アメリカは車社会だとは聞いていたが、実際デイヴィスの町には公共交通機関はバスしかなく、学生は大半が自転車かバスで通学していた。私も1年間ずっと天候に関係なく自転車で通ったが、これほど自転車が街中を行き交っている町はあちらでは珍しいということだった。そんな町に住んでいても遠くに出かけるには車が無いと非常に不便で、やはり車社会というのは本当であった。街の中心街はとても小さいが、その他に大小のモールが点在しているので、普段の買い物には困らなかった。ただ娯楽施設はあまり無いため、退屈なつまらない街だと感じている学生も多いようだった。治安は大変よく、主な犯罪は自転車泥棒ぐらいで、夜に女性が一人でジョギングをしているのを見て大変驚いたこともあった。また想像以上にアジア系米国人が多く、UCDの学生構成も最近は白人系を抜いてアジア系が多くなったということで、キャンパス内でも街中でも自分が外国人であるという事を意識することは少なかった。とても落ち着いた環境で、勉強をするには恵まれた環境だという私の第一印象は1年間を通して変わることは無かった。
その中で一番印象に残っている授業は、アメリカ現代社会の様々な問題について討論する授業である。この授業は、人種、性、貧困、学校教育、家族等々米国が抱える様々な社会問題について書かれた教科書を使い討論をするという授業だった。毎日読書の宿題が出て、その内容について次の日に討論をするのだが、UCDの正規の大学生が使う教科書と同じものを使っているため内容も難しく、平均10数ページもあるため、初めのうちはこの授業の宿題だけでかなりの時間を費やした。しかも辞書を一切使うなと言われているため、内容が良くわからないまま討論に臨むということも初めは多かった。討論中は、先生が「それは何故?」「どういう方法で?」というようにかなり突っ込んだ質問をしてくるので、それに対して即座にきちんとまとまった意見を言わなければならず、授業中は緊張の連続だった。昔から日本の教育は知識偏重で、「なぜ?」「どうして?」という自分の頭で考えさせる力が伸びないと言われるが、その当否はともかく、少なくとも自分自身の学生生活を振り返るとやはりそうだったのかなと改めて感じた。(実際、日本語でもその質問には即座に返答できないと思うことが度々あった。)また、私も含め全般的に日本の学生はなかなか自分から発言せず、発言も発音や文法を気にしながらたどたどしく話すのだが、南米や中東などからの学生は文法や発音などは気にせず、時には内容的にも少しずれているのではと思うことまで、とにかく単語を並べてぺらぺらと話すのは印象的だった。彼らの母国語と英語とが比較的似ているためだとか、文化の違いだと言ってしまえばそれまでかもしれないが、外国語を習得する際には彼らのような姿勢で臨むことも非常に大切なことであると感じた。ただ、早い段階からそれが自分の課題であると気付いたのだが、頭ではわかっていても実行するのはなかなか難しく、この研修期間中に私がそれを完全に克服できたかと言われるとそれほど自信が無い。しかし、この授業は論理的に物事を考え、それを自分の言葉で他の人に判り易く伝えるという訓練になったという意味で貴重な経験であったと思う。
論理的に物事を考えそれを人に伝えると言う意味では、英作文の授業と様々な授業で行った大小のプレゼンテーションも非常に勉強になった。英作文の授業では、いくら文法的に正しく美しい文章を並べても論理の筋道がきちんと通っていないと良い評価はもらえない。それはプレゼンテーションも同様で、いかに簡潔にしかも無味乾燥にならないように発表内容を聞き手に伝えるかと言うことに非常に神経を使った。作文やプレゼンテーションの準備は時間がかけられるので、討論でその場で意見を言うことに比べればその点は楽だったが、その分時間も費やした。特に文を書くことは昔から日本語でも非常に時間がかかる性質だったので苦労した。いつも目の前の課題をこなすのに必死で、ホストマザーにも「和志はいつも勉強している。」と言われ続けたが、帰国して冷静に考えると、その辺は少し手を抜いてもっと他の活動をした方が会話力自体はもっと伸びたのかなとも思っている。
UCDのEAPオフィスには、ディレクターが1人(地理学の教授の方が兼務している)とアドバイザーが3人、事務担当のスタッフが1人おり、その他にインターンとしてUCDの学生が常時2〜3人(全部で約10人)ほど勤務している。UCDでは他のオフィスでも、このように学生スタッフを雇用しており、その数は総勢4,000人にも上る。TAとして働いている学生数と合わせると事務職員の数に匹敵するほどであり、このことは私にとって大きな驚きだった。オフィスの長が教官職であるということと併せ、同じ職場に教官、職員、学生が混在しているということは日本では考えもしなかったことだが、非常に良い関係を保って仕事をしている姿を見ると、相互理解のためにも非常に良いアイデアであると思った。
