平成23年度学位記授与式 修了生答辞

平成23年度学位記授与式 修了生答辞


第一部

 本日は、濱田総長並びに諸先生方のご臨席を賜り、このような盛大な式典を催して頂き、修了生を代表致しまして心より御礼申し上げます。また、濱田総長からは温かい御告示と激励のお言葉を戴き、感謝申し上げます。
 初めに、昨年の東日本大震災により被害に遭われた方々が、一日も早く安心した生活を御送り頂けるよう、心からお祈り申し上げます。震災後、多くの実験施設において、大型機器の停止を初めとする節電への取り組みが進められており、科学研究と社会との関わりについて、これまで以上に強く意識するに至りました。私たちは、安定した社会基盤があって初めて研究生活を続けられることを謙虚な気持ちで心に留め、未曾有の災害を経ながらも本日の修了式を迎えられたことを大変有り難く存じます。
 私たち理系大学院修了生は、深遠なる「自然科学」の世界に足を踏み入れ、一人の研究者として羽ばたこうとしております。自然との対話を通じてその奥深さの一端に触れ、初めて味わう新鮮な感動を胸に刻みながら、私たちがこの学位記授与式を迎えられたことは、諸先生方の情熱的な御指導の賜物と存じ、深く感謝申し上げます。私たちがここに拝受致します学位記には、Ph.D.すなわちDoctor of Philosophyとありますが、このPhilosophyは訳語である哲学という一学問分野に限定されるものではありません。元来、自然についての知の探求はnatural philosophyと呼ばれてきました。私たちは、断片的な知識の記述に充足するのではなく、論理性を以て体系的な自然観を追究するnatural philosophyを実践し、その方法論を学んで参りました。
 現代科学においては、学問の多様化に伴う学際領域の融合が進められています。このような学際融合の潮流の中で、先ほど申し上げたnatural philosophyを如何に追究していくかは、次代を担う私たち若手研究者に課せられた重大なテーマです。私は、医歯薬学分野に身を置き、昆虫であるカイコをモデル生物として、新しい創薬基盤研究に挑戦しております。このような新分野の開拓を通じて私は、周囲に耳を傾け、論理的に対話することの重要性を強く認識するに至りました。現代の科学界に残された諸問題、並びに国際社会が直面する課題の大きさを鑑みて、これからは分野の壁を取払い、互いに連携して解決策を探る必要があると、決意を新たに精励する所存であります。
 私たち修了生一同、大学院生活を通じて培った能力を存分に発揮し、近視眼的な流行に惑わされず、ものごとを大局的に俯瞰して国際社会を牽引するリーダーを目指し、精進して参りたいと存じます。最後になりますが、自然科学の魅力を伝えて下さり、今日まで御指導頂いた恩師の先生方に、重ねて感謝の意を表します。また、日々の研究活動を支えて下さった家族や友人に感謝致しまして、修了生答辞とさせて頂きます。


平成24年3月22日
修了生総代 薬学系研究科 博士課程 石井 健一(いしい けんいち)



第二部

 本日は濱田総長をはじめ、諸先生方のご臨席を賜り、このように盛大な学位記授与式を挙行していただきましたこと、修了生一同、心より厚く御礼申し上げます。また、只今濱田総長より激励のお言葉を賜りましたこと、重ねて御礼申し上げます。
 様々な経験を経た仲間達が、今日、この場に集いました。私達は皆、自分自身が価値あると信じる目的に取組むために、この東京大学大学院の門を叩き、自ら進んで学習し、研究し、新たな知見の獲得と深化を目指してまいりました。私自身は、自然界を支配する最も基礎的な物理原理に興味を抱き、その探求に多くの時間を費やしてまいりました。
 その一方で、このような基礎的研究は、宇宙の起源に関する知的好奇心を満たすという点以外でも社会に還元されうるのだろうか、と自問した事もありました。しかし、基礎的研究で得られた知識が応用的分野で利用されていたり、あるいはその逆もある事を知り、また、このような異分野間での交流はよく見られる事を知るにつれ、そのような疑問はなくなっていきました。様々な知識は全て、切り離されたものではなく、目には見えにくい構造でつながっていたのです。人は生まれながらにして、学ぶ事の喜びを感じることができるようつくられています。その喜びを原動力として、多彩な分野で多様な知の創造が行われ、それら全てを基盤として新たな社会の姿がもたらされるのだと、ここに集った誰もが実感していることと思います。
 さて、世界はグローバル化の進展により益々複雑になっており、それに伴い、私達の人生は今後も、学びの機会に満ちたものとなるでしょう。事実、現在、我々人類の前には、環境問題、エネルギー問題、金融システムの諸問題等、複雑な課題が山積みされています。私達はこれから、本学で培った力を発揮して日本のリーダーとして活躍する事を目指すとともに、将来の仲間達と専門分野の垣根を超えて協力し、持てる知識の全てを基盤として、これらの問題の解決へ向けても果敢に挑戦していく覚悟であります。
 最後に、今日まで私たちをご指導下さいました濱田総長をはじめとする諸先生方、職員の皆様方、共に多くの時間を共有し切磋琢磨した学友、先輩、後輩の皆さん、そしていつも私たちを温かく見守り支えて下さったご家族の皆様に、修了生一同心より御礼を申し上げます。終わりに、皆様のご健康と東京大学の更なるご発展を祈念致しまして、答辞とさせていただきます。


平成24年3月22日
修了生総代 総合文化研究科 博士課程 河井 博紀(かわい ひろき)

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