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分子生物学の基本原理「セントラルドグマ」の理論的導出に成功 - 情報と機能の分業を「対称性の自発的破れ」により解明 - 研究成果

掲載日:2019年10月2日

生命の根本原理の1つは、ゲノムと触媒の区別、すなわち遺伝と触媒の分業である。現在知られている生物ではすべてDNAなどの核酸分子が遺伝情報を担い、そこから一方向に情報が流れ、タンパク質がつくられ、それが触媒としてDNAを含む細胞内の分子の合成を助けている。
その一方で原始生命においてはゲノムと触媒は未分化であったと考えられている。
ではこのような役割の分化はいかに生じたのであろうか。

ニュージーランド・オークランド大学上級講師および東京大学生物普遍性連携研究機構客員准教授の竹内信人、 そして、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻および生物普遍性連携研究機構の金子邦彦教授は、 触媒機能を持ち複製する分子が集まった原始的細胞のモデルを考え、それが進化しながら複製していくシミュレーションを行なった。
その結果、細胞が複製を続けていくと、その中の分子は触媒機能に特化したものと情報伝達に特化したものに分かれていくことを示した。
さらにダーウィン進化の数学的理論を発展させて、この分化が、数学や物理学の基本原理である、対称性の自発的破れの概念で説明されることを示した。
本研究成果は生命の起源の理解、複製細胞の進化実験への理論的基盤を与え、また社会一般での役割分業の理解にもつながる可能性がある。

なお、本研究は科学研究費基盤(S) (15H05746) 、新学術領域研究「進化の制約と方向性」(17H06386)、若手(B) (JP17K17657)、および国立大学改革強化推進補助金(特定支援型「優れた若手研究者の採用拡大」) のもとで行われた。

論文情報

Nobuto Takeuchi*, Kunihiko Kaneko, "The origin of the central dogma through conflicting multilevel selection," Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, doi:10.1098/rspb.2019.1359.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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