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精子と卵子が出会うしくみとは?/吉田学の発生生物学@神奈川県 | 広報誌「淡青」35号より (広報室)

2017年10月19日掲載

実施日: 2017年09月08日

発生生物学 @ 神奈川県
 
三崎のホヤから普遍的な生命現象を考える
精子と卵子が出会うしくみとは?

多様な海産生物に恵まれた三崎の海に臨む実験所では、個々の生物の理解から普遍的生命現象に迫る研究が行われています。ここでは、モデル生物として重宝されるホヤを通じ、種の特異性が生じるしくみを解明しつつある吉田先生が、海から生命を学ぶ日々を語ります。
 

吉田 学/千葉出身
Manabu Yoshida
理学系研究科附属臨海実験所
准教授


 

 

かつて実験所本館として使われた日本海洋生物学百周年記念館と、臨海丸。

臨海実験所と聞いて、皆さんはどのような研究を行っていると想像するでしょうか? 魚の繁殖技術? 海の動物の生態調査? もちろんこのような研究も臨海実験所の研究対象ではありますが、メインの研究ではありません。ではどんな研究をする場所なのでしょうか? それを知るため、まずは歴史を見てみましょう。理学系研究科附属臨海実験所(通称:三崎臨海実験所)は東大が出来て僅か10年後の明治19年、動物の多様性では量・種数とも世界に誇る相模湾に面した三浦三崎の地に設立されました。当時は生物学が分類学だった時代、多種多様な海産生物を観察することで生物の分類体系、ひいては動物進化の過程の理解が進んできました。その後、三崎で行われる研究の中心は分類学から発生学、生理学、分子生物学と移ろいましたが、一貫して、多種多様な海産生物の個々の理解を元に、動物全体の進化や多様性の理解を研究目的としています。つまり、海の生物はあくまでも材料・手段であり、目的は普遍的な生命現象の理解なのです。
 

海産無脊椎動物のカタユウレイボヤ(Cionaintestinalis)。
ところで、多くの動物では受精時に精子が卵へ誘引される現象(精子走化性)が知られています。特に海産無脊椎動物では精子走化性に種特異性があり、同じ種の精子と卵が出会う確率を上げる仕組みとして働いています。私たちはホヤという動物を用いて、この精子走化性の研究をしております。そして、近縁種における精子走化性の分子メカニズムを比較することで、種の特異性が生じるしくみを明らかにしつつあります。将来的には進化過程における種分化のしくみを明らかにできたらと考えています。ところで、ホヤは無脊椎動物でも脊索動物に属し、脊椎動物の進化を考える上で重要な位置を占めています。また、幼生の細胞数が少ない、発生が速い、といった特長があることから、最近はウニに換わって発生研究の材料としてよく用いられるようになっています。中でもカタユウレイボヤはゲノムサイズも極めて小さい(ヒトの約1/20)ことから、海産無脊椎動物でいち早く2002年に全ゲノムが解読され、海産動物におけるモデル生物の地位を築きつつあります。臨海実験所は海産動物の実験材料供給も大きな業務であり、筑波大学および京都大学と共に文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクトの支援を受け、大規模にカタユウレイボヤの養殖を行って日本全国の研究者に供給しております。
カタユウレイボヤの精子が走化性運動をしている際の鞭毛内カルシウムの挙動。

臨海実験所は海の生物を研究する上で重要な拠点となっていることから、実験材料の供給だけでなく、共同利用施設として多くの外来研究者の受入れを行っております。さらに、多様な海産生物を観察することは生きた系統分類学の教育となることから、教育拠点として多くの大学・高校の実習を受け入れており、研究利用・教育利用あわせて年間のべ2万人超の外来利用があります。また、三浦市とも連携し、アウトリーチ活動として一般の方を対象とした自然観察会や、小学生を対象とした真珠養殖プロジェクトなども行っております。

海から生命を学ぶ。それをモットーとして、臨海実験所は多種多様な海産動物の研究・教育の場を提供していきます。
※本記事は広報誌「淡青」35号の記事から抜粋して掲載しています。PDF版は淡青ページをご覧ください。



 
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