東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

赤い表紙が目印の新赤版

書籍名

水の未来 グローバルリスクと日本

著者名

沖 大幹

判型など

240ページ、新書版、並製

言語

日本語

発行年月日

2016年3月18日

ISBN コード

978-4-00-431597-1

出版社

岩波書店

出版社URL

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水の未来

 日本では、自然災害というとどうしても地震のことばかりに注意が向きがちですが、世界では旱魃や洪水などに伴う被害の方がむしろ深刻です。国際社会が懸命に対処しようとしている気候変動も概ね水を通じて人間社会に悪影響を及ぼします。一方で、2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で掲げられている持続可能な開発目標 (SDGs) には水や衛生の利用可能性と持続可能なマネジメントの確保をはじめとして、貧困の撲滅、食料安全保障と農業、健康、エネルギー、女性の平等の実現など水と密接に結びついた目標が数多く含まれています。
 このように、世界では最重要課題だと考えられている水問題に対して、日本でももう少し関心を向けた方が良いのではないか、と考えて本書を執筆しました。
 水は循環する資源なのになぜ枯渇したりするのか、水問題は節水すれば解決されるのか、なぜ洪水被害は減らないのか、などに関する専門家の常識が一般には共有されていないようにも思いましたので、その点に関しましても書き込んでいます。
 逆に、水や気候変動だけが問題なのではなくて、資源、食料、エネルギー、感染症、自然災害、大規模事故、世界同時不況、国際紛争やテロ、核戦争など、さまざまなグローバルリスクに我々は囲まれていて、楽観論と悲観論のバランスを取りつつ、それらを上手に管理する必要があるのだ、という点についても議論しています。「人は死なないためだけに生きているわけではない」という文言が登場しますが、これには「安全で快適、健康で文化的な生活のためには多少のリスクを許容せざるを得ない」という意味と、「死ななければ良いわけではなく、より良い生活が送れるように水、食料、エネルギーなどを確保する必要がある」という2つの意味を込めています。
 また、なぜグローバル化した大企業が環境問題に熱心に取り組むようになっているのか、気候変動の科学的側面と社会的側面の歴史的経緯、今後の気候変動対策とエネルギーの持続性の構築や社会の強靭さの増進との関係、さらには世界の食料需給がどういう風に推移してきたのか、今後何に注意する必要がありそうかについても言及しました。
 最後に、持続可能性という概念は環境分野で使われ始めましたが、SDGsの達成、人類の究極の目標に近づくためには、社会と経済と環境というトリプルボトムラインで持続可能性の構築を考える必要がある点にも言及しました。「弱い持続性」についても紹介しています。
 本書を通じて、少しでも多くの方が人類社会と水と地球環境の未来に希望を持ち、グローバルリスクを上手に管理しながら社会と経済と環境の持続可能性の構築に向けて取り組んでいただければ、と願っています。

(紹介文執筆者: 生産技術研究所 教授 沖 大幹 / 2016)

本の目次

はじめに
第1章 地球の水の何が問題か
第2章 グローバル水リスクに備える - ウォーターフットプリントとは何か
第3章 仮想水貿易から見た食料安全保障
第4章 気候変動と水
終章 未来可能性の構築へ向けて
参考文献
あとがき

本の目次

書評:
日本経済新聞 2016年6月5日付け
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO03233160U6A600C1MY7000/
読売新聞 2016年5月29日付け
http://www.yomiuri.co.jp/life/book/review/sinsho/20160531-OYT8T50046.html
 
参考文献、補足資料など著者からの情報:
http://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/Info/WF2016/