第15回東京大学ホームカミングデイ報告

特別フォーラム オープニング

-五神真総長 挨拶-


地球規模の課題と東京大学の役割

 卒業生のみなさまを大学にお招きする「ホームカミングデイ」も今年で15回目を迎えます。昨年「東京大学ビジョン2020」を公表し、多様性を活力として卓越性を追求することを掲げ、「知のプロフェッショナルの育成」「知の協創の世界拠点の形成」を基本理念に、研究・教育・社会連携・運営のそれぞれにおけるビジョンとアクションを定めました。
 グローバル化が加速するなか、資源の枯渇、環境破壊、世界金融不安、貧困、高齢化など、地球規模の課題が顕在化しています。こうした課題に取り組み、人類社会をより良くするためには、産官学民の多様な人々が組織の壁を越えて知恵を出し合い、協力することが必要で、大学はその中心的役割を担うべきだと考えています。このビジョン実現に向け、支援者の皆様や卒業生とのネットワークの充実と連携強化に努めたいと思っております。

2017年140周年に向けて

 東京大学は、2017年に創立140周年を迎えます。去年が終戦70年、東京大学の歴史は終戦を挟んで前後70年に分けて考えることができます。これまでの約140年間にわたる国民の支援の蓄積を活用しつつ、次の70年の人類社会のあるべき姿を描き、それに向けた道筋をつけるために、今こそ実際に行動することが必要だと考えます。10年後には150周年を迎えることとなりますので、それにも備えたいと思っています。
 140周年の記念事業については、学生の学修環境や生活環境のさらなる充実に向け、図書館や国際会議に適した会場の充実、そして、学内の食環境の質の向上などにも取り組みたいと考えています。

-大塚陸毅会長 挨拶-


 本年7月の東京大学校友会役員会におきまして、張富士夫前会長の後任会長に就任致いたしました大塚です。東京大学のホームカミングデイは、今年15回目となりました。私ども東京大学校友会は、卒業生、在学生、教職員を含むグレーター東大コミュニティのまとめ役であり、従来からホームカミングデイを最重要の行事と位置付けて、積極的に取り組んで参りました。今年のホームカミングデイは、リユニオンの側面では、卒業45周年以下20周年まで、5周年刻みで合計6つの学年会が開催されます。また、この後の特別フォーラムや安田講堂音楽祭に加え、卒業生諸団体のご尽力により、様々な催し物が予定されております。
 この機会に東京大学校友会について、最近の状況をご紹介致したいと思います。東京大学校友会は、2004年10月の発足以来12年間、組織基盤と活動領域を拡大して参りました。 まず、組織的には、登録団体数は現在289団体、そのうち海外は50団体に達しております。団体会員の登録増強と併せて、東京大学校友会が注力してきましたのは、TFT=東京大学の公式オンライン・コミュニティへの個人登録です。 お陰様で、登録会員数は、9月下旬に4万人の大台に載りました。卒業生の皆様で、TFTに未登録の方は、「東大アラムナイ」のホームページからご登録下されば卒業生検索、メールマガジンの配信に加え、様々な特典が受けられます。
 一方、東京大学校友会、卒業生室の活動は、ホームカミングデイの企画・開催にとどまらず、卒業生連繋プログラム、さらには、学士会との共催による卒業生祝賀会や独身男女向けパーティに至っております。
また、在学生に対しては、多数の卒業生にご協力頂いて、国内外での体験活動プログラム、卒業生との交流会や講演会、就職面接演習を始めとするメンタリング、等を企画・実施しております。  昨年就任された五神総長は、新しい行動指針、「東京大学ビジョン2020」に基づき、東京大学の改革を進めておられます。「東京大学ビジョン2020」には、アクションとして、「卒業生・支援者ネットワークの充実」が盛込まれております。また、先ほどの総長のお話にもありました通り、来年は東京大学創立140周年ということで、様々な記念事業に対して 卒業生の関与・協力が必要になることも多いと思います。そこで、東京大学校友会と致しましても、今後、大学と卒業生の協働関係の発展や卒業生による在学生への貢献活動の拡充に、一段と努力致す所存であります。その為には、本日ご出席の皆様を始め、東京大学の卒業生の更なるご協力、ご支援が不可欠であり、何卒よろしくお願い申し上げます。

特別フォーラム 「『知』がひらく ~ 新たな価値創造への挑戦」

パネリストの発言の中から(ダイジェスト)


桝太一:

