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海洋研究の海に飛び込む ―第8回UTokyo Research, on site―

掲載日:2017年3月16日

実施日: 2017年03月09日

2017年3月9日(木)、柏キャンパス内の新領域創成科学研究科と大気海洋研究所において第8回目となるUTokyo Research, on site*が行われました。東京大学で行われている海洋研究をハイライトするこのイベントに、8名のジャーナリストと2名の広報担当者、5名の駐日大使館科学技術アタッシェを含む計15名が参加しました。まず広報室長の鈴木真二教授から開会の挨拶が行われた後、大気海洋研究所の羽角博康教授と新領域創成科学研究科の佐藤弘泰准教授からそれぞれの所属機関で行われている研究を紹介する発表がありました。その後のコーヒーブレイクでは教授たちや参加者同士で懇親が行われ、それに引き続いて参加者は3つの研究室を回る研究室見学ツアーに参加しました。
 

参加者からの質問に答える佐藤弘泰准教授(左)と羽角教授(右)

新領域創成科学研究科の木村伸吾教授の研究室ではニホンウナギの移動がテーマでした。アメリカウナギやヨーロッパウナギの産卵場所は1920年代初頭から明らかになっていましたが、ニホンウナギの産卵場所は1991年に木村教授を含む東京大学の研究チームが発見するまで知られていませんでした。産卵場所を明らかにした研究や最近行ったウナギ研究について話をした後、木村教授は大気海洋研究所の大飼育室に参加者を連れて行き、生きているニホンウナギを見せ、また触ってもらっていました。

大気海洋研究所の佐藤克文教授は研究室の2人のメンバーと共にバイオロギング研究について紹介しました。バイオロギングとは、小型のカメラや録画機器を動物の体にくっつけて、その動物の動き方や生理的な状態、行動、生息環境に関するデータを記録する研究手法です。研究室見学ツアーでは、研究室が行った海洋生物モニタリングの研究、特にクジラとウミガメに関する研究を紹介しました。長い棒を使ってマッコウクジラに記録機器を装着する様子を実演したり、またウミガメに装着した機器で撮影され、その食性に関して貴重な情報を提供したビデオ映像を見せたりしました。
 

参加者にシングルステージ加速器質量分析計の説明をする横山教授(中央)


大気海洋研究所の横山祐典教授の研究室では、海洋の物質の放射性炭素元素解析に関する研究が紹介されました。大気海洋研究所の高解像度環境解析研究センターに導入されたシングルステージ加速器質量分析計を用いると、珊瑚などの物質に生物が残した「痕跡」を解読することができます。この「痕跡」を解析することで、過去に生態学的ないし気候学的に大きなイベントが起こった時期をかなりの精度で特定することが可能です。例えば、横山教授らは珊瑚の試料を解析することで、以前は知られていなかった過去の津波の存在をいくつか発見しました。横山教授は試料解析の仕組みを制御室と試料の準備室で説明した後、参加者を連れて日本で唯一の質量分析計に案内しました。

今回のイベントは参加者にとって、東京大学の三大拠点の一つであり最先端の研究の中枢でもある柏キャンパスを訪れるまたとない機会になりました。東京大学の研究室のいくつかを見られる機会であっただけでなく、参加者と研究者の間の有意義な議論の場となり、共同研究や科学コミュニケーションを促進する効果もあったでしょう。


*UTokyo Research, on siteとは東京大学広報戦略本部が企画するイベントで、駐日海外メディアや大使館の科学技術アタッシェ等を対象に、本学の研究を英語で紹介するものです。

 



コーヒーブレイクに親しげに会話を楽しむ参加者と教授たち

生きたニホンウナギを手に取ろうとする木村教授

バイオロギングの装置をクジラに装着する様子を実演する佐藤克文教授の研究室のメンバー
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