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栽培化の過程で捨てられてしまった植物の実力

植物免疫メカニズム「レクチン抵抗性」の存在が明らかに

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農学生命科学研究科・農学部
2012/05/01

病原体から身を守るため、植物は独自の免疫システムを高度に進化させてきました。例えば、あるウイルスが植物細胞内に侵入すると、そのウイルスを認識する「抵抗性遺伝子」が、細胞・細胞組織・個体レベルで、抵抗物質の分泌や細胞死などの多様な対抗手段を発動させます。

緑色蛍光タンパク質を導入した光るウイルスをシロイナズナに接種した。JAX1を持たない植物(下)は,ウイルスが全身に感染したが,JAX1遺伝子を発現している植物(上)はウイルスが全く感染しなかった。
Yasuyuki Yamaji et al., "Lectin-Mediated Resistance Impairs Plant Virus Infection at the Cellular Level" The Plant Cell, February 2012 vol. 24 no. 2 778-793. Copyright American Society of Plant Biologists.

一方、ヒトや動物では「レクチン」というタンパク質が、エイズウイルスを含む複数のウイルスへの抵抗性を示すことが知られています。植物においても、細胞内でレクチンタンパク質が多量に蓄積されていることは分かっていましたが、免疫におけるレクチンの働きは分かっていませんでした。

東京大学大学院農学生命科学研究科の山次助教と難波教授らは、レクチンが植物においてもウイルス抵抗性を示すことを初めて明らかにしました。さらに、その抵抗反応が既知の植物免疫システムとは異なる新しいシステムであることを突き止め「レクチン抵抗性」と名付けました。

研究グループが発見した「JAX1」というレクチン遺伝子は、たったひとつの遺伝子で重要な農作物に被害をもたらす複数のウイルスに広域的に抵抗する、強力な抵抗性遺伝子だと分かりました。さらに、既知の免疫システムを妨害するような処置を施しても、JAX1は影響を受けずウイルス増殖を阻害しました。つまり、JAX1はこれまで知られていなかった未知の免疫システムとして機能していたのです。

JAX1は、シロイヌナズナの野生系統の中から発見されました。しかし興味深いことに、シロイヌナズナでも昔から実験用に選抜を続けてきた系統ではこの遺伝子は消えていました。研究グループの難波教授は「私たち人類は作物の栽培化の過程でひたすら品質に着目する余り、この強力な広域抵抗性遺伝子を捨て去ってきたのかも知れません。」と述べています。

植物レクチンは非常に多くの種類からなるレクチンファミリーを構成していることから、他のレクチン遺伝子のなかに病原体抵抗性を持ったものが存在する可能性もあります。今回の発見は、農作物の病原体被害を食い止める画期的な技術開発につながるだけでなく、植物の生態を解明する基礎科学にとっても非常に大きな一歩です。

(広報室 南崎 梓, ユアン・マッカイ)

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論文情報

Yasuyuki Yamaji, Kensaku Maejima, Ken Komatsu, Takuya Shiraishi, Yukari Okano, Misako Himeno, Kyoko Sugawara, Yutaro Neriya, Nami Minato, Chihiro Miura, Masayoshi Hashimoto and Shigetou Namba,
“Lectin-Mediated Resistance Impairs Plant Virus Infection at the Cellular Level,”
The Plant Cell, February 2012 tpc.111.093658, doi:10.1105/tpc.111.093658
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生産・環境生物学専攻

植物病理学研究室

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