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男と女はどれくらい違う? たった1つのDNA塩基で性別が決まるトラフグの事例

掲載日:2012年11月7日

遺伝情報のうち、性別の決定に関わる情報を持つ性染色体にはX型とY型の二種類があり、「XY」のペアで男性、「XX」で女性になります。ヒトのX染色体とY染色体は大きく異なります。Y染色体の長さはX染色体の3分の1しかなく、生殖器の発生に関わる性決定遺伝子はY染色体の方にしかありません。

野生のフグ © Naoki Mizuno

このような、X染色体とY染色体のDNA配列の差はマウスでも確認されています。ヒトの場合は極端な例ですが、全ての脊椎動物で、両染色体の間にある程度の違いがあるだろうというのが、従来の常識でした。

ところが今回、東京大学大学院農学生命科学研究科附属水産実験所の菊池潔助教らは、トラフグの性染色体には1つのDNA塩基(一塩基多型)の差しかないことを発見しました。トラフグの性染色体の配列はXとYでほとんど等しく、性決定遺伝子「抗ミュラー管ホルモンII型受容体(Amhr2)」も両染色体に存在します。ただし、Amhr2のX型とY型の間にはたった一塩基分だけ違いがあり、この差だけで、トラフグの性別が決まっていたのです。

近年、ゲノム解析による研究が進み、ヒトやマウスのような性決定システムが全ての脊椎動物には当てはまらない可能性が指摘されていました。本成果は、たった1塩基の差のみで性別が決まる非常にシンプルな事例を実際に見つけたという点で重要です。トラフグは決して特殊な事例ではないかもしれません。

また今回の発見は、トラフグの性別の簡便な判別法の開発につながり、基礎研究上の重要性に加えて、食材としての白子の安定供給や野生フグの保護という水産業への貢献も期待されます。

(東京大学本部広報室 南崎梓,ユアン・マッカイ)

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論文情報

Takashi Kamiya, Wataru Kai, Satoshi Tasumi, Ayumi Oka, Takayoshi Matsunaga, Naoki Mizuno, Masashi Fujita, Hiroaki Suetake, Shigenori Suzuki, Sho Hosoya, Sumanty Tohari, Sydney Brenner, Toshiaki Miyadai, Byrappa Venkatesh, Yuzuru Suzuki, Kiyoshi Kikuchi,

“A Trans-Species Missense SNP in Amhr2 Is Associated with Sex Determination in the Tiger Pufferfish, Takifugu rubripes (Fugu),”

PLoS Genetics 8 2012: e1002798, doi:10.1371/journal.pgen.100279

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