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公開フォーラム: International Security in Times of Uncertainty (不安定な時代における国際安全保障の模索)を開催 (政策ビジョン研究センター)

2017年02月27日掲載

実施日: 2017年02月01日

2017年2月1日、東京大学政策ビジョン研究センター安全保障研究ユニットは、ハイアットリージェンシー東京にて、“Populist Nationalism and International Order”と“ New Directions in Security Studies and Risk Management”と題した公開フォーラムを開催した。
 

第一部 “Populist Nationalism and International Order”

第一部は、これまでのリベラルな国際秩序が、Brexitとドナルド・トランプ大統領の登場に代表される「ポピュリスト・ナショナリズム」の台頭という新たな政治動向によって動揺しているとの認識から、国際社会の現状と展望に関して、ジョン・アイケンベリー教授(プリンストン大学)、朱鋒教授(南京大学)、飯田敬輔教授(東京大学)からの報告が行われた。司会は、藤原帰一教授(東京大学大学院法学政治学研究科及び政策ビジョン研究センター安全保障研究ユニット長)が務めた。

ジョン・アイケンベリー教授は、2016年のBrexitとトランプ政権の成立により、冷戦終結後25年にわたって継続したリベラル・デモクラシー(自由民主主義)への潮流が大きな曲がり角に直面したと指摘した。2008年の世界金融危機を一つの契機として、リベラル・デモクラシーの国内秩序と国際秩序双方に疑問が投げかけられるようになったからである。ロシアと中国が国内の民主化勢力を抑圧し、プーチン大統領は「反民主主義運動の教皇」のようになり、ポーランド、ハンガリー、トルコ、インドでは民主主義の枠内で強権的な支配が強まっている。ヨーロッパでは統合と自由主義の危機の最中にあり、リベラルな国際秩序の主語者であるアメリカではトランプ大統領が誕生し、リベラルな秩序を、国内でも国際社会でも転換しようとしている。
 なぜこのような変化が起こったのか。アイケンベリー教授は、経済面、政治面、国際面の三つの要因を指摘した。経済的要因とは格差の拡大である。これにより、リベラルな国際秩序の確固たる支持者だった先進民主主義諸国の中間層が衰退し、ポピュリズムが台頭することとなった。政治的要因とは、民主主主義への信頼が、明確に欧米諸国で低下しているということである。また国際的要因とは、アメリカの覇権の衰退とリベラルな秩序の構成国間の多様性の増大である。アイケンベリー教授は、こうした状況を反転するには、リベラルな対外政策が一般の人々に反映と安全を約束するとの観念を再構築する必要があると述べて、報告を締めくくった。

中国は、現在の欧米諸国におけるポピュリズムの台頭とリベラルな国際秩序の動揺をどのように見ているのか。まず朱鋒教授は、中国は清朝末期の太平天国の乱と文化大革命の経験から、ポピュリズムに懐疑的であると指摘した。中国政府は、欧米諸国におけるポピュリスト政権の誕生が中国に及ぼす影響を注視しているというのである。また朱鋒教授によれば、リベラルな国際秩序が衰退へと向かっていることは間違いないが、これは中国にとって望ましくない結果を招く。すなわち第一に、中国の国内改革は歴史的に海外からの外圧を利用して行われてきたが、これが失われる。第二に、中国がより国際社会に統合されることは、中国にとっても国際社会にとっても唯一の望ましい方向性であるが、これも困難に直面する。そして第三に、トランプ政権が対中強硬姿勢をとり、日本がこれに同調して東アジアの緊張が高まる可能性がある。朱鋒教授は、中国政府はトランプ政権を疑念と警戒の念を抱きつつ注視していると指摘して、議論を締めくくった。

飯田敬輔教授は、ポピュリズムに対する政治学の解釈と、Brexitとトランプ教授の大統領選挙勝利の要因について講演を行った。飯田教授によれば、ポピュリズムは、現在、反エリート主義を中心とするイデオロギー、あるいはレトリックとして理解されている。また、ポピュリスト勢力の支持者は、しばしば経済的弱者であると言われるが、データではむしろ一定程度の財産を保持している階層が支持に回っていることが示されている。さらに、経済状況以上に教育が低く、また年齢が高い人々がポピュリストを支持していることが明らかとなっていることを紹介した。そしてこうした要因とともに、文化もポピュリストに影響を与えており、また文化は予測が難しいと飯田教授は指摘した。

 

第二部 “New Directions in Security Studies and Risk Management”

第二部は、現在の世界が、伝統的な国家安全保障のみならず、多様に絡み合ったリスクと不確実性によって脅かせれているとの認識から、このリスクをどのように管理すべきか、ジェイ・スン・リー教授(高麗大学)、イー・クアン・ヘン教授(東京大学)からの報告が行われた。司会は、城山英明教授(東京大学大学院法学政治学研究科)が務めた。

城山教授は、現在の世界が、環境、エネルギー等、多様でかつ連関したリスクにさらされていると指摘し、これを概念的にどのように捉えることができるのか、講演を行った。伝統的安全保障と、新たなリスクの問題の違いと共通点を整理した後、城山教授は、リスクの相互連結の重要性を指摘した。すなわち、リスクには、福島原発事故のように、それまで想定されていなかったリスクが突如生起する外生的リスクと、関係する各アクターの間の相互作用からリスクが発生する内生的リスクが存在し、これが相互に連関することで危機が増幅することもあり得るのである。では、このリスクにはどのように対応すればよいのか。城山教授は、リスクの相互連結を遮断し、あるいは機能を一か所に集約するのではなく分散化を行うことで、システムの冗長性を確保することが重要だと指摘した。

リー教授は、安全保障論の関心が、伝統的な軍事問題から非伝統的安全保障の領域に拡大してきたことを指摘し、その関心も、国家や共同体の安全保障から、テロ、犯罪、環境等、個人の安全、人間の安全保障へと広がってきたと指摘した。このような非伝統的安全保障は、一国では対応することが難しいために、より国際協力が重要となる。リー教授は、伝統的安全保障の領域における対立が、非伝統的安全保障での協力関係の構築に悪影響を与えることを避けることが重要であり、そのためには強い政治的リーダーシップが必要となると述べて、講演を締めくくった。

ヘン教授は、世界各国で新しい安全保障領域への関心が高まっていることを、シンガポール、イギリス、アメリカ、ドイツ、日本等の取り組みを紹介しつつ、指摘した。この新たなリスクは、国家間の強調と対立の両面を生み出す可能性があり、この点をヘン教授は、環境問題とサイバー問題をめぐる米中関係を事例に説明した。しかし、こうした政府間関係のみならず、新しい安全保障問題は、一般の人々の日常生活とも関連するものだと、ヘン教授は指摘する。例えばサイバー問題に関しては、最新型のアンチウイルスソフトの導入といった技術的側面のみならず、それに関わる職員という人の行動、つまり人間の行動科学の側面が重要になるということである。政府がこうした一般の人々の行動に対する啓発活動をすすめることも、新しい安全保障に対する対応として重要だと述べ得て、ヘン教授は講演を締めくくった。

photos: Izawa Hiroyuki

 

公開フォーラム International Security in Times of Uncertainty (不安定な時代における国際安全保障の模索) 動画 (2:28:46)

関連URL:http://pari.u-tokyo.ac.jp/unit/ssu/events/2017-02-01/index.html



 
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