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世界の卒業生紹介6/日本の登山を観光業と融合させる山田淳さん|広報誌「淡青」34号より

掲載日:2017年4月20日

実施日: 2017年03月07日

文系から理系、ビジネスから学究、芸術から政策と縦横無尽に地球規模で活躍する東大卒業生14名の姿から、世界と共にある東大を浮き彫りにします。
 

日本の登山を観光業と融合させるセブンサミッター
山田 淳さん Atsushi Yamada
(http://www.field-mt.com)
株式会社フィールド&マウンテン代表取締役
2006年経済学部卒業(2002年度総長賞)


 学生時代、山田さんは世界七大陸の最高峰に登頂し、当時の世界最年少記録を更新しました。喘息持ちの少年が山を目指したきっかけは、人と競わない運動がしたかったことと、冒険家・植村直己さんの著書『青春を山に賭けて』を読んだこと。英語は苦手でしたが、より高い山を目指してやまない山男が、授業そっちのけで働いた登山ガイドの稼ぎを使って海外に出るのは、必然でした。

 「サガルマタは「大空の頭」、デナリは「偉大なもの」など、現地での呼称とその意味を知るにつけ、高山が敬われているのを感じました。山の魅力は言わずもがなですが、観光で現地の人や文化に触れるのも楽しかったですね」
 

東大時代の山田さん

世界で初めてサガルマタ頂上でノートPCを起動。


 中退して登山ガイドになる道も考えましたが、より多くの人に山の魅力を伝えるには大きな仕組みが必要だと気づき、様々な産業を見ようと外資系コンサルタント企業に就職。仕事は楽しくて「アドレナリンが出まくり」でしたが、3年後に転機が訪れます。北海道トムラウシ山で8人が犠牲になる遭難事故でした。

 「衝撃でした。こういう事故を防ぐためにこそ自分がいるはずなのに、との思いが湧き上がりました。何も考えず、翌日には退社の決意を上司に伝えました」

 何をすべきかを模索する日々のなか、ヒントになったのは「レジャー白書」。経済的理由から登山に踏み出せない人の多さを証明する調査結果にピンときた山男は、海外にあって日本にはなかった登山客用の用具レンタル業を始めました。アウトドアベンチャー企業の誕生です。ミッションは登山人口の増加と安全登山の推進。そのために必要となる道具と情報ときっかけを、現在は用具レンタル、フリーペーパー、ガイドツアーの3本柱で提供しています。

 「日本は山を観光資源としてもっと生かすべき。生産業では海外に進出する必要がありますが、観光はそうせずに世界と戦える数少ない産業だと思います」

 世界の山を体感したからこそ日本の山の魅力がわかり、コンサルタントとして様々な産業を見たからこそ観光業の強みが俯瞰できている山田さん。ただの山男じゃありません。
 

おまけQ&A
いままでにガイドで富士山に登った回数は?
「300回ほど。うちのウェアを着た人を見るとニヤッとなります」
世界の山と比べて日本の山の魅力は?
「四季があり、いつ登っても違う表情が楽しめること」
東大のキャンパスで好きな場所は?
「御殿下体育館。ボルダリングウォールでよく練習しました」
東大のいいところは?
「群れないところ。個が強く、あまり組織に縛られないところ」


※本記事は広報誌「淡青」34号の記事から抜粋して掲載しています。PDF版は淡青ページをご覧ください。

 


ウェアや靴やストックなどの登山用具が並ぶ、やまどうぐレンタル屋新宿店にて。
写真:井上 匠
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