私は、相談に来る学生とアドバイザーとの面談の席に同席したり、インターネットで資料を集めたり、学生インターンと一緒に書類整理をしたりという仕事をしていた。学生とアドバイザーとの面談は最初のうちは話を聞いているだけだったが、日本から来ているインターンというと興味を持ってくれる学生も多く、日本について質問されたり、また逆にこちらから質問したりということもあった。すぐに気付いたのは職員の仕事が東京大学とはかなり違うという点である。例えば、オフィス内の仕事分担は、事務的な手続きや質問、外部からの電話についてはほとんど学生インターンが処理し、アドバイザーは文字通り学生の相談に乗るだけという形である。アドバイザーと各学生との面会時間は一回約30分となっており、とても中身が濃い。各アドバイザーは自分の担当国のプログラムについては非常に詳しく、各学生の希望や専攻に合ったプログラムを一緒に検討したり、金銭的に苦しい学生については種々の奨学金(UCの奨学金からその学生が行く国の民間の奨学金に至るまで)を紹介したりと実にきめ細かい。私も、日本留学を希望している学生に日本の奨学金をインターネットで調べて紹介したりして出来る限りお手伝いをした。驚いたのは、カリフォルニア大学のEAPにその学生に適したプログラムが無い場合、他の団体が行っている留学プログラムまで紹介していることである。米国はグローバリゼーションへの対応や異文化理解のため学生の留学に力を入れている(実際、多い大学では年間に全学生の10%以上が海外へ留学しているということだ。)が、こうしたきめの細かいサービスからも相当留学を重要視しているのだと感じた。また、各プログラムの募集が締め切られるとアドバイザーは各学生の書類に推薦順位を付けてUOEAPに送るのだが(最終的な選考は受け入れ先の大学が行う)、その順位付けも志望理由や成績等に基づいて各アドバイザーが行っているそうで、職員に与えられている権限がかなり違うなと感じた。組織やシステムが全く違うので東京大学とは単純には比較できないし、各アドバイザーの主観が入ったりして良い面も悪い面もあると思うのだが、責任が伴う分それだけやりがいもありそうで少し羨ましくも感じた。
それ以外では、今年4月に行われた教職員向けの研修会の準備を手伝った。この研修会はUCDの他の教職員にEAPについての理解をより深めてもらう目的で毎年行われているものである。今年のテーマは、黒人・ヒスパニック等のマイノリティや障害者等、これまで海外に留学する機会が少なかった学生達のEAP参加についてであり、現状や今後の課題についてEAPのディレクターがプレゼンテーションを行うということであった。私はインターネット上でプレゼンテーション作成に使えそうな関連記事(他大学や諸団体がどう取り組んでいるか、彼らが留学する際に障害になっているものは何か、実際の留学経験者の体験談、将来の展望等々)や各種統計を集め、ディレクターと担当のアドバイザーの方との打合せにも参加した。毎日集めた記事などを読みながら少しずつ進めたが、そういった問題に対しての取り組み方について日本の現状を比較すると考えさせられることが多かった。研修会自体は4月なので、自分はその場にいることが出来なかったのが心残りである。
送別会にて(上段左隅)
イギリスでの長期海外研修を終えて
医学部附属病院管理課総務掛
大 崎 真 澄
(ウォーリック大学)
1.はじめに
広々とした起伏の無い田園と羊の群れを眺めながら、ロンドンから列車で1時間半近く揺られ着いたところが、私が半年間滞在した街であるコベントリーです。イギリスの中部に位置するこの街は、人口約30万の中規模工業都市で、バーミンガムのような大都市にも近く、またコッツウォルズのような美しい田舎の丘陵地方へも車で比較的容易に行けるようなところにあります。コベントリーの駅からはイギリス特有の2階建てバスに乗り、さらに20分ほど行くと、ウォーリック大学があります。1965年に開設された新しい大学で、建物もオックスフォードやケンブリッジのように歴史のある重厚なものではなく、広大な敷地内に近代的な建物が散らばっております。キャンパス内には緑が多く、芝生の上をカモやアヒルが歩いていたり、日本では見たことのないような様々な種類の鳥を見かけました。
ここが今回、東京大学国際交流担当職員在外研修(長期)で9月末から3月末までの期間、私が語学研修を受けることとなった大学です。
2.語学研修について
