A5判、全5巻
言語 日本語
発行年月日 2013年10月
ISBN コード 第一巻 978-4-903426-75-4
第二巻 978-4-903426-77-8
第三巻 978-4-903426-79-2
第四巻 978-4-903426-81-5
第五巻 978-4-903426-84-6
出版社 有志舎
出版社URL 書籍紹介ページ
学内図書館貸出状況(OPAC) 第一巻 文明と伝統社会-19世紀中葉~日清戦争- 第2巻 近代国家の形成-日清戦争~韓国併合・辛亥革命- 第3巻 「社会」の発見と変容-韓国併合~満洲事変- 第3巻 「社会」の発見と変容-韓国併合~満洲事変- 第4巻 戦争と向き合って-満洲事変~日本敗戦- 第5巻 さまざまな戦後-日本敗戦~1950年代-
 本書は19世紀半ばから1950年代半ばまでの近代東アジアの知識人の思想と行動を、人物論を軸にして、横断的かつ比較史的に論じたシリーズである。「東アジア共同体」の構想がいわれて久しいが、その一体化は一向に進まない状況にある。また、新たな普遍主義を構築しようとするなら、今までのように西風を待つべきではなく、東アジア発の普遍主義が模索される必要がある。しかし、東アジアと一口にいっても一枚岩ではなく、歴史的に見るならば、知識人のあり方もかなり異なっている。
 知識人という言葉は「インテリゲンチャ」(ロシア語) を起源とする訳語であり、1920年代に登場するが、階層としての知識人は、東アジアでは近代に入って成立する。中国の伝統的文脈でいえば、「読書人」とか「士」という言葉がそれに比定されよう。朝鮮では、「士」は「ソンビ」と呼ばれ、衆人の尊敬の対象とされた。「読書人」にせよ「士」にせよ、儒教を学ぶことが必須の条件であり、したがってそこには道徳性が含意されていた。ときに、彼らが「道学者」といわれた所以である。近世日本の場合は、事情がやや違っている。「道学者」は往々にして世間を知らない浮世離れした存在と見られ、必ずしも尊敬の対象とはされなかった。
 東アジア三国においては、知識人に含意される意味と内容は大きく違っていた。したがって、その果たした役割も、違っていて不思議ではない。もちろん、国民国家化の成否や戦争・内乱・革命等の状況が問題のあり方を変えたことが大きいのだが、伝統的な知識人のあり方に規定されている側面も無視できない。近代という激動の時代において、東アジア三国の知識人は近代化の課題や植民地化の危機にいかに対応し、いかなる知を創出していったのか。また、東アジアの他国・他地域では日本の国家的膨張主義をいかに受けとめ批判したのか。本講座では約120名の知識人と一部の結社・集団をとりあげ、彼ら・彼女らの交錯し、ときに越境的ですらある思想と行動の展開過程を考察する。

 各巻のタイトルは以下のとおりである。
  第1巻 文明と伝統社会: 19世紀中葉~日清戦争 (総論: 村田雄二郎)
  第2巻 近代国家の形成: 日清戦争~韓国併合・辛亥革命 (総論: 原田敬一)
  第3巻 「社会」の発見と変容: 韓国併合~満州事変 (総論: 趙 景達)
  第4巻 戦争と向き合って: 満洲事変~日本敗戦 (総論: 安田常雄)
  第5巻 さまざまな戦後: 日本敗戦~1950年代 (総論: 趙・原田・村田・安田)

 本講座は、日本・朝鮮・中国以外にも座標軸を広げ、台湾・ベトナムやモンゴル・チベットの知識人についても取り上げている。また、巻構成を時代順とすることによって、同時代の知識人が何を共有し、また自律的に何を構想したのかを把握できるように人物を配置した。最終巻には編者4名による座談会を付す。

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 村田 雄二郎 / 2016)

本の目次

第1巻 文明と伝統社会 - 19世紀中葉~日清戦争 -

総論 文明と伝統社会  村田雄二郎
I 西洋との出会い
 魏源: 井上裕正
 容閎: 園田節子
 横井小楠と吉田松陰: 須田 努
 朴珪寿: 山内弘一
II 文明の発見
 阪谷素と明六社: 河野有理
 福沢諭吉: ひろたまさき
 厳復: 區 建英
 金允植と金玉均: 吉野 誠
III 伝統社会と宗教
 洪秀全と洪仁玕: 倉田明子
 崔時亨と全琫準: 趙 景達
 中山みき: 島薗 進
 田中智学と国柱会: 大谷栄一
IV 公論の形成
 中江兆民: 小林瑞乃
 岸田俊子と福田英子: 長 志珠絵
 王韜と鄭観応: 村田雄二郎
 兪吉濬: 伊藤俊介
V 体制と反逆の思想
 勝海舟: 笹部昌利
 李鴻章: 岡本隆司
 安重根と伊藤博文: 小川原宏幸
 崔益鉉: 愼 蒼宇


第2巻 近代国家の形成 - 日清戦争~韓国併合・辛亥革命 -

総論 近代国家の形成  原田敬一
I 抵抗と革命
 孫文: 深町英夫 
 田中正造: 三浦顕一郎
 幸徳秋水と初期社会主義者たち: 山泉 進
 朝鮮の義兵将: 愼 蒼宇
 ファン・ボイ・チャウ: 白石昌也
II ナショナリズムの思想
 徳富蘇峰と陸羯南: 有山輝雄
 内村鑑三: 谷川 穣
 梁啓超: 吉澤誠一郎
 朴殷植: 康 成銀
III アジア主義
 宮崎滔天: 真鍋昌賢
 章炳麟と劉師培: 石井 剛
 愛国啓蒙運動と張志淵: 井上厚史
 玄洋社と黒龍会: 初瀬龍平
IV 言論と出版
 黒岩涙香: 原田敬一
 添田唖蝉坊: 能川泰治
 申采浩: 康 成銀
 張元済と商務印書館: 川尻文彦
V 実業と国家
 張謇: 陶 徳民
 渋沢栄一: 見城悌治
 李容翊: 三ツ井 崇


第3巻 「社会」の発見と変容 - 韓国併合~満州事変 - 

総論 「社会」の発見と変容  趙 景達
I 第一次大戦と東アジア
 李大釗: 石川禎浩
 吉野作造: 藤村一郎
 孫秉熙: 林 雄介
 大杉栄: 梅森直之   
 メルセ: 中見立夫
II 文学者の問いかけ
 森鴎外と夏目漱石: 見城悌治
 魯迅と周作人: 尾崎文昭
 李光洙: 波田野節子
 柳宗悦と白樺派の人々: 中見真理
III 歴史学と民俗学
 柳田国男: 佐藤健二
 伊波普猷: 冨山一郎
 顧頡剛: 竹元規人
 文一平と鄭寅普: 鶴園 裕
IV 女性と社会
 平塚らいてうと与謝野晶子: 金子幸子
 山川菊栄: 鈴木裕子
 羅恵錫: 宋 連玉
 丁玲: 江上幸子
V 教育と思想
 生活綴方の教師たち: 船橋一男
 胡適とデューイ: 章 清 (森川裕貴 訳)
 安昌浩: 李 省展


第4巻 戦争と向き合って - 満洲事変~日本敗戦 -

総論 戦争と向き合って  安田常雄
I 昭和維新と農本主義
 橘孝三郎: 岩崎正弥
 北一輝: 萩原 稔
 朝鮮農民社の知識人たち: 松本武祝
 晏陽初と陶行知: 山本 真
II 社会主義の思想
 陳独秀: 緒形 康
 白南雲: 洪 宗郁
 戸坂潤: 根津朝彦
 人民戦線の人々: 後藤嘉弘
 ホー・チ・ミン: 古田元夫
III 転向・協力・抵抗
 市川房枝: 加納実紀代
 崔麟: 川瀬貴也
 汪精衛: 劉 傑
 林献堂: 許 雪姫 (若林正丈 訳)
IV 満洲建国と東亜協同体論
 三木清と尾崎秀実: 米谷匡史
 石原莞爾: ティノ・シェルツ
 橘樸: 山室信一
 東亜聯盟運動に参加した朝鮮人: 松田利彦
 朴錫胤: 水野直樹
V 非転向と粛正
 明石順三: 趙 景達
 金天海: 樋口雄一
 国崎定洞: 加藤哲郎 


第5巻 さまざまな戦後 - 日本敗戦~一九五〇年代 -

総論 さまざまな戦後  趙 景達・原田敬一・村田雄二郎・安田常雄
I 戦後改革と戦後構想
 ハーバート・ノーマン: 中野利子
 都留重人: 安田常雄
 張君勱: 中村元哉
 二・二八事件の人々: 何 義麟
II 戦後思想
 丸山眞男: 石田 憲
 竹内好: 山田 賢
 雑誌『観察』と羅隆基: 中村元哉
 安在鴻: 朴賛勝 (伊藤俊介 訳)
III 文学とジャーナリズム
 エドガー・スノ: 江田憲治
 儲安平: 水羽信男
 金達寿: 宮本正明
 中野重治: 林 淑美
 武田泰淳と堀田善衛: 渡邊一民
IV 生活思想
 花森安治: 天野正子
 鶴見俊輔: 安田常雄
 費孝通: 聶 莉莉
V 権力をめぐる思想
 梁漱溟と毛沢東: 砂山幸雄
 金九と李承晩: 李 景珉
 石橋湛山と吉田茂: 姜 克実
 プンツォク・ワンギェル: 小林亮介
座談会 近現代東アジアのなかの知識人