ARTICLES

印刷

薬学系研究科・薬学部の阿部教授、宮本准教授、川島特任講師が平成31年度文部科学大臣表彰を受賞

掲載日:2019年4月9日

 文部科学省から、平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者の決定についての発表があり、本学からの推薦により本研究科の阿部郁朗教授(天然物化学教室)が科学技術賞(研究部門)、宮本和範准教授(基礎有機化学教室)と川島茂裕特任講師(有機合成化学教室)が若手科学者賞を受賞することになりました。文部科学大臣表彰は科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術の水準の向上に寄与することを目的としています。
 表彰式は、平成31年4月17日(水)12時10分から文部科学省講堂で執り行われます。

業績名: 科学技術賞(研究部門)阿部教授:薬用天然物の生合成工学に関する研究
     若手科学者賞 宮本准教授:超原子価ハロゲンを活用する高活性中間体の発生法の開発研究
     若手科学者賞 川島特任講師:エピゲノムを操作する人工化学触媒の開発研究
業績の概要:
「薬用天然物の生合成工学に関する研究」

 ポストゲノムの時代、遺伝子探索が化合物の発見に直結する時代になった。次の技術的課題は「この生合成マシナリーを如何に利用するか」という点であり、新たに合成生物学の手法の導入による、自由な分子デザインを可能にする方法論の開発が課題となっていた。
 本研究では、これまで未解明であった数多くの複雑骨格天然物の生合成マシナリーの詳細を解明するとともに、多領域の学問分野の方法論を巧みに応用し、酵素の立体構造を基盤とした機能改変により、セレンディピティに頼らない合理的な物質生産の方法論を開拓した。生合成の「設計図を読み解く」から、「新しい設計図を書く」方向に飛躍的な展開を可能にした。
 本研究により、生合成マシナリーの合理的再構築、狙ったものを正確に作る、希少有用物質の大量安定供給、が可能になる。また、天然物を凌ぐ新規有用物質の創出、天然物に匹敵する創薬シード化合物ライブラリーの構築など、広く有用物質の安定供給が実現する。
 本成果は、クリーンかつ経済的な新しい技術基盤として期待できることから、社会的にも意義があり、医薬品のみならず、エネルギー、新規素材生産技術の革新に寄与することが期待される。

「超原子価ハロゲンを活用する高活性中間体の発生法の開発研究」
 化学において、これまで多くの高反応性中間体(カチオン、ラジカル、カルベン等)の発見が、新理論・新反応を切拓き、大きなブレイクスルーの契機を与えてきた。しかし、理論的には存在が想定されつつも、極めて発生が難しい未踏の高反応性中間体はいまだ数多く存在する。
 宮本氏は、未知の化学種であったシクロペンテニルカチオン、ビストリフリルカルベン、二原子炭素(C2)などを、独自に開発した超原子価ハロゲン化合物を用いて発生することに成功した。特に C2 は、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト等を形成することが判明し、地球上や宇宙空間の炭素鉱物の起源の謎の一つが解明された。
 本研究成果は、化学の根底をなす自然科学の原理、原則を明らかにし、我が国の学術の一層の発展に資するものと期待される。    

「エピゲノムを操作する人工化学触媒の開発研究」
 エピゲノムはヒストンや核酸の化学修飾を基盤として様々な生命現象に関与し、エピゲノムの異常はがんなどの様々な疾患を引き起こすため、エピゲノム異常を正常化することが可能な化合物の開発は創薬化学における重要な課題である。
 川島氏は、エピゲノムは酵素による化学反応を基盤としている点に着目し、酵素非依存的にヒストンに化学修飾を導入できる人工化学触媒を開発し、人工化学触媒によるエピゲノム操作という革新的な概念を世界に先駆けて提唱してきた。
 本研究成果は、今後エピゲノム異常によって引き起こされる様々な疾患に対する新たな治療概念を創出し、革新的な創薬へとつなげていくことにより、国民の健康な生活に貢献することが可能であると期待される。

科学技術賞(研究部門):科学技術分野において顕著な効果を挙げる可能性の高い最近の独創的な研究開発成果に対する表彰。
若手科学者賞:次世代を担う若手研究者の自立を促し、独創性の高い科学技術の発信に貢献するため、萌芽的な研究あるいは、独創的視点に立った研究等、高い研究開発能力を示した若手研究者個人を表彰。受賞時(表彰年度4月1日現在)において40歳未満の研究者が対象。
アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる