 日本目録学の構築と古典学の再生のために
近年、若い人を中心に古典離れの傾向があるといわれている。しかし、最近、ベストセラーとなっている新書に『日本人のしきたり』がある。著者は私が以前、宮仕えしていた役所の上司で、薫陶を受けた日本史の研究者である。しきたりの淵源は、平安時代から続く公家社会のコミュニティーの中で形成され、変化しながら武家社会に伝えられ、今日に至った知識に基づくことが多い。これらの知識は、専ら古典籍によって伝えられたものである。古典離れといわれるが、現代社会も、存外、古典に
対する関心を潜在的に持っているといえよう。
前近代の日本では、伝統的な知識やその体系が主に天皇家を中心とした公家社会や公家文庫群を媒介
に世代を超えて保管され、限られたネットワーク内での書籍の貸借と、手書きによる書写によって伝え
られてきた。木版印刷が盛んになった江戸時代以降も、書写行為は連綿と続けられたので、その写本の
総数たるや膨大なものである。古くは奈良・平安時代から江戸時代にいたるまで、手書きの写本が数
十万点以上伝存することは世界的にも希有なことだ。
こうした王家や公家の諸文庫の蔵書群を、一つのまとまりとみて、各時代の知識体系のデータベース
と捉えてみる。これを、伝来の変遷という通時的な座標軸と、ある時点での各文庫の分類のあり方とい
う共時的な座標軸とで、立体的に認識してみると、知識体系の構造を解明する有効な手段となる。その
ような方法に加えて、各時代・各所属先における蔵書目録を活用し、これにデジタル画像などによって、
写本そのものの画像を組み合わせることにより、日本独自の目録学を創成し構築することを提唱している。
幸いこの提唱は、「目録学の構築と古典学の再生−天皇家・公家文庫の実態復原と伝統的知識体系の
解明−」として、科学研究費(学術創成研究費)に採択された(2007年度から5年間の予定)。歴史・
文学を中心とした人文社会系では全国でも初めての大型プロジェクトであり、研究代表者として、その
責任に身の縮まる思いである。
現在、史料編纂所は研究所の心臓部とも言える書庫を含む別館建物(私の研究室も所在)が耐震性能
不足問題を抱え、補強工事に備えた研究資源の利用制限や研究スペース不足等、深刻な問題の渦中にあ
る。研究所や本部のご理解を得つつ、なんとかこれを乗り越え、着実な成果を出してゆきたいと思う。
田島 公(史料編纂所) |
| (淡青評論は、学内の教職員の方々にお願いして、個人の立場で自由に意見を述べていただく欄です。) |
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編集後記 早いもので、もう年末。私も学内広報の担当になって半年が経ち、ようやく慣れてきた気がします。しかし、今回はご覧の通り44ページとボリュームたっぷり!その原稿の多さに、編集作業中は月刊化したことをひしひしと実感した号になりました。苦労した分、読者の皆様に楽しく読んでいただけたら…と願いながらの校了でした。(こ) |
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