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春の紫綬褒章受章

 長澤寛道教授、池内克史教授、田中明彦教授が、本年春の紫綬褒章を受章いたしました。

長澤 寛道 大学院農学生命科学研究科・農学部 教授



 長澤寛道教授が、生物有機化学の研究における功績により、平成24年春の褒章で紫綬褒章を受章されました。
 長澤先生は、甲殻類、軟体動物、藻類、魚類、サンゴ、昆虫等を対象に、それぞれの生物が示す特徴的な生命現象を解く鍵となる生理活性物質に関する研究を行い多くの業績をあげられました。特に、バイオミネラリゼーション(生物が無機鉱物を作ること)に関する研究では、それまで主に鉱物学や結晶学の手法で行われていたバイオミネラリゼーションの研究分野に、生物有機化学的手法を導入し、無機鉱物の結晶に微量含まれる有機物質の中に、バイオミネラリゼーションを制御する生理活性を有する物質を見出し、得られた有機物質を基盤としてバイオミネラリゼーションの全体像を解明することを目指す独創的な研究を展開しました。その結果、アコヤガイにおいて真珠の結晶ができる仕組みを、特定の炭酸カルシウム結晶に結合するタンパク質を発見しその機能を解析することで明らかにした他、魚の耳石やザリガニの外骨格の形成等に関して数多くの優れた成果をあげ、バイオミネラリゼーション研究の中に新たな研究領域を創成するに至りました。これらの成果は、結晶化の人工的な制御や二酸化炭素の固定技術への応用へとつながっています。また長澤先生は、昆虫や甲殻類のペプチドホルモンに関する研究において、脱皮・変態の鍵となる新規ペプチドホルモンを数多く発見し、昆虫や甲殻類のペプチドホルモンに関する研究の礎を築きました。
 長澤先生は、これらの業績に対して、平成23年度に日本農学賞・読売農学賞を受賞されました。また、教育研究以外でも多大な社会貢献をされ、現在も研究科長・学部長としてご活躍されています。この度のご受章を心よりお祝い申し上げますと共に、先生のご健勝と益々のご活躍を祈念しております。
(大学院農学生命科学研究科・農学部 作田 庄平)

池内 克史 大学院情報学環・学際情報学府 教授



 このたび、池内克史教授が知能情報処理・知能ロボティクス分野における功績により紫綬褒章を受章されました。
 池内教授は、人間の視覚機能を計算機上に構築するコンピュータビジョンの研究に長年携わってこられました。特に2次元画像の生成プロセスを物理学の原理原則に基づいてモデル化し、この逆モデルを用いてビジョン問題を解くPhysics-Based Vision を創設した一人で、同分野における功績は顕著です。2次元画像中に観測された物体の陰影やハイライトから3次元形状を推定する手法や、物体表面の反射特性を精密にモデル化する手法は、現在のビジョン分野における実物体のモデル化理論(Modelingfrom Reality)の基礎となっています。また一方では、ロボットによる物体認識プログラムの自動生成や、人間行動観察学習ロボットを開発するなど、ロボティクス分野の発展にも大きく貢献しました。
 近年ではこれらの技術を発展させ、有形・無形文化財のデジタルアーカイブ化や解析などを目的とした学際的研究分野であるe-Heritage を提唱し、鎌倉大仏、奈良大仏や、アンコール遺跡群バイヨン寺院といった大規模文化財の3次元モデル化に成功しました。また会津磐梯山など日本の伝統舞踊をアーカイブするための踊りロボットを開発しました。このe-Heritage では、技術開発だけでなく考古、芸術、建築学といった様々な分野の研究者と連携して新たな学術的知見を得るなど、異なる分野に渡って大きな功績を挙げられています。
 池内教授は、これまでにコンピュータビジョン分野で最も権威ある国際会議ICCV においてDavid Marr Prizeや、先駆的研究者に与えられるSignifi cant ResearchersAward を受賞しています。またロボティクス分野ではIEEE R&A K-S Fu 記念最優秀論文賞を授与された他、国内外における論文誌、学術会議において多くの論文賞、業績賞を受賞しており、世界的にも高く評価されています。
 今回の受章は池内教授の永年の功績が称えられたものであり、受章をお喜び申し上げるとともに、今後益々のご活躍をお祈り申し上げます。
(生産技術研究所 大石 岳史)

田中 明彦 東洋文化研究所 教授(現:独立行政法人国際協力機構 理事長)



