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Editor’s Choice

暗黒物質

宇宙の二大ミステリー

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カブリ数物連携宇宙研究機構
2014/04/28

暗黒物質は、宇宙全体に偏在する目に見えない正体不明の物質です。目には見えませんが、その存在は、1930年代の銀河団の運動を始め多くの間接的な証拠から示唆されてきました。では暗黒物質は「何物なのか」というと、残念ながら全くわかっていません。わかっているのは「何物でないのか」ということです。これまでの観測データから、暗黒物質は原子でできている物質ではなく、私たちが知っているどんな天体でも素粒子でもない、という結論が得られています。残されている可能性として、未発見の重い素粒子なのではないかというのが、主流の考えです。

【動画】1億2千万体の粒子を用いた数値シミュレーション。© Naoki Yoshida
暗黒物質同士が重力で引き合って集まることにより物質の分布に濃淡ができ、均一な宇宙に構造が形成される。通常の物質だけでは互いに集まりあうことができず、宇宙はいつまでものっぺらぼうのままで星や銀河が誕生しない。

そんな何だかわからない暗黒物質が、宇宙の中では非常に重要な存在であることがわかってきました。約10年前の2003年にマイクロ波宇宙背景放射の解析から、暗黒物質が宇宙の物質の約8割を占めるという結果が出ました。私たちがよく知っている原子は宇宙の中ではかなりマイナーな存在で、宇宙の物質のほとんどは正体不明の暗黒物質だったのです。さらに、星や銀河が形作られるためには、暗黒物質の重力が必要であったことがわかっています【動画】。暗黒物質がなければ銀河も星も私たちも生まれていなかったのです。それでカブリ数物連携宇宙研究機構(IPMU)の村山斉機構長はよく暗黒物質のことを「生き別れの生みの親」と表現しています。

暗黒物質の正体をなんとかして突き止めようということで、現在、さまざまな方法で実験が行われています。一つは、暗黒物質を自分たちで作り出してしまおうというものです。人類史上最高のエネルギーを生み出すLHC(Large Hadron Collider)では、これまで見つけられなかった重い素粒子を作り出せる可能性があります。一方、宇宙の暗黒物質を捕まえてみようというアプローチもあります。岐阜県の神岡鉱山の地下1000 mに建設されたXMASSは、暗黒物質直接探索を目的とした検出器では世界最大です。LHCで暗黒物質の候補になるような未知の素粒子が発見されたとき、同じくらいの質量の素粒子がXMASSで捉えられれば、確かに暗黒物質を捕まえたと言えるわけです。両方の実験を照らし合わせることで、暗黒物質の性質を詳しく調べることができるはずです。

暗黒物質があるとしたら起こるであろう現象を対象とした間接的な探索も行われています。実は最近、少し注目されたニュースがありました。国際宇宙ステーションに搭載されたAMS(Alpha Magnetic Spectrometer)という宇宙線の検出器で高エネルギーの陽電子が検出されたということです。まだ確証はありませんが、この陽電子が暗黒物質同士の反応によって作られたものである可能性があり、非常に期待を持たせるデータです。また、ハワイにあるすばる望遠鏡では、銀河団の形や星の運動が受けている暗黒物質の重力の影響を丹念に調べ、宇宙のどこにどれだけの暗黒物質があるのかという地図を作るという研究が行われています。これには東京大学カブリIPMUと国立天文台が共同で開発したHSC(Hyper Suprime-Cam)という大きなデジカメが使われており一度に非常に広い範囲の天域を見ることができます。さらに現在開発中のPFS(PrimeFocusSpectrograph)という分光器も搭載されると星の距離情報も得られるようになり、暗黒物質がどのように宇宙の骨組みを作っていったのかという宇宙の進化の様子を詳細に追うことができます。観測から得られる暗黒物質の正確な分布データは、そのものが暗黒物質の正体のヒントになるだけでなく、先ほど触れたXMASSやAMSでも観測データにもとづいたより正確な解析ができるようになるはずです。

方法 暗黒物質を作る 暗黒物質を捕まえる 暗黒物質の対消滅で放出される反物質を検出する 天体観測で暗黒物質の分布を調べる
実験施設(場所) LHC(スイスジュネーヴ;CERN) XMASS(日本岐阜県)、XENON(イタリアグランサッソ)他 AMS(国際宇宙ステーション) すばる望遠鏡HSC・PFS(ハワイ)

「これまで『わからない』ということが積み重なってきた暗黒物質研究ですが、そろそろ何かわかりそうだという雰囲気が濃くなってきました。近いうちに生き別れの生みの親の『しっぽ』を捕まえることができるのではないかと、とても楽しみにしています」と村山機構長は話します。

取材・文:南崎梓

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