私が学んだのは、大学のCELTE(Center for English Language Teacher Education)内にあるIntensive Course in Englishで、主に修士課程に進む人やこの先仕事で英語を活用していこうという人のために、現在の英語力をより一層発達させるように組まれているものでした。クラスはアカデミッククラス(Aクラス)とビジネスクラス(Bクラス)の2つがあり、最初のオリエンテーション時に学生はどちらか好きなほうを選択できるというので、自分が現在働いているということと、ビジネス英語を学びたいということで、ビジネスクラスを選択することに決めました。授業は年間で1タームから3タームまでありますが日程の都合上、9月30日〜12月7日までの1タームと1月6日〜3月15日までの2タームを受講しました。
Bクラスの何人かは、このコース終了後MBAコースに進む予定であり、他にはすでにイギリスでMBAを取得済みだがもう少し語学を勉強するために来ている人もおりました。クラスメートには様々な国籍と経験を持つ学生がおり、1ターム目の最初は私達の他に日本人が1人と、中国人3人、台湾人1人、クウェート人1人で、途中で中国人1人が抜け、リビア人2人が加わり、2ターム目から台湾人とリビア人が抜け、中国人1人、タイ人1人、ベネズエラ人1人、韓国人1人が加わりました。このように若干の人数の変動はありましたが、A、Bクラスどちらも常時10人前後の生徒が在籍していました。
最初に授業を受けてみて特に感じたのが、日本とイギリスの授業風景の違いでした。というのは、彼らは、例え文法が間違っていても知っている英語を使って相手に言いたいことを伝えるのがとても上手く、とにかく授業中でもよくしゃべっていました。日本で自分達が受けてきた教育、特に英語に限って言えば、授業は読み書きが中心で、話す機会といえばせいぜい暗記した文章、お決まりの会話を口に出して練習する、という程度のものだったと思います。ところがここでは、わからないことがあったらその場ですぐに質問したり、又先生が教えてくれた表現を使って別の言いまわしをしてみせ、これは正しいのかどうか聞いてみたり、と授業を中断させるのは当たり前です。この雰囲気に最初はとまどいや焦りも感じましたが、何とか話す隙間を見つけて話さない限り、ずっと話す機会などないのだということに気づき、なるべく自分なりに授業に参加していくよう努力しました。それと、日本の授業では間違うことがどことなく「恥ずかしい」という雰囲気もあって、自信のある答えしか発言しないようにしていた記憶があるのですが、そこでは皆堂々と間違って、それを正してもらうことで学んでいく、という流れでした。ですから、間違うことは全然恥ずかしいことではなく、むしろわからないままやり過ごして行くことの方が後で何も身につかないことになるのだということなのでしょう。
次に実際の授業についてですが、月曜日から金曜日まで週24時間(月曜から水曜までは朝9時から夕方4時まで、木曜と金曜は朝10時から13時まで)のカリキュラムが組まれており、Writing、Reading、Speaking、Listening等を5〜6人の先生が教えるという形式でした。その他に、主にpostgraduate の留学生を対象としたin-sessional classが無料で開講されており、ここでも10種類以上の様々な英語の授業が展開されておりました。
まず、月曜日と火曜日の朝からWritingの授業がありましたが、朝のまだ頭の働かないうちから英語の文章を書くのは少々きつかったです。それぞれ、「General Communication in Writing」と「Business Communica-tion in Writing」に分かれており、前者は、自分の家族や尊敬する人物、好きなスポーツ等の比較的扱いやすいテーマを選んで、文章の構成方法や接続詞の使い方等を段階的に学んでいきました。
一方、後者のBusiness Writingでは、製品の発注や議事録の作成、新製品の宣伝、企業内部における要望書の作成について、ビジネスレターに特有の様々な言いまわしを主に学びました。
これら2つの授業では、毎回必ずessayを書く宿題が出たのでそれをこなすのが大変でした。宿題をやってこなくても先生は特別注意はしないのですが、あくまでも自分の責任で勉強している以上、みんな比較的真面目に提出していました。提出したessayは、文法の誤りから単語のスペルミスまで細かくチェックがされてすぐに戻されてくるので、大変勉強になったと思います。