 東洋文化研究所の田中明彦教授が本年度春の紫綬褒章を受章されました。田中教授は、長年にわたって、国際政治学の広範な分野で教育、研究、学会活動を積極的に行われた一方で、国内外の諮問機関で政策提言活動やメディアでの論評を発表されてきたことにより、世界の国際政治学の発展ならびに日本と諸外国との知的交流に貢献されました。
 田中教授の主な研究領域は3つあり、第1は、『世界システム』(東京大学出版会)、『新しい「中世」』(日本経済新聞社、サントリー学芸賞受賞)『ワード・ポリティクス』(筑摩書房、読売・吉野作造賞受賞)などの著作で、国際政治学の理論動向を批判的に整理するとともに、独自の概念化・理論化を行い、現代世界の分析に有効な概念枠組みを提示されました。第2の研究領域は、『日中関係1945-1990』(東京大学出版会)、『安全保障』(読売新聞社)、『アジアのなかの日本』(NTT出版)などで、中国の政策決定過程の分析、日本外交・安保政策、東アジアの国際政治の展開などを研究され、現代国際政治史研究の発展に寄与されました。第3の研究領域は、国際政治分析におけるコンピュータやインターネット利用で、中国の国際紛争行動のモデルとコンピュータ・シミュレーションは『戦争と国際システム』で公刊されています。
 田中教授は、国際会議にも数多く出席し、対外発信をされてきました。国内では、「安全保障と防衛力に関する懇談会」委員、国際的には、ASEAN+3首脳会議の諮問委員会の日本代表委員などを務められ、多くの提言をまとめられました。さらに日本国際政治学会の理事長を務め、本学の理事・副学長として、本学の国際化を推進されました。また、2012年4月に、独立行政法人国際協力機構(JICA)の理事長に就任され、日本の国際協力・対外援助のトップとしてその豊富な学識や経験を援助行政の場に還元されることが期待されています。田中先生のご受章を心からお喜び申し上げますとともに、今後ますますのご活躍を祈念いたします。
(大学院情報学環/東洋文化研究所 松田 康博)


一般ニュース

本部学生支援課
第64回東京大学・一橋大学対校競漕大会開催される

 4月28日(土)、東京大学と一橋大学の対校ボートレースである通称「東商戦」が、一橋大学の主管により戸田オリンピックボートコースにて開催された。本大会は、その由来を明治20年まで遡る伝統のボートレースであり、両校の思い入れもとりわけ強い大会となっている。
 初夏を思わせる快晴の空の下、午前から中学生・高校生の招待レース、両校OBによるレース等が行われ、両校応援部の盛大な応援合戦の後、午後からは現役クルーによるオープン戦、対校戦が行われた。
 両校応援部、学生、OB達の熱い声援を受けてレースは順調に進み、対校戦の勝敗を決める最終種目である「対校男子エイト」で会場の熱気は最高潮に達した。エイトとは8人のクルーと1人の舵手(コックス)で構成するチームで、2000mを6分強という高速で漕ぎきるボートの花形競技である。健闘及ばず、対校男子エイトは一橋大学が接戦を制し勝利した。東京大学も1人構成の「対抗男子シングルスカル」で勝利し一矢報いたが、他の種目でも一橋大学の健闘が目立った。
 終了後の懇親会では、武藤芳照理事・副学長が挨拶され、選手及び大会を支えてきたスタッフやOBへ感謝の言葉を述べられた。両校は健闘を讃え合い、東大クルーは、次回の勝利を誓った。




本部留学生・外国人研究者支援課
「東京大学外国人留学生特別奨学制度平成24年度4月期研究奨励費受給者証書授与式」を開催

 5月23日(水)16時30分より、「東京大学外国人留学生特別奨学制度平成24年度4月期研究奨励費受給者証書授与式」が、第二本部棟国際センター・日本語教育センター会議室で開催された。
 本奨学制度(東京大学フェローシップ)は、「大学院において特に優秀な私費外国人留学生に対し研究奨励費を支給することにより、本学での学術研究への取組を支援するとともに、諸外国からの優秀な留学生の受入促進に資する」ことを目的として、平成16年度から実施されているもので、月額20万円あるいは15万円が標準修業年限の最終月まで支給される。
 本年度4月期は、修士課程4名、博士課程10名の合計14名の大学院学生が受給者として決定され、受給者に羽田正副学長から受給者証書が手渡された。



 次いで、羽田副学長から、「受給者の皆さんには、日本人学生、外国人留学生という区別なく東京大学の学生として勉学・研究に励んでいただき、是非その成果を本学へ還元してもらいたい」と激励の言葉があった。引き続き、受給者を代表して人文社会系研究科修士課程テイジュウさん(中国)から、「研究を進めるにあたり、金銭的な理由で大学院への進学をあきらめかけていた私にとって東京大学フェローシップによるサポートは大きな助けとなります。受給者を代表して深く感謝いたします」と感謝の意を表するスピーチがあった。



<問い合わせ先>
国際部 留学生・外国人研究者支援課生活支援チーム
内線22515