List of Projects

HomeProject ListChemistry, Material Sciences/Information Sciences, Electrical and Electronic Engineering/Mechanical, Civil, Architectural and Other Fields of Engineering>Introducing Young Researchers

Introducing Young Researchers

Secure-Life Electronics

 

 

研究ハイライト

研究者写真

温度と歪の同時・分離・分布測定を実現した
光ファイバの神経網

鄒  衛文  電気系工学専攻GCOE 特任助教  担当:保立 和夫 教授
現在、上海交通大学准教授

  光ファイバに沿う温度や歪の分布を測定する技術を「光ファイバ神経網」と呼ぶ。この神経網をビルや橋、航空機の翼などに張り巡らせて、これら構造物の温度や歪の分布を測定することにより、「痛みの分かる材料・構造」を実現する。我々は、「光ファイバ神経網」の研究を通して、安全・安心な社会の実現に貢献したいと考えている。光ファイバに入射した光は、光ファイバ材料(SiO2)の熱振動によって誘起されている超音波が作る回折格子により、約10GHzだけ周波数が低下して後方に反射される。この微弱な光をブリルアン散乱という。本散乱光の周波数シフト量は光ファイバに加わる温度や歪に比例して変化し、「光ファイバ神経網」のセンシング原理となる。ただしこれまでは、1 本の光ファイバで、温度と歪を同時に高精度に測定することは不可能であった。我々は、直線偏波を維持し伝送できる偏波維持光ファイバ中の互いに直行した直線偏波間の複屈折とブリルアン周波数シフトという独立した2つの光学パラメータを測定するで、温度と歪を高精度に、同時・分離・分布測定できる技術を発明した。一方の直線偏波で比較的強い誘導ブリルアン散乱を発生させた際にできる超音波は、ある周波数シフトを有する直交直線偏波をも反射させることを実証し、本周波数シフトを複屈折の高精度測定に初めて利用した。所属研究室で提案してきた分布センシング技術である「光相関領域解析法」を活用して、10cmの空間分解能で温度と歪の分布を同時に分離測定することに成功した。実験結果を図に示す。図(a)の被測定光ファイバに沿って、A、C、G、およびIの部分には、温度も歪も与えていない。まず、B、D、E、FおよびHの部分に熱のみを加えた(図(b)と(c)中の□)。次に、E部分にのみ歪も印加した(図(b)と(c)中の)。ブリルアン周波数シフトと複屈折による周波数シフトの2つの測定量から求めた温度と歪の分布測定結果が、それぞれ、図(b)と図(c)であり、同時・分離・分布測定機能が実証できている。今後、温度と歪の測定精度ならびに測定速度の向上や測定範囲の拡大を図ることで、高機能な「光ファイバ神経網」が実現できる。

 

W. Zou, Z. He, and K. Hotate, “Demonstration of Brillouin distributed discrimination of strain and temperature using a polarization-maintaining optical fiber,” IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 22, no. 8,


研究者写真

半導体と磁性をナノスケールで融合する
-半導体スピントロニクスの研究-

ファム ナム ハイ  電気系工学専攻GCOE 特任助教  担当:田中 雅明 教授

 半導体と磁性体は情報社会を支える材料としてそれぞれ大きな役割を果たしている。半導体は集積回路や光通信素子などの様々な情報処理デバイスに応用されている。これらの半導体デバイスは電子の「電荷」によって動作し微細な素子を作製することが可能であるため、大変高速である。一方、磁性体はハードディスクなどの情報記録媒体に広く利用されている。磁性体デバイスには電子の「スピン」が持つ不揮発性という特徴が生かされている。もし半導体と磁性体の特徴を融合することができれば、半導体の高速性と磁性体の不揮発性を両方持ち併せたような大変魅力なデバイス、例えば高速大容量の不揮発性ランダムアクセスメモリ、再構成可能な論理回路や集積化型磁気光学デバイスなどの実現が期待される。この試みは「半導体スピントロニクス」と呼ばれ、近年盛んに研究が行われている。これまでエレクトロニクスや情報技術を支えてきたシリコン集積回路の微細化による高性能化の限界が近づくにつれて、新しい原理や機能を導入した次世代デバイスの研究開発が世界的に関心を集めているが、「半導体スピントロニクス」はそうした21 世紀の将来技術の1つとしても期待されるようになってきた。

 私は半導体材料と磁性材料をナノスケールで融合する研究を行っている。具体的には直径数ナノメートルの強磁性微粒子を半導体の中に分散させて、半導体にスピン注入およびスピン検出の実験を行っている。実際にGaAs 半導体中に分散しているMnAs 微粒子を用いた磁気トンネル接合の研究では、明瞭なトンネル磁気抵抗効果を観測した。つまり、原理的には数ナノメートルの微粒子でも1 個の不揮発性メモリが作製できることを示した。さらにクーロン・ブロケード効果と組み合わせれば、単電子スピントランジスタが作製できることを示した。このトランジスタを使えば、不揮発性をもつ再構成可能な論理回路を実現できる。

 また、ナノスケールの強磁性微粒子はバルクや薄膜の材料と違って、今までにない多様な物理現象が現れる。たとえば、微粒子の磁化反転によるスピン起電力の発生や量子サイズ効果による極めて長いスピン緩和時間などが挙げられる。このようにナノ強磁性微粒子の研究は工学的な面だけで なく、基礎科学的な面でも大変面白いと感じていて、今後の更なる発展を期待している。