「Listening and Speaking」という授業は皆が最も興味を持っている内容なだけに、一番活気のあった授業の一つでしょう。先生も学生からの評価が高い人でしたので、授業の進め方がとても上手く、生徒全員になるべく話す機会を与えるように工夫していました。扱った教材も、最初の頃はイギリスの文化や歴史、一般的な人々の考え方や生活についてのものが多かったのですが、次第に会話におけるより実践的な表現方法や、最新の国内のニュースを取り上げたり、ドキュメンタリー番組を見た後にディスカッションをしたりと、バラエティーに富んでおりました。それぞれの国の事情について質問されることも多く、自分が日本の社会について知識不足であることと、たとえ知っていたとしても英語で説明することの難しさを痛感させられることがしばしばありました。
また、ここでは15〜20分程度のプレゼンテーションを各タームの最後に行ないましたが、それに伴ってより効果的なプレゼンテーションの方法について、例えば順序を追って説明するのにある程度決まった表現方法を教えてくれたり、ホワイトボードやOHPを使う際の注意点や立ち位置、聴衆との視線の合わせ方まで詳しく説明がありました。私はただでさえ人前で話すことは得意とはしない方なので、それをしかも英語ですることに最初はかなり憂うつでした。なかなか思ったようにはいきませんでしたし、ホワイトボードの字も乱雑で先生からの指摘も多かったのですが、終わった後はそれなりの達成感があり、また他のクラスメートの発表を聞くことによっても学んだことが多かったです。
授業の中には、当然内容が自分には難し過ぎるものもあり、2ターム目から始まった「General academic reading skills」は、扱う教材が大学院進学のための英語能力試験であるIELTS用に作成されたテキストからのものが多く、私にとってはかなり高度な内容でした。長文で内容が難しい上に読む時間が短いので、いかに早くざっと目をとおして問題に答えていけるかどうかが一番の問題でした。
「Business Communication」では日常会話の他に、様々なビジネスシーンにおける電話でのやりとりや会議の進め方、仕事をする上での人間関係や交渉術についてを中心に、ペアを組んで練習したりグループでディスカッションをしました。始めのうちは、ホテルの予約やレストランでの会話にも使えるような、いわゆる日常生活でも役に立つ表現が学べて良かったのですが、毎回似たようなことをさせられるので、そのうちみんな飽きてきたようです。2ターム目からは、リスニングを重点的に行ない、ある国内企業のスタッフに対するインタビュー形式のビデオを見ながら要点を書き取るということをよく行ないました。
ここでも時には学生に短い発表をさせることがあり、各種のグラフを説明する際の表現方法について詳しく教えてくれました。
これらの授業の他に、留学生のために開講されているin-sessional class の中で出来るだけ行くようにしていたのが「Listening to The News」と「Pronunciation」のクラスです。
「Listening to The News」は、週2回当日の朝録画したBBCニュースを見ながら先生の解説を聞いて、ニュース英語に親しみリスニングを強化するというものでした。録画したニュースから先生が書き起こしたニュースの原稿が配られ、一回目はなるべくそれを見ずに内容を把握し、その後留学生にとって難しいと思われる単語や言い回しの解説がされた後2回目を見る、という具合に進められていました。私のいた時期はイラク関連のニュースが頻繁に流れていましたので、国際政治や戦争に関する単語もよく取り上げられました。ユーモアやジェスチャーを交えたテンポの良い解説は大変わかりやすく、いつも教室内は立ち見が出る程の人気ぶりで、私も授業と授業の合間の昼休み中であるにも関わらず、出来るだけ受講するようにしていました。
もう一つの「Pronunciation」では発音する際の舌の位置や口の動きをわかりやすく図で示したり、発音の似ている単語や日常会話を聞き取ったり、ペアを組んでの発音練習を繰り返し行いました。 この授業を継続的に受けることによって、いわゆるイギリス英語の発音の特長がつかめるようになり、それと同時に自分のリスニングの能力も少しずつ向上したようです。
