光ファイバに沿う温度や歪の分布を測定する技術を「光ファイバ神経網」と呼ぶ。この神経網をビルや橋、航空機の翼などに張り巡らせて、これら構造物の温度や歪の分布を測定することにより、「痛みの分かる材料・構造」を実現する。我々は、「光ファイバ神経網」の研究を通して、安全・安心な社会の実現に貢献したいと考えている。光ファイバに入射した光は、光ファイバ材料(SiO2)の熱振動によって誘起されている超音波が作る回折格子により、約10GHzだけ周波数が低下して後方に反射される。この微弱な光をブリルアン散乱という。本散乱光の周波数シフト量は光ファイバに加わる温度や歪に比例して変化し、「光ファイバ神経網」のセンシング原理となる。ただしこれまでは、1 本の光ファイバで、温度と歪を同時に高精度に測定することは不可能であった。我々は、直線偏波を維持し伝送できる偏波維持光ファイバ中の互いに直行した直線偏波間の複屈折とブリルアン周波数シフトという独立した2つの光学パラメータを測定するで、温度と歪を高精度に、同時・分離・分布測定できる技術を発明した。一方の直線偏波で比較的強い誘導ブリルアン散乱を発生させた際にできる超音波は、ある周波数シフトを有する直交直線偏波をも反射させることを実証し、本周波数シフトを複屈折の高精度測定に初めて利用した。所属研究室で提案してきた分布センシング技術である「光相関領域解析法」を活用して、10cmの空間分解能で温度と歪の分布を同時に分離測定することに成功した。実験結果を図に示す。図(a)の被測定光ファイバに沿って、A、C、G、およびIの部分には、温度も歪も与えていない。まず、B、D、E、FおよびHの部分に熱のみを加えた(図(b)と(c)中の□)。次に、E部分にのみ歪も印加した(図(b)と(c)中の●)。ブリルアン周波数シフトと複屈折による周波数シフトの2つの測定量から求めた温度と歪の分布測定結果が、それぞれ、図(b)と図(c)であり、同時・分離・分布測定機能が実証できている。今後、温度と歪の測定精度ならびに測定速度の向上や測定範囲の拡大を図ることで、高機能な「光ファイバ神経網」が実現できる。
W. Zou, Z. He, and K. Hotate, “Demonstration of Brillouin distributed discrimination of strain and temperature using a polarization-maintaining optical fiber,” IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 22, no. 8,













