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理工連携による化学イノベーション

近赤外吸収・発光を示す安定な材料開発への挑戦

2012.11.29

辻 勇人
理学系研究科化学専攻 准教授

近赤外吸収・発光色素は,有機太陽電池の光吸収材料などのエネルギー変換材料や,化学療法,生体内の深部組織のイメージングなどの生体材料をはじめとして,様々な分野への応用が期待されている.我々は新しい光吸収・発光色素や有機半導体材料の開発に取り組んでおり,その研究中に独自開発した炭素架橋オリゴフェニレンビニレン化合物(COPV,図1)をプラットフォームに用いることで,安定な近赤外吸収・発光性化合物を開発することに成功した.

化合物(以下TQと略す)は,図1aに示すようなp-キノジメタンと呼ばれる不安定なユニットが3つ連結した極限構造と,図1bに示すような開殻系とよばれる一般に不安定な極限構造の重ね合わせの状態をもっている.このような不安定そうな構造をもつにもかかわらず,TQは実際には非常に安定であり,例えば,固体状態であれば空気中で1年以上も変化しない.これは,図中青で示した架橋炭素原子と末端シアノ基(CN)の安定化効果によるものである. 光物性測定から,TQは近赤外領域の1,100 nmに最長吸収極大と1,179 nmに発光極大を示すことを見いだした(図2).さらに,TQは化学的または電気的な還元により,吸収と発光が可視領域に変化することも見いだした.

このような近赤外吸収・発光特性や酸化還元による光物性のスイッチング現象を利用した多方面への応用が期待される.

<図1> image <図2>image

Notes

X. Zhu, H. Tsuji, K. Nakabayashi, S. Ohkoshi, E. Nakamura J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 16342.

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