 本日は、「『知』がひらく新たな創造への挑戦」と題して社会・大学を取り巻く環境、大学がどんな形で社会に貢献していけるのか、そして産業界とどのように連携していけるのか、あるいはどんな可能性を秘めているのか、できれば東京大学はこれからどうなっていくべきなのか、皆さんと議論していきたいと思っています。私自身は学生時代、アナゴとアサリという若干イノベーションとは距離のある研究をしておりました。宜しくお願いいたします。

石川正俊:
「大学の役割に社会貢献が加えられた。大学は価値創造の拠点でなければならない。」

  • 東京大学は協力して新しいものを創る意味での「産学協創」を掲げています。大学の役割は「教育」と「研究」といわれてきましたが、法律が変わり、現在大学の使命は「教育」「研究」に「社会貢献」が加わりました。成果を広く社会に提供して、社会の発展に寄与することが必要です。
  • 大学は知識集約の拠点ではなくて価値の創造の拠点でなければならない。その価値は研究者が判断するのではなく社会が判断するものだから、大学の成果は社会に対して発信し、それに対する反応を、価値の評価をいただいて研究を進めていく必要があります。これが産学連携、産学協創の基本ということになります。
  • 研究者は今何を考えなくてはならないか。自分の成果が出たときに、その成果で社会の価値を最大にするには、どのパスを使えばいいのかということです。既存企業への技術移転がいいのか、ベンチャーを作ったほうがいいのか、その成果に強く依存しています。

島田啓一郎:
「プロデュースする人・集団が大切。専門性が揃っている総合大学はチャンス。」

  • 市場をつくる時に、よく需要を全部作り出すような、全くなかった需要をつくるようなことを言われる方がおられますが、そもそも人の欲求は、根本的なところはそんなに変わっていないのです。時代とともに新しい産業が生まれて来ます。それはその間に技術が進みインフラができたからです。技術が起きたら何が起きたかというと、制約が解放されていく、もしくは緩和されていくことが起きてそれで事業・市場・産業になっていくのです。
  • 総合大学はたくさんの学科があります。すごくチャンスだと思います。そういうのを結びつけることが重要な気がします。
  • 全部流れです。消費者・社会の視点からみたプロデュースで、ある専門性を持ちながらも、全部を見てプロデュースする人・集団があれば、変わっていけるし、暮らしも社会もよくなり、楽しくなっていくと思います。

新宅純二郎:
「課題を解く前に、課題を見つけること。課題発見能力をどう鍛えるか。」

  • 企業や組織がどうしたらイノベーションを起こしたり起こせなかったりするのか。イノベーションの起きる組織的なメカニズムとか、現象をみて背後にあるメカニズムを研究しようと取り組んできました。人材教育でいえば、社会の中で、企業の中でイノベーションを起こせるような人材を大学から輩出したいと考えています。
  • 今求められているのは、課題を解く前に、課題を見つけることです。社会的に今解けば、みんながうれしい課題って何だろうか。それをコンセプチュライズして、いろんな技術、資源、人を動員していくことだと思うのです。課題をどうやって見つけていくか。これはなかなか難しいと思います。産業的な問題でいうと、むしろ創造性というよりは課題発見能力をどう鍛えるかが重要だと思っています。

菅 裕明:
「大学はインベンションでしか貢献できない。社会でイノベーションに関われる人たちが、我々の方を向いてくれることが重要。」

  • 大学にいる限りはインベンション、発明でしか貢献できない。一番重要なのは社会でイノベーションに関わることが出来る人たちが、我々の方を向いてくださることで、そうしないとスパークが生まれません。
  • イノベーションする人は市場をつくれる人。「市場がありますか」ではなく、イノベーターは市場をつくっていかなくてはいけません。
  • 学生に課題を考えてこいというと自分が解ける課題を考えてくる。要は0から100を目指して、0になってもいい課題を考えてこいというのが重要です。やった時には0であろうが、できないということがわかった、すばらしいね、という教育をしていかないといけないのかもしれません。

谷家 衛:
「個性を突き詰めるアプローチは面白いものが生まれる。ダイバーシティも大事。」

  • ほとんどのイノベーションは異業種の組み合わせでできるというところがあって、ISAKを作る時にも与えられた問題を解く時代は終わったと思って、どの問題を解くかを考える力が遥かに重要になってきています。どの課題から解決するかデザインすること、デザインシンキングということが大事です。
  • 自分の個性を突き詰めるアプローチの方が面白いものができると思います。シリコンバレーで起業している人たちも半分気違いみたいな感じがするのです。創造性というのは自分をより見つめてどんどん追求していく方に近いという気がしています。
  • シリコンバレーがすごいのはもともといろんな国の人がいるのですが、さらにすごいのは60%の起業家はアメリカで生まれていない。アメリカで生まれていない人がアメリカでいっぱい起業する。そこにチャンスがあるからです。

