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水素原子一個で強力な触媒をケージング ――アルツハイマー病関連のアミロイドを低分子で副作用を抑えて分解する―― 研究成果

掲載日:2024年5月9日

 東京大学 大学院薬学系研究科 有機合成化学教室(金井 求 教授)と機能病態学教室 (富田 泰輔 教授)は共同で、分子に水素原子を一個つけるだけで毒性を低減させて脳内への移行性を向上し、副作用を抑えてアルツハイマー病モデルマウスの脳内で毒性のあるアミロイドβ(Aβ)凝集体(アミロイド)を強力に分解する触媒の開発に成功しました。
 本研究では、アミロイドを分解する触媒の活性を従来に比べて200倍向上させたEVを見い出し、体内深部に到達する微弱な光でもアミロイドを分解できる可能性を拡げました。しかしEVは毒性が高かったために分子の構造に工夫をほどこして、新触媒LEVを開発しました。LEVはEVに水素原子を一個つけただけの分子ですが、毒性が格段に低く、また脳に効率的に移行しました。LEVは脳内でEVに変換され、副作用を引き起こすことなく、アルツハイマー病モデルマウスの脳内で強力にAβアミロイドを分解しました。
 本成果は、世界中の人々に医薬の恩恵を平等に与えうる安価な低分子を用いて、アルツハイマー病を克服する薬の開発の第一歩となると考えられます。

論文情報

Masahiro Furuta, Suguru Arii, Hiroki Umeda, Ryota Matsukawa, Katsuyuki Shizu, Hironori Kaji, Shigehiro A. Kawashima, Yukiko Hori, Taisuke Tomita, Youhei Sohma, Harunobu Mitsunuma, and Motomu Kanai*, "Leuco Ethyl Violet as Self-Activating Prodrug Photocatalyst for in-vivo Amyloid-Selective Oxygenation," Advanced Science: 2024年4月30日, doi:10.1002/advs.202401346.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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