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史料編纂所で所蔵する重要文化財「近藤重蔵関係資料」の修補と出陳 [その他] (史料編纂所)

2017年11月10日掲載

神奈川県立金沢文庫で開催中の特別展「唐物 KARA-MONO―中世鎌倉文化を彩る海の恩恵―」(2017年11月3日~2018年1月8日)に、史料編纂所で所蔵する重要文化財「近藤重蔵関係資料」のうち「泉涌寺額字(写)」一鋪が出陳されます。
 
 この展覧会では、中世日本に伝わった宋・元代の大陸文化として、寧波沖の普陀山観音への信仰に焦点が当てられます。泉涌寺の観音菩薩像(いわゆる楊貴妃観音)は、日本にもたらされた普陀山観音の代表格で、かつてこの像は、泉涌寺法堂の二階に祀られ(『薩戒記』応永32年〔1425〕7月12日条:『大日本古記録』2巻179・180頁)、霊地を模して写す(移す)空間であったと考えられます。近年になり、ここに掛けられていた扁額の断片(裏面の銘)が発見され、本展に出陳されます。
 
 この扁額の文字「補陀海山/圓通寶閣」は、松平定信編『集古十種』扁額六に縮小して写されています(国立国会図書館蔵本)。また裏面の銘も、発見された断片より一行多く写し取られ、破損が進行する以前の状態を伝えています()。これに対して本所所蔵「近藤重蔵関係資料」の額字写は、原寸大とおぼしく、文字の輪郭を墨線で写し取っています(籠字)。扁額から直接写されたというより、すでにあった写しをさらに転写したとみられ、原寸大の写しは他にも伝わっている可能性はありますが(参考:早稲田大学図書館蔵『額字集』ー)、金沢文庫にゆかりある「近藤重蔵関係資料」への出陳依頼がありました。
 
 北方探検で知られる近藤重蔵(守重、正齋:1771~1829)が遺した資料類は、本所編纂の『大日本近世史料』に「近藤重蔵蝦夷地関係史料」として一部を刊行しています。また近藤は、幕府書物奉行となって紅葉山文庫の蔵書調査・目録編纂に携わり、その貴重本が金沢文庫旧蔵であることから、金沢文庫の歴史に関する著述『金沢文庫考』をなしました。「泉涌寺額字写」は、こうした古典籍・古器物の調査・愛好に関わるコレクションと考えられます。「近藤重蔵関係資料」は、重要文化財(歴史資料の部)として一括指定されるため(国指定文化財等データベース)、文化庁文化財部と慎重な協議を行って、その監督のもと、本所史料保存技術室にて修復を行い、このたびの展観となりました。
近年、文化財を観光資源として活用することが強く求められていますが、後世へ伝えてゆくことを前提に、その価値を学術的に正確に把握して、適切な文脈と方法で公開は実現されねばなりません。こんにち、文化財の調査研究・保存修復の重要性は、より一層高まっていることを広くご理解頂ければと存じます。
 
【開催概要】
特別展「唐物 KARA-MONO―中世鎌倉文化を彩る海の恩恵―」
会    場:神奈川県立金沢文庫(横浜市金沢区金沢町142)
会    期:2017年11月3日(金)~2018年1月8日(月・祝) ※「泉涌寺額字」の展示期間:11月14日(火)~12月10日(日)
休  館 日:月曜日(1月8日は開館)、11月24日、12月28日~1月4日休館
開館時間:9:00~16:30
入 場  料:一般600円、20歳未満・学生400円、65歳以上200円、高校生100円、中学生以下・障害者の方は無料 ※団体料金あり。
交      通:京急線「金沢文庫駅」徒歩約12分
 
【主要参考文献】
・西谷功「南宋時代における普陀山観音信仰の展開とその造形―泉涌寺伝来観音菩薩坐像を中心に―」(科学研究費補助金研究成果報告書『東アジア仏教美術における聖地表象の諸様態』、研究代表者・稲本泰生、2016年)
・西谷功「楊貴妃観音像の〈誕生〉」(西山美香編『東アジアを結ぶモノ・場』アジア遊学231、勉誠出版、2010年)
・奈良国立博物館編『聖地寧波』(2009年)
・山口靜子「近藤重蔵の史料―史料編纂所所蔵「近藤重蔵遺書」に見る―」(『東京大学史料編纂所報』18、1983年)

 

関連URL:https://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm

対象者: 社会人・一般 / 在学生 / 受験生 / 留学生 / 卒業生 / 企業



神奈川県立金沢文庫「唐物 KARA-MONO」展

泉涌寺所蔵「普陀海山円通宝閣額残闕」

史料編纂所所蔵「泉涌寺額字」
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