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第4回国際広報勉強会がWEPOCと30m望遠鏡をテーマに開催されました

掲載日:2016年6月2日

実施日: 2016年05月30日

「WEPOCって何?」、「なぜWEPOCが重要なの?」、「WEPOCと30m望遠鏡(Thirty Meter Telescope: TMT)ってどんな関係なの?」こうした質問の答えが、2016年5月30日に開催された第4回国際広報勉強会で明らかにされました。学内の広報関係者十数名が参加したこの勉強会の講師を務めたのは、カリフォルニア工科大学のアウトリーチ教育ディレクターおよびTMTプロジェクト広報責任者(WEPOC責任者)のゴードン・スクワィヤーズ博士でした。広報コンサルタントで2007年からTMTプロジェクトを担当している、ジャネス・ブルーワーさんも同席しました。

TMTはハワイのマウナ・ケア山に建設が計画されている天体望遠鏡です。2020年代後半に完成予定で、完成すると地上にある世界最先端の光学赤外線望遠鏡になります。この光学赤外線望遠鏡の建設は、米国、日本、中国、インド、カナダ政府が取り組んでいる国際的なプロジェクトです。このプロジェクトの広報責任者であるスクワィヤーズ博士は、プロジェクトで採用しているWEPOCという多面的な取り組みについて説明しました。WEPOCとはWorkforce development(人材開発)、 Education (教育)、Public Outreach (パブリック・アウトリーチ)、 Communications(コミュニケーション)の略で、TMTプロジェクトの重要な柱となっています。

TMTプロジェクトに関わる以前、スクワィヤーズ博士と彼の広報チームは、カリフォルニア工科大学でアメリカ航空宇宙局(NASA)のグレートオブザバトリー衛星シリーズの1つスピッツァー宇宙望遠鏡の広報活動を担当していました。スピッツァー宇宙望遠鏡の広報活動は成功したものの、予算が徐々に減らされ、広報戦略が突然変更されることもしばしば経験したため、博士らは戦略を変更してカリフォルニア工科大学で行われているより小規模な天文学プロジェクトの広報活動も請け負うようになりました。教育やアウトリーチのイベントを企画したり、科学データをビジュアル化したり、プロモーションビデオや刊行物を作製したり、その他にも報道対応やウェブサイト作製などの広報活動をこうした小規模プロジェクトのために行っていました。

スクワィヤーズ博士らは、こうした小規模プロジェクトの広報活動を続けていくうちに、TMTの広報活動にも関わるようになりました。例えば、TMTの建設に関して地元から環境や文化への影響を心配する声が上がっていますが、こうした懸念に対応するためにWEPOCを実践しています。スクワィヤーズ博士は、WEPOCのすべての要素がTMTプロジェクトにとって根本的に不可欠であり、TMTにWEPOCチームがなければプロジェクトは今日まで存続しなかっただろうと語っていました。博士は参加者に、「TMTプロジェクトに関わってきた経験から言えるのは、大型の国際的な科学プロジェクトにとって広報活動は研究活動それ自体と同様に重要であり、広報活動を研究活動と対等に扱うことが必要だということです」と述べていました。

講演の後で質疑応答が行われ、参加者たちはスクワィヤーズ博士に、なぜWEPOCに人材開発が含まれているのか、TMTのWEPOCチームとハワイの地元の人たちとはどのような対話を行っているのか、危機管理のためのコミュニケーションはどのように行えばよいのか、自分の組織にWEPOCの重要性を認識してもらうにはどうしたらよいのか、研究者としての活動とWEPOCのような広報活動をどのように両立させるのか、米国の重力波望遠鏡LIGO(ライゴ)における重力波の発見の公表にあたりどのような貢献したのか、冥王星を惑星でなく準惑星に分類する決定をした国際天文学連盟総会でどのような投票をしたのか、などさまざまな質問をしていました。

参加者たちは今回の勉強会で大いに刺激を受けたようで、勉強会が終わった後もスクワィヤーズ博士やブルーワーさんに過去の体験を聞いたり、自分の職場でWEPOCを最大限に活用するにはどうしたらよいか意見を交換したりしていました。

*国際広報勉強会は2016年度より広報戦略本部と国際本部が共同で開催しているイベントです。

関連リンク:30m望遠鏡(TMT)



WEPOCについて語るスクワィヤーズ博士。写真左がブルーワーさん。

スクワィヤーズ博士の話を熱心に聴きながらメモを取る参加者たち。

ペットボトルを冥王星とその衛星カロンに例えて説明するスクワィヤーズ博士。
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