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キャンパス散歩/移転の歴史の記憶が重畳する駒場リサーチキャンパス|広報誌「淡青」35号より (広報室)

2018年01月30日掲載

実施日: 2017年09月08日

キャンパス散歩


移転が繰り返された歴史の記憶が重畳する駒場リサーチキャンパス
 
野城智也野城智也
生産技術研究所教授
http://yashirolab.iis.u-tokyo.ac.jp
  

駒場リサーチキャンパス(駒場IIキャンパス)は、井の頭線駒場東大前駅と池の上駅、小田急線東北沢駅と代々木上原駅とを結んだ四角形のなかに位置し、敷地の南端は井の頭線に接しています。この地には、かつては駒場農学校にはじまる東京帝国大学農学部の農場がありました。関東大震災後に合意された農学部と第一高等学校との敷地交換による移転と並行して、本郷にあった前田侯爵家との敷地交換や、越中島にあって被災した東京帝国大学航空研究所の移転も進められました。結果として、駒場の農学部の旧敷地には、東から、第一高等学校、前田侯爵家、航空研究所が配置されることになりました。駒場リサーチキャンパスは、1930年に移転を完了した航空研究所のキャンパスを継承しています。

このキャンパスの北側に設けられた正門付近には、航空研究所移転当時の雰囲気が残っています。正門から見てまず目に飛び込んでくるのは、大きなヒマラヤ杉とその背後にある時計塔をもった建物です。これは航空研究所旧本館(現13号館)で、国の登録有形文化財に指定されています(写真1)。13号館の両隣には風洞実験棟(現1号館、写真2)、実験棟(現17号館、写真3)があります。

  
13号館
(写真1)13号館(航空研究所旧本館)
1号館
(写真2)1号館(木製の風洞はいまも現役!)
17号館
(写真3)17号館(現・生産技術研究所試作工場)
 

1920年代、東京帝国大学のキャンパス全体の設計を主導していたのは、営繕課長を兼務していた内田祥三教授でした。ただ、航空研究所のキャンパスについては、安田講堂を共同設計していた岸田日出刀(後に本学教授)に任せていたといわれています。その結果、13号館、1号館、17号館は、安田講堂以上に岸田色の濃い、ドイツ表現派の影響を受けた建築となっています(岸田は1925年に1年間渡欧)。例えば、13号館の時計塔は上すぼまりで左右対称ではありません(写真4)。また、17号館北東の角の横一面のガラス窓も近代建築的で内田ゴシックには見られない特徴です。

1号館の前には、飛翔とスピードを体現したような独特の造型の銅像があります(写真5)。これは、航空研究所の駒場移転に尽力した、斯波忠三郎航空研究所所長の事績を顕彰し1935年に建立されたものです。「淡青」第六号(2002 Vol.6)の藤森照信教授の記事によれば、斯波所長は加賀藩家老家のご出身とのこと、前田公爵邸(現・区立駒場公園)とこのキャンパスが隣接しているのは偶然ではないのかもしれません。

駒場リサーチキャンパスは移転と縁が切れないようです。航空研究所の後継組織である宇宙航空研究所は、文部省の直轄研究所である国立大学共同利用機関宇宙科学研究所となり、1981年に淵野辺(神奈川県)へ移転していきます。その後、この地には1987年に先端科学技術研究センターが設立されるとともに、1999年から2001年にかけて六本木にあった生産技術研究所が移転してきました。

これらの移転に伴って、キャンパスの南側の大半の建物は、原広司教授のマスタープランに基づいて新築建物群で構成されることになりました。そのマスタープランでは、13号館をキーストンに見立て、生産技術研究所と先端科学技術研究センターの新築建物群が、長方形のユニバーシティ広場を取り囲む構成をとっています(写真6)。

 
時計棟
(写真4)13号館時計棟のディテール
斯波注三郎碑
(写真5)斯波忠三郎航空研究所所長・顕彰碑
航空写真
(写真6)駒場リサーチキャンパス航空写真
 

これらの建物群は広場周縁が連続するように計画されたピロティでほぼ繋がっており(写真7)、北東端から反時計回りに回遊すると、3号館、3号館南棟、4号館、総合研究実験棟(An棟)、生産技術研究所B~F棟を巡ることができます。この長方形の回遊路の南側の一辺に位置するAn棟には、レストランが入居し、昼食時や、キャンパス内での催しのあとの懇親会などで賑わっています(写真8)。ユニバーシティ広場(写真9)で昼休みにはミニサッカーをする姿がみられるなど、広場とその周辺の樹木群は、日々・季節の移ろいのなかで様々な表情を見せ、心をなごませてくれます。

ピロティ空間
(写真7)建物群を繋ぐピロティ空間
レストラン
(写真8).キャンパス内・イタリアンレストラン「アーペ」
レストラン
(写真9)ユニバーシティ広場
 

特に、春の桜が咲き誇る時期(写真10)や、秋の銀杏の葉で彩られる頃(写真11)は圧巻です。また、日没薄暮の瞬間に、思いもよらぬ色調の空を背景に、キャンパス全体が不思議な表情を見せることもあります(写真12)。

 
桜
(写真10)桜の花見の頃のユニバーシティ広場
銀杏
(写真11)銀杏に彩られたユニバーシティ広場
夕焼け
(写真12)夕暮れを背景とした薄暮のキャンパス
 

こうした大きな空間の骨格のなかで、特徴ある場所も息づいています。キャンパス西側に位置する東大駒場むくのき保育園は、ムクノキの巨木を取り囲んで計画された事業所内保育所です(写真13)。旧風洞施設を改築したS棟(今井公太郎教授設計)は、キャンパス南端に位置し、デザイナーとエンジニアが協働する国際センターとして活用されています(写真14)。また、キャンパス東南端を占めるインターナショナルロッジ・駒場ロッジ別館は、海外から来訪する学生・研究者の貴重な宿泊施設としてほぼ満室状態で利用されています(写真15)。

 
保育園
(写真13)東大駒場むくのき保育園
S棟
(写真14)S棟(旧・宇宙航空研究所60号館を増改築)
寮
(写真15)インターナショナルロッジ・駒場ロッジ別館
  
※本記事は広報誌「淡青」35号の記事から抜粋して掲載しています。PDF版は淡青ページをご覧ください。



13号館
 
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