授業の他に、週に一回チュートリアルといって、学生一人一人についているチューターの先生との面談が約20分あり、私の場合は少々神経質な感じのする、いかにも典型的なイギリス人女性(?)という印象の先生がチューターでした。そこでは学習の相談や個人的な悩みまでどんなことでも話すことができるので、イギリスに来て最初の頃英語がなかなか聞き取れないことに焦りを感じていたことから、助言を求めたところ、「とにかくラジオでもTVでもいいからたくさん英語を聞いて、そしてあまり自分にプレッシャーをかけずにリラックスして聞きなさい。あなたは朝から晩までずっと授業を受けているのだから、その後はなるべくリラックスすることも重要よ」ということをアドバイスしてくれたり、また、私が決まった授業以外に更にin-sessional classをいくつか受講するなどして、少し疲れ気味だった時などには、「最近授業に集中できていないみたいね。」と、すぐに指摘されました。それ以外にも普段の生活において何か困ったことはないか等、いつも自分の生徒のことを気にかけてくれていました。
3.授業以外での活動
大学の周囲には娯楽施設が少ないこともあり、キャンパス内には立派なアートセンターやスポーツセンターがありました。アートセンター内の劇場では演劇、コンサートやダンスなどが観られ、映画館では最新のものも含めて映画が頻繁に上映されていたので、クラスメートを誘って観に行ったり、休日になるとキャンパス内のテニスコートでテニスをすることもありました。また、学生のほとんどが学内の寮に住んでいるため、あちらこちらの寮のキッチンでパーティーが開かれる事が多く、私も友人に誘われて行ったこともありましたが、食べ物はピーナッツ程度しかなく、立ったままビールやワインを飲んでいろいろな人と会話を楽しむというのが一般的なスタイルのようでした。
また私達はコテージ(1棟を2人で借り、1人あたり£337.50 約65,000円)に住んでいたわけですが、ここのキッチンでもクラスメートを招き、それぞれ各国の料理を持ち寄ってパーティーを開いたりもしました。この時感じたのが、英語が母国語ではない人達とたわいも無い話をすることが、どれほど楽しいものか、つまり、お互い使っている英語というのは、お互いが確実に分かる単語であり言い回しであるので、理解できなくて困るということがほとんどないのです。英語の勉強にはそれほどならないかも知れませんが、様々な国から来た人達と共通の話題で思いきり笑ったり出来るのは、まさに英語のおかげなのだと強く感じた時間でした。
せっかくイギリスにいるのだからもっとイギリス人との交流を深めたいと思い、タームとタームの間の冬休み中にイギリス人の家庭に滞在し、彼らの実際の生活を体験する機会を得ることができました。クリスマスはウェールズで過ごしたのですが、比較的地味なもので、自分達の家族や近所の人たちとの交流を大切にし、朝は教会に行ったり、夜は近所のパブに行く程度で、派手なパーティー等はせず、日本のお正月のような雰囲気でした。初めて彼らと会話をした時、ウェールズ訛りの英語がさっぱりわからなく、今まで自分が勉強してきた英語はいったい何だったのだろう、と大きなショックを受けたのを覚えています。
ニューイヤーを過ごした家庭は、HOSTという国内のホームステイ先を斡旋する機関から紹介されたところで、コベントリーからはバスで北東へ2時間ほどのところにある、リンカーンという街で暮らす奥さんと旦那さんの2人家族の家に滞在しました。実はその家庭は「vegan(完全菜食主義者で肉や魚のみならず卵や乳製品も一切食べない。革製品も身に着けない。)」で、たまたまその時期に受け入れてくれる家庭が少ないこともあり、そのような家庭でもいいかどうかを前述のHOSTから聞かれ、それまで聞いたこともなかったveganという人達がどのような食生活を送っているのか、ちょっとした興味本位で承諾したのです。一体どんな料理がでてくるのだろうか、きっとサラダだけですぐにお腹が空くのではないか、などと不安だったのですが、野菜や豆をふんだんに使ったメキシコ料理や、豆腐を使ったオムレツ風のもの、また牛乳の代わりに豆乳を使って料理するなど、いろいろ工夫されたものが出され、実においしいものでした。実は奥さんは料理をするのが大好きで庭ではたくさんの野菜を栽培したり、広々としたキッチンにはあらゆる食材が並んでおり、また私がお土産で持って行ったあずきの缶詰を使ってオリジナルのイギリス風デザートまで作ってくれる等、貴重な経験ができたと思います。
4.おわりに
研修に出発する前、「半年は決して長くはない期間だが、1年間いるのと変わらないくらいに英語を上達させたい」とかなり意気込んでいたのと同時に、このような機会はめったにないのだから、思いきり楽しんで帰りたいと思っていました。実際イギリス人だけではなく、様々な国から来ている人達と友達になることができ、また最初はお互いに言いたいことが伝わらなくて苦労したとしても、根気よく理解しようと努めることが重要なのだとあらためて認識できたことは、日本で英語を学ぶだけでは決して得られないような経験であったと思います。
