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Automation of Science の可能性

 科学はどの程度自動化できるか? この問題に取りつかれた人は多い。数学では、定理の証明を自動化することは一般には不可能であることが知られている。1931 年ゲーデルは、証明も反駁もできない性質を提示してみせた(不完全性定理)。その後、情報科学でも自動化の限界が分かりはじめる。1936 年チューリングは、ゲーデルの技法を応用して、停止するか否かの判定が不可能なプログラムを記述してみせた。

 視点をかえて、人間の知性は模倣できるか? たとえば、チャットした遠方の相手が、まさか機械だとは気づかなかったとしよう。その機械は人間の知性をもつと考えて良いか? この意味での知性をコンピュータゲームに感じることは多いだろう。これはチューリング・テストとよばれ1950 年にチューリングが提案した。  少し難易度をあげよう。生命科学者の知性をもつ機械をつくることができるか? チューリングの孫弟子のキングは、この命題を検討するため、実際に機械を作成している。ロボットの力を借り、サンプル調整、細胞の顕微鏡撮影、画像処理による細胞の微妙な変化の検出を自動化している。さらに、実験結果や過去の文献から、どの遺伝子の働きを制御した細胞を分析すべきかを考えるアルゴリズムを模索している。このプロセスを繰り返せば、いつかは遺伝子の新たな機能を自動的に発見できるかもしれない。現実には根気が必要で、ロボットの制御に多くの時間が取られたと言っていた。表題の“ Automation of Science” は、キングが2009年に発表した論文のタイトルである。過激なタイトルだが、掲載した Science 誌は歓迎してくれたそうである。

 我々のGCOEでも、DNAを解読しDNAのもつ機能を推定する方法論を、様々なレベルで自動化しようと試みている。では Automation of Science の道のりは明るいだろうか? 考えもしなかった新しい科学的発見に我々は感動する。これは到底自動化できないように思う。しかし自動化できる部分は少しずつ着実に広がるだろう。

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「ゲノム情報ビッグバンから
読み解く生命圏」
拠点リーダー・
森下 真一 教授