GCOEで得たこと

研究者写真

本質を議論する能力

猿渡 俊介  先端科学技術研究センター助教

 GCOEで得られるもの中で私が最も大きいと感じるのは「本質を議論する能力」です。本質を議論する能力は研究だけではなく、人生において幅広く応用可能です。事実、私のGCOEの後輩でも博士号を取得してから金融業界や商社に就職した人もいます。

 本質を議論する能力はGCOEでの研究活動を通して得られます。私の大学院時代の専門はソフトウェアで、センサネットワークを実現するために、超低消費電力のCPU上でハードリアルタイム性を保証できるオペレーティ ングシステムを開発しました。GCOEワークショップ等で自分の研究を発表すると、自分が全く想定していなかったような視点から質問されます。例えば、ハードウェアの研究をしている先生・学生からは「低消費電力性が必要であるならば、なぜ全部ハードウェア化しないのか?」と質問されました。ハードウェアは固定であると考えがちなソフトウェアの研究者からは出てこない発想です。この時の質問は後の研究テーマにも繋がりました。

 このように、東大電気系では自分の研究テーマについて深く考えるきっかけを与える下地が整っています。東大電気系が「電気」という応用分野の広い技術に根を持っているからです。電気は運動・化学・熱・磁気・光など多様な形態のエネルギーに変換され、計算・通信・加工・制御などさまざまな技術で利用することができます。GCOEでは、セキュアライフ・エレクトロニクスという共通目標の下に、東大電気系の幅広い分野の研究者がワークショップ・合宿で一堂に会します。授業で顔をあわせた程度であった他の学生との交流がより深いものになりました。

  異なる分野の学生と議論をする際、自分の研究テーマをより分かりやすく相手に伝える必要があります。どう説明すれば伝わるのか。どう表現すれば面白いと思ってもらえるのか。わかりやすい説明を考えるプロセスで、思考はより本質的な部分へと踏み出します。GCOEでの本質へ向かう議論は、細部の議論へ向かいがちな学会などでは得られない経験です。そして本質的な議論を重ねる中で、他の分野と自分の分野との本質的な部分での共通点に気付く。この気付きと議論の繰り返しが物事の本質を見極める視点を育てます。

 異なる分野のトップレベル研究者と本質論をぶつけ合いながら研究をし、人間として成長する。東大電気系のGCOEでしかできない体験ですし、この体験を夢・野望を持った多くの学生と共有したいと願っています。

研究者写真

GCOE年度末報告会を通して得たもの
-人との交流を大切に-

出浦 桃子  工学系研究科電気系工学専攻博士課程3 年

 自分の所属しているGCOE 拠点には5つの研究コアがあり、電気・電子・情報の各分野が集まっているため研究室の数がとにかく多い。建物もキャンパスもあちこちに散逸しており、学生どうしが集まって議論したり相談し合ったりする機会は非常に少ない。そのような状況で、年度末に行われるGCOEの博士課程学生の成果報告会は学生どうしが集まるよい機会になっていると思う。お互いに何の研究をしているのかを知る機会にもなって興味深い。しかし、半日程度の報告会では時間に限りがあり、5つのコア全体での報告会もなかったため、やや物足りなさを感じていた。

 2009 年度の年度末報告会でようやく5コア全体での報告会が近隣の宿泊施設での1 泊2日の合宿形式で行われることになった。集まってみると博士課程の学生が130 名程度もおり、人数の少ないイメージだった博士課程の学生も全員集まるとこれほど大勢いるものなのかと驚きを覚えた。従来のポスター発表に加えて、企業で活躍されている外部講師の講演、学生全員の自己紹介、先生方からのお話、研究者として日本の活性化のために何ができるかなどを考えるブレインストーミングなどが行われた。学生も先生方も個性ある面白い発表をしていた。特に先生からの「博士課程の学生は学位を取るまでに精神的な苦労も多いが頑張ってほしい」とのご自分の経験を交えた励ましには、優秀な先生方でも色々と苦労を乗り越えてきたのだなと自分を含めた学生全員モチベーションが上がったことだろう。さらに夜には学生も教員も集まって遅くまで酒を酌み交わしながら、ポスター発表では十分でなかった研究についての議論や、今抱えている不安に関する相談などをじっくりと話すことができた。

 実際に現地に行くまでは、わざわざ大学の外で泊まってまでやるのはいささか面倒だと学生の多くが感じていたのだが、知り合いが増えたり時間をかけて話ができたりと合宿ならではのメリットがあり、終わってみると非常に有意義で、参加者全員が何かしら得たものがあったと思う。このような専攻全体での学生参加イベントはGCOEがあればこそ企画し実現できたことだろう。色々な分野の同世代とじっくり話す機会は、皆忙しいため実は少なく、また、今まで距離を感じていた教員とも酒を飲みながらであれば気楽に話せるということもあると思う。潤滑な人間関係や幅広い交流は、人間にとってどこに行っても一番重要なことである。今後も報告会にとどまらずこのようなイベントがあると、GCOEの目的の1つである「人を育てる」ことに対して大きな効果があるのではないだろうか。