今まで私が行った外国旅行では、その国の良いところしか見えませんでしたが、今回初めて自分が外国人として生活してみると、イギリス人の考え方、仕事のやり方、生活の仕方等に馴染めず、戸惑うことも多々ありました。しかし、同様に日本について考えてみると、同じように外国人にとっては不便なことが数多くあり、日本も彼らにとっては決して住みやすい国ではないのでは、と考えるようになりました。
また、各国から来たクラスメートが、想像していた以上に日本の企業や文化についてよく知っているのには驚かされました。扱った教材の中でも例えば日本とイギリスやアメリカのビジネスの進め方の違いについて取り上げられていたり、「日本人のYesはYesではなくNoを意味するのだ」ということをクラスメートに言われて苦笑したり、中にはステレオタイプとも取れるイメージを持っている場合もあり、その都度状況を説明するのに苦労しました。それだけ日本のニュースが海外に流れ、かつ日本のビジネスに興味を抱いている人達が多いのに対し、自分こそイギリスを代表する企業の名前も挙げられないという始末で、この経験がきっかけとなって以前にも増して海外で起こっている状況に目を向けるようになりました。
日本で過ごすのとは比べものにならないほど、充実した半年間を過ごすことができ、そしてこれだけの時間を自分がやりたかった語学の勉強に費やせたことは、大変貴重な経験となりました。ここで身に付けたことを今後も維持し、仕事に生かせるよう努力をしていきたいと思います。最後になりますが、このような研修の機会を与えてくださった皆様、そしてウォーリック大学でお世話をしてくださったスタッフの皆様に感謝します。

クラスメートとチャイニーズレストランにて(上段中央)
英国での研修を終えて
理学系研究科等生物科学専攻図書室
山 谷 弘 美
(ウォーリック大学)
私は本学の国際交流担当職員在外研修のため、平成14年9月27日から平成15年3月23日までもう一名の派遣者とともに英国ウォーリック大学に滞在した。ウォーリック大学は1965年に創立された比較的新しい大学で、ロンドンから列車で1.5時間ほどの中部イングランドの産業都市コヴェントリーの郊外にある。大学の南方には古くは温泉地であったロイヤル・レミントン・スパー市があり、大学キャンパスまではいずれの市からもバスで30分くらい、周囲には緑豊かなのどかな風景が広がるところである。
私達は大学のCELTE(Center for English Language Teacher Education)というデパートメントが主催する集中英語コースに2学期間参加して語学研修を行った。この集中英語コースにはアカデミッククラスとビジネスクラスの2クラスがあり、コースの目的として英国の大学院で勉強するために十分な英語力、職業上で使える十分な英語力を修得するという2つの柱が掲げられている。入学者は主に英国大学院進学希望者や経営学修士号(MBA)取得を目指す留学生である。昨年度は1クラスの人数は約10名で、私達は後者のビジネスクラスで中国、台湾、クウェート、リビア、タイ、韓国、ベネズエラ人のクラスメート等と共に勉強した。学習効果を上げるためのカリキュラムは文法、ライティング、リスニング、スピーキング、リーディング、スタディスキル等の科目から総合的に構成された週24時間のフルタイムクラスだった。毎日の授業の他に宿題と自習が重要とされ、学習量はとても多かったが、国際的な環境で英国人講師から英語を学ぶのはとても楽しかった。英語コースの事務担当者も留学生に対して親身に世話をしてくれた。グループによる授業の他、学生一人一人に対して特定のチューターが定められ、学習の進捗状況等についてチューターと学生が個別に面談するチュートリアルも毎週行われていた。親切で人間的にも魅力のあるチューターとは学習面だけでなく研修生活全般にわたって相談したり話し合うことができ、私はこのチューター制度は英国式教育の大きな長所であると思った。CELTEでは学期毎にウェルカムランチ、ダンスパーティーやオックスフォード、ケンブリッジ、ウォーリック城等への日帰りエクスカーションが計画され、忙しい勉学の合間にも社交的な催しや英国文化に触れる機会等が提供されていた。