パネルディスカッションを終えて


五神真総長:

 多士済々、期待通りのパネルディスカッションでした。ありがとうございます。 総長になった時「多様性を活力として卓越性を生み出す」を目指すとしましたが、これは極めて重要であるとあらためて確信しました。 卓越性は崖っぷちにある人類社会にとって、非常に重要です。世界からみれば特殊な環境である東京大学が、特殊性が優位性になる形で活用できそうとの確信がもてました。
 先日、私は未来都市会議のメンバーに選ばれました。東京大学総長として、いろいろなアイディアをきちんと組み立てて提言しなければなりません。 刺激的なディスカッションを聞かれてアイディアをお持ちになった皆さん、よいアイディアがあったら私にもお聞かせください。 皆さんと一緒に国に提言し、社会変革の駆動力を担う東大になりたいと思います。

パネルディスカッションの詳細は東大校友会ニュースNo.32(2017年3月)に掲載します。

パネリスト

石川 正俊 Masatoshi Ishikawa

東京大学大学院情報理工学系研究科長・創造情報学専攻教授

島田 啓一郎 Keiichiro Shimada

ソニー(株)執行役員、中長期技術・技術渉外担当

新宅 純二郎 Junjiro Shintaku

東京大学大学院経済学研究科教授

谷家 衛 Mamoru Taniya

あすかホールディングス株式会社取締役会長

菅 裕明 Hiroaki Suga

東京大学大学院理学系研究科教授

モデレータ

桝 太一 Taichi Masu

日本テレビ放送網(株) 編成局 アナウンス部所属

当日の様子 / 周年学年会

年次同窓会は6学年が集まり、すべての周年学年会において五神総長が挨拶。周年学年会の参加者たちは、総長の直接のメッセージを聞き、大いに盛り上がりました。

20周年学年会

25周年学年会

30周年学年会

35周年学年会

40周年学年会

45周年学年会

学部、リユニオン

①キャンパスツアー

学生たちが本郷キャンパス内を案内。コースは歴史的建造物の赤門や安田講堂をはじめ、最新施設など。参加者はあらためて知る東大キャンパスに感慨深げ。

②銀杏並木/東大蔵元会利き酒会

東大に縁のある蔵元が銀杏並木に出店。利き酒コーナーは日本酒好きの人たちで賑わっていた。

③銀杏並木/大道芸

国際派大道芸人、麻布十兵衛氏「さあ~さ 日本の大道芸の始まり」。皿回し芸や英語を交えての口上は初めて見る人も。

④銀杏並木/東大民族音楽愛好会

現役学生サークルによる、フォルクローレ音楽。

⑤銀杏並木/ブルーグラスバンド・The Hillside

軽音楽サークルOBによる軽快な演奏。

⑥銀杏並木/見て!触って!水素自動車

水素で走る未来型自動車を展示。皆さん運転席に座るなど興味津々。

⑦サッカーフェスティバル/東大LB会

御殿下グラウンドで行われた多年層に渡る交流試合。

⑧懐徳館庭園

2015年国の名勝に指定された庭園は、2年ぶりに一般公開。人気プログラムのひとつだった。

⑨台湾茶を楽しむ会/台湾校友会

おいしい台湾茶とスイーツが振る舞われた、憩いの人気スポット。

⑩安田講堂音楽祭

音楽系サークルOBOGと在学生5団体が参加。フィナーレは「大空と」「ただ一つ」の合唱は圧巻。

⑪東大落語会寄席/東大落語会

東大落語研究会OBによる落語口演。日頃の精進の成果を披露。

⑫相続・遺言セミナー/渉外本部

公認会計士、税理士等専門家による、相続に関するセミナーと相談会を開催。

⑬「トランプ旋風に見られるアメリカ政治の風景」/法学部

法学部教授が、話題の2016年大統領選挙を中心に、その背景と合意について解説。

⑭「2016年熊本自身は想定外だったのだろうか」/地震研究所

専門家の立場から、地質学の現状を紹介。

⑮「家族で体験理学のワンダーランド」/理学部

小学生たちも保護者と一緒に参加。