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未発見の素粒子がトポロジカル絶縁体で活躍 アクシオン研究にヒントを得た、新しい相転移の予言

掲載日:2012年7月11日

素粒子理論には「強いCP問題」というパラドクスがあります。この問題を解決する理論はすでに提唱されており、その理論によれば、アクシオンという素粒子が存在するはずです。さらに近年、アクシオンは、正体不明の暗黒物質の候補としても注目されています。

外部から磁場を加えていないので、アクシオン場が相転移を起こす前は磁場が存在しないが、アクシオン場の相転移が起きると磁場が生成される。磁場の向きは、上向きか下向きのどちらかが選ばれる。

しかし、未だその存在は確認されていません。アクシオンの直接検出は困難であるため、アクシオンによって引き起こされる現象を検出しようと、現在、様々な探索実験が行われています。

一方、物性物理学の分野で近年注目されている「トポロジカル絶縁体」という物質の理論でも、アクシオンに対応する粒子が現れることが指摘されました。両分野は、対象とするものの大きさやエネルギーが全く異なりますが「場の量子論」という共通の理論を使っています。

今回、カブリ数物連携宇宙研究機構の大栗博司主任研究員と物性研究所の押川正毅教授は、素粒子物理学で発展した理論研究をもとに、物性物理学の分野でアクシオン研究における新しい発見をしました。

彼らは、強電場の下ではアクシオン場が相転移を起こして磁場を生成し、