CELTEのクラスは構成メンバーからいっても多文化混合クラスであり、英語学習にもそれぞれの国民性や各国事情を伺うことができたことは興味深かった。日本人は全般的に文法面から英語を習っていて知識はあるのだが、リスニング・スピーキングの実践面が弱い。比べて他国の留学生たちは文法の知識はない人でもリスニングやスピーキングは強い人が多く、クラスにも積極的に参加しているように見える。英語教育の方法や開始年齢が結果に及ぼす影響の大きさが理論と実際面を通して次第にわかってきた。また授業にはディスカッション形式が多く取り入れられていたので、出身国による考え方の違いが表れてきて日本人のみのクラスにはない面白さがあった。1学期が始まってしばらくした頃、CELTEが主催する留学生対象のIn-Sessional クラスというプログラムが始まった。これは昼休みと夕方の時間帯に設定された1回1時間の自由参加の授業で、無料で受講できるので開講当初はいずれのクラスも大変混み合っていた。集中英語コースの授業のみでも十分な量であるのと内容が専門的になり大学院生の受講が多いので、英語コース受講生向けのクラスは多くはなかったが、私は発音やライティング等、興味のあるいくつかのクラスに参加した。In-Sessionalには通常クラスよりもっと大学らしい雰囲気があり、これらのクラスで英語の発音の鍵や少し上級の英語を学んだり、他学部の友人と知り合う機会を得ることができた。
ウォーリック大学のキャンパスは現代的なイメージでガラス張りの建築物が多いが、メインキャンパスの中心には一際目をひくアートセンターがあり、バスもこのセンターの前から発着する。ロンドン外では最大というアートセンターにはコンサートホール、劇場やシネマ、アートギャラリー、会議場、音楽練習室、レストラン、カフェバー、書店、売店等の設備が揃っており大学内外の人々でいつも賑わっていた。劇やコンサート、音楽のレッスンは日本よりも安い値段で楽しめ、映画も多彩に上映されていたようである。広大な敷地には多くの学生寮、学生会館、コンビニエンスストア、駐車場、体育館、グラウンド、診療所や立派なホテル、いくつもの食堂が点在していて、学生が使える厚生施設やスポーツ、音楽等のプログラムは充実していた。近年英国では国の政策として留学生の受入を拡大しているため、英国中どこでも留学生は多いようだったが、学生総数約18,000人のうち留学生が4,000人以上というウォーリック大学では、キャンパスを歩いていても中国・アジア系、ほか様々な国々からの留学生が占める割合が非常に高いことが実感された。インターナショナルオフィスでは各国別の留学生を対象としたパーティーや、近郊への日帰りツアーを企画したり、留学生のための英国ホームステイ機関への紹介も行っていた。これは英国人ボランティアによって運営されている機関でホストの数が足りないくらい留学生に人気があったようだが、私も運良くクリスマス休暇にスコットランドのお宅へホームステイに招待していただき、ホストファミリーやその友人の方々、ゲストのロシア人留学生とともに現地のクリスマスを体験することができた。
私達東大からの派遣者は、昨年度はメインキャンパスから至近距離にある世帯向けの宿舎へ入居することができた。そこは木立に囲まれた静かな一角で、14戸の煉瓦のコテージが建ち、野鳥やリスが毎日やって来るようなところだった。私達のお向かいは偶然日本人研究者の家族だったが、他のコテージの住人はすべて外国の研究者や大学院生の家族だった。この宿舎はクラスメート達に評判がよく、各国料理を持ち寄ってインターナショナルパーティーを開いたり、キッチンで一緒に料理を作ったりすることができた。学期末などにはクラスのメンバーで町の各国料理のレストランへ出かけることもあった。出発前にはこのような多国的文化圏で生活することになるとは想像し難かったが、現在英国には多くの外国人が居住しており、多民族、多文化な社会へと大きく変化してきている。日本のような単一民族国にいると考えにくいことだが、ロンドンでは街を歩いていて聞こえてくる言語の50%以上は英語以外の言語だったと話していた人がいるくらい、国際化が進んでいるようである。
2学期になってからCELTEのBook Clubという学生の会員制読書クラブに入り、昼休み週1回のボランティアで学生共通室にある小さな文庫を開く手伝いをした。部屋のロッカーの中にはCELTEの学生がよく使う図書が集められていて、時間になると大勢の大学院生が本を借りに来たり、部屋で雑談したりしていた。彼らは母国では英語教師が多く、語学力のレベルも高いので対応するのにも緊張感が伴ったが、英国大学院生活の様子その他、いろいろな会話ができたことはとても楽しい思い出である。
