東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙にデジタルメディアをイメージした写真

書籍名

デジタル・スタディーズ2 メディア表象

著者名

石田 英敬、 吉見 俊哉、マイク・フェザーストーン (編)

判型など

328ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2015年9月9日

ISBN コード

978-4-13-014142-0

出版社

東京大学出版会

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デジタル・スタディーズ2: メディア表象

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デジタル革命は、メディアをそのつど01の数字列からメッセージを生成するマトリクスへと進化させた。以後、メディアは自ら存在者 - ヒトやモノ - との関係を制御し、ハイパーテキストの原理からなるメッセージがインタラクションによって変化しつづけるプロテウス的なプラットフォームへと姿を変えた。デジタル・メディアとは、あらゆる関係性の自律的な生成の場であり、無限の記憶の貯蔵庫であり、ヒトの行動を予め決定しているプログラムであり、いつでもどこからでも存在者を現前へと呼び出すことができる。全ての知識とモノとを百科全書的に一致させ、ライプニッツの形而上学が定義するような「モナド」としての情報端末からの固有の視点をとおして全存在者とコミュニケートし合い全宇宙を映し出す。デジタル・メディアは、世界のあらゆる情報の – <形而上学> 的な - 組織化を成就しつつあるとさえ言えそうなのである。
 
デジタル革命の大転換は、「時間」とはなにか (「リアルタイム」問題)、「場所」とはなにか(「ユビキタス」問題)、「人」とはなにか (「ポストヒューマン」問題)、「記憶」とはなにか (「アーカイヴ」問題)、「物語」や「表象」とはなにか (「メディア・カルチャー」問題) をめぐって、人間と文化を、今までとは根本的に異なった知の配置のなかで問うことを求めている。
 
『デジタル・スタディーズ1 メディア哲学』で提起された「知のデジタル転回」を受けて、デジタル・カルチャーを理解するための理論パラダイムとは何か。デジタル・テクノロジーがもたらす記号・文字・イメージとメディアの基礎理論を問い、デジタル・メディアとの界面に成立する表象作用を読み解き、感性的経験の変容と台頭しつつある新しい表象文化の行方を展望するのがこの『デジタル・スタディーズ2 メディア表象』である。
 
この巻の著者たちは、メディアの成立にとって <文字> とは何かを問うことからメディアの問題に迫ろうとしている。二十世紀のメディア・スタディーズは、メディアをコミュニケーション、言語、記号のタームで理解する地平を開いたが、メディアの基礎論に至ろうとすれば、ヒトの進化のうえで <手> と <脳> との出会う地点、<技術> の次元と <言語> および <表象> の次元が交差する源 (みなもと) にある <文字> の問題は避けて通れない。メディアを文字論的 (グラマトロジック)に思考することが求められるのである。
 
世界の新しい世代の気鋭の研究者たちが集って、グラマトロジーとテクノロジー、テクノロジーの文字とアーカイヴ、デジタル・インタフェースとメディアの知、触覚的メディア・指標的メディア、デジタル・アート、デジタル美学 ポピュラー・カルチャー、ポピュラー宗教などを研究テーマに、デジタル・スタディーズにおけるメディア表象研究を開花させる企てがこの巻である。
 

(紹介文執筆者: 情報学環 教授 石田 英敬 / 2016)

本の目次

序 章 Digital Media Paradigm (石田英敬)
第1部 記号・文字・テクノロジー
 第1章 新ライプニッツ派記号論のために: 「中国自然神学論」再論 (石田英敬)
 第2章 映画テクノロジーの新しい文字: モバイル・メディアとデジタル・イメージ (中路武士)
 第3章 デジタルネットワーク社会において複合化する記録資料とアーカイブズ (研谷紀夫)
  [コラム1] エクリチュール・オンライン (二木麻里)
  [コラム2] 大規模国際会議における批評空間: メタ・スペースの構築 (久松慎一)

第2部 認識と批判のパラダイム
 第4章 <テクノロジーの文字> と <心の装置>: フロイトへの回帰 (石田英敬)
 第5章 メディアの消滅: 一九八〇年代のメディア理論に見るマクルーハンの影 (門林岳史)
 第6章 触覚、時間、技術: レヴィナス、または触覚的コミュニケーションの倫理 (デイブ・ブースロイド / 中路武士 + 谷島貫太 訳)
 第7章 コミュニケーションのvectorとしての <キャラ>: indi-visualコミュニケーション (西 兼志)
  [コラム3] 八年後から振り返る: 「メタ・スペース」がしようとしたこと (谷島貫太)

第3部 感性と経験
 第8章 デジタルメディア時代のアート (草原真知子)
 第9章 経験変容としての瞑想イメージ: ビル・ヴィオラのヴィデオ・アート分析 (ネヴェナ・イヴァノヴァ / 中路武士 訳)
 第10章 アニメの創造性: クールジャパンを求める中でのキャラクターと設定 (イアン・コンドリー / クッキ・チュー訳)
 第11章 ニューメディアと浮遊する宗教 (ブライアン・スタンリー・ターナー / 山崎隆広 訳)
  [コラム4] 光の類型文字: 写真植字あるいはもうひとつのグラマトロジーの可能性 (阿部卓也)

関連情報

関連座談会:
「座談会 デジタル・スタディーズへの道」(前編) 石田英敬 x マーク・スタインバーグ x 中路武士x吉見俊哉『UP』No.524 June 2016東京大学出版会、pp. 1-12
 
「座談会 デジタル・スタディーズからの道」(後編) 石田英敬 x マーク・スタインバーグ x中路武士 x 吉見俊哉『UP』No.525 July 2016東京大学出版会、pp. 1-13
 
編者blog:
http://nulptyxcom.blogspot.jp/2015/09/2.html

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