平成23年度卒業式 卒業生答辞

平成23年度卒業式 卒業生答辞


第一部

 本日は私たち卒業生のためにこのような盛大な式典を催して頂き、誠にありがとうございます。ご多忙のなか、教職員の皆様・御来賓の方々のご臨席を賜り、卒業生一同心より御礼申し上げます。また東日本大震災で被災された方々に、この場をお借りして心よりお見舞い申し上げます。
 卒業という節目を迎える今、私たち卒業生の胸にはここまで自らが置かれていた境遇、待ち受ける未来への想いが過ぎります。私たち卒業生の多くは昭和の末、若しくは平成の始めに生まれ、両親・祖父母が築き上げた物質的に不自由を強いられることのない時代を謳歌してきました。
 このような恵まれた時流のなかで東京大学に入学した私たちは、意識的に様々な自己鍛錬の場を求めました。
 私の所属した教育学部では、人がいかに思考し成長し、またいかに他者と関わるかという、社会形成の根幹に係る領域を扱っています。その研究は社会に還元されるべき内容であると同時に、自らに適用して思考することが直接的に個人の価値観形成の糧となるものでした。卒業論文では、「人が如何に錯覚を知覚するか」という、自らの好奇心に沿った研究テーマを主体的に設定させていただき、多大なるご支援を頂きながら執筆できたことを深く感謝しております。
 課外活動としては運動会での部活動に心血を注ぎ、多くの仲間と共に、チームへの誇りを抱きながら目標に向かって努力を重ねるなかで多くの教訓を得ました。絶えず目の前の現実に全力で取り組む経験は他では得難いものであったと感じています。
 昨今、日本の社会・経済は世界の国々との関係性が密になる一方で、国際的競争力や活力を徐々に失いつつあると言われています。また東日本大震災を通じて、人々が互いに助け合い社会全体が共存していく必要性を強く実感することになりました。このような難題に直面したことで、従来の政治・社会構造はもはや通用せず、個々人や地域のつながりを重視するなど、新たな価値観の形成が求められる時代に入りました。転換期にはモデルとなる国は存在せず、私たちは現実社会の競争に向き合いながら、同時に新たな社会規範を模索することを迫られています。
 このような時代の転換点の中でいかなる心構えで社会に臨むべきか思いを巡らすと、ただ知識の収集に専念するに留まらず、実際の行動を以て他者に働きかけていくことが必要であると感じています。新たな価値観を形成する上で、他者と衝突する恐怖に流されず、時には闘志を前面に表してでも、その発言・態度・行動が本質的に物事を進める上で妥当であるか、追求し続ける覚悟が重要となります。
 東京大学という贅沢な環境のなかで切磋琢磨してきた私たち卒業生は、今後各々の進む専門分野において日々邁進し、またどこかで再会して再び刺激を与え合い、社会に優れた指針を提示できるよう努力して参ります。
 最後になりますが、未熟な私たちをご指導くださいました先生方、学生生活を支えてくださった職員の皆様、あらゆる場面で惜しみない支援をしてくれた家族、友人に改めて御礼申し上げるとともに、東京大学の輝かしい発展を祈念いたしまして、答辞とさせていただきます。


平成24年3月23日
卒業生総代 教育学部 小原 亮(おばら りょう)



第二部

 本日はお忙しい中、ご来賓の方々をはじめ、多くの皆様に臨席を賜り、私たちのために、素晴らしい式典を催してくださったことにお礼を申し上げます。また、答辞を述べるという名誉をいただいたことに感謝いたします。
 6年間の学生生活のうち、私にとっては昨年、東京大学医学部と大学間交流協定のあるジョンズ・ホプキンス大学医学部でアメリカの臨床実習を体験したことが大きな経験となっております。言語、文化、医療制度が異なる中で、毎朝6時からの回診にはじまり、一日に何件もある手術、外来診察、当直と、学生にとっては挑戦続きの毎日でありました。そうした中で励みとなったのは、世界屈指と言われる医療機関でも東京大学の先生がたのお名前が知られていたことです。これは学生として大変に誇らしく、将来的には私達自身が日本のみならず、世界の医学および医療をリードしていくことは決して不可能ではないと感じました。
 近代医学の父であるSir William Oslerはある年の卒業式でのスピーチで次のように述べています。 "Gentlemen, I have a confession to make. Half of what we have taught you is in error, and furthermore we cannot tell you which half it is." つまり、卒業後は大学で学んだことを鵜呑みにせず、それらを批判的に吟味し、誤りがあれば、これを修正していかなければいけないということだと思います。
 その誤りというのは単にある事象の間違った解釈から生じたものかもしれません。あるいは、新たな治療法を確立することで、ある疾患が不治の病であるという概念を誤りにできるかもしれません。どのようなものであっても、こうした誤りを改めていくことが東京大学の卒業生となる私たちのミッションであると感じます。
 様々な国難に直面する今日であるからこそ、国内のみを見て行動するのではなく、各国の優秀な人材と競い合うなかで、それぞれの専門分野をさらに前に進め、世界に発信することで今苦しまれている方をはじめ、多くの方々に希望をもたらすこともできると思います。
 最後になりましたが、今日までご指導下さった先生がた、ともに学生生活を過ごした友たち、支えてくれた家族、そして何より、私達医学生に親切にご自身の疾患を教えてくださった患者の皆様へ感謝申し上げ、答辞といたします。


平成24年3月23日
卒業生総代 医学部 松井 甫雄(まつい ほたか)

 On behalf of the graduating students, I would like to thank our distinguished guests, our faculty, and our families for holding such a brilliant ceremony for all of us here today. It is a great honor to make a valedictorian speech, and I thank my classmates for allowing me to do this.
 Last year, I was very fortunate to study overseas, at the Johns Hopkins Hospital, through an exchange program between the Johns Hopkins School of Medicine and the University of Tokyo. It was rewarding to take part in a rigorous clinical clerkship in a different language, a different culture, and a different healthcare system. At the same time, it was encouraging to hear the names of University of Tokyo professors mentioned in the world's most highly regarded medical institution, which gave me a sense that in the future it will be possible for us, too, to play a leadership role in medicine internationally.
 Last year, after the catastrophe that struck our country, we saw both the threat and the promise of science and technology. I believe that this is a good time to consider our mission as graduates of the University of Tokyo.
 Sir William Osler, the father of modern medicine, said in one commencement-day speech, "Gentlemen, I have a confession to make. Half of what we have taught you is in error, and furthermore, we cannot tell you which half it is." I believe that what he wanted to say is that those who would lead the next generation should not just believe blindly in what we were taught in school but challenge existing concepts. Errors may merely result from a misinterpretation of observed natural phenomena, or from a mistaken notion that a certain disease is incurable, despite our potential ability to create a novel therapy. It is our mission as graduates of the University of Tokyo to correct those errors and to give hope to people who suffer, by bringing science, technology, and medicine forward.
 To conclude, I would like to express my gratitude to the faculty, to our families, to my friends, and last but not least to the generous hospital patients who taught us about their diseases throughout our clinical clerkships.
 Thank you.

March 23, 2012
Hotaka Matsui

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