私は語学研修のかたわら、インターナショナルオフィスと図書館長の取りはからいによって、ウォーリック大学図書館の各部門と、別キャンパスの生物科学科内にあるバイオメディカル・ライブラリーを訪問させてもらうことができた。ウォーリック大学図書館は東大と異なり中央館集中型であり、学科図書室はきわめて例外的である。ウォーリックでは利用できる電子ジャーナルやデータベースの種類が豊富で、大学の方針として電子ジャーナル化が強く推進される過程にあるところだった。なお、図書館の1階には学生用端末を集中的に配置したコンピューターセンターがあり、こちらは図書館ではなくITサービス部門の管理下におかれていた。ライブラリアンである図書館長から英国の図書館事情や日本との共通点や違いについて様々なお話ができたこと、各部門の司書の方々に大勢お目にかかれたことは私にとって大変啓発的な経験だった。英国の大学司書は専門職としての位置付けが高いと感じられたが、スタッフ制度については米国とも日本とも異なるようである。英国滞在中にはオックスフォード大学やケンブリッジ大学等の図書館も訪問させていただいたが、大学図書館、学部、学科図書館の他に各コレッジの図書館もあり、ウォーリックとは全く異なる運営形態の大学や図書館の存在を知ったことや、各大学の司書の方々にご親切に対応していただき、最新の情報を得ることができたことは有意義だった。また、日本の大学図書館でも益々電子化の側面が強くなっているおり、英国各大学の現状を知ることができ非常に有益だった。
英国では多くの方々との出会いがあったが、学生の構成でも非常に国際的な環境にあるウォーリック大学の生活を通して、国籍は異なっても人と人との交流には何か共通するものがあるのではないかということと、とはいえ、人々の思考や行動がいかに自国の文化によって強く規定されているかということを強く認識させられた。英国に滞在している間は、日常生活の思わぬところで文化的な違いに遭遇し、西洋と東洋の違い、日本との違いをよく考えていた。英国の大学で学ぶ上で必要とされる基本的な姿勢や考え方は日本とは大きく異なるようであるが、短期間の滞在でそのようなことを深いところまで理解するのはなかなか難しい。英語力が十分でない外国人が異文化の中で暮らしていく上では困難なことも多かったが、物事に対しては常に異なる考え方が存在することを体験的に知ることができたこと、日本に対しても客観的な視点を持てたことは海外生活の大きなメリットだった。授業や宿題でも日本人の考え方や文化について話したり書いたりしなければならないことが多々あり、以前よりも日本文化に対する関心がずっと強くなったことは私に生じた変化の一つである。
研修当初から半年という限られた期間にできるだけ多くのことを吸収して帰りたいと考えていたが、長いようで終わってみるとあっという間に経ってしまった6カ月だった。研修仲間やウォーリックのクラスメート、スタッフの方々に助けられながらできる限りベストを尽くせたことを大変有り難く思う。この研修によって得られた語学力や知識と経験を今後の業務に役立て、還元できるよう努めていきたい。このような貴重な機会を私に与え、研修生活を支えてくださったすべての東大関係者の皆様及びウォーリック大学の皆様に心から感謝している。

CELTEがあるソーシャルサイエンスビルディング
*なお、文部科学省及び日本学術振興会派遣事業等で現在海外へ派遣されている事務職員は以下のとおりである。( )内は派遣前所属部局
東郷 太郎(医学部附属病院管理課用度第二掛)
派遣先:カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国)
派遣期間:平成15年3月29日〜平成16年3月27日
派遣プログラム:東京大学国際交流担当職員在外研修(長期)
古川 稔子(柏地区事務部企画課渉外・広報掛)
派遣先:カリフォルニア大学サンタバーバラ校(米国)
派遣期間:平成15年3月28日〜平成16年3月26日
派遣プログラム:東京大学国際交流担当職員在外研修(長期)
能登 亜希子(研究協力部国際交流課)
派遣先:モンタナ州立大学等(米国)
派遣期間:平成15年6月14日〜平成16年6月1日
派遣プログラム:文部科学省国際教育交流担当職員長期研修プログラム
細谷 敦子(研究協力部国際交流課)
派遣先:日本学術振興会ロンドン研究連絡センター(英国)
派遣期間:平成15年4月1日〜平成16年3月30日
派遣プログラム:日本学術振興会国際学術交流研修
| 事務職員の海外長期研修プログラムとして以下のものがあるが、詳細については国際交流課に照会されたい。 ・東京大学国際交流担当職員在外研修(長期) ・文部科学省国際教育交流担当職員長期研修プログラム ・日本学術振興会国際学術交流研修 ・日本学術振興会研究連絡センター事務官派遣 ・中国政府奨学金留学生(行政官派遣) ・日墨研修生・学生等交流計画派遣生 |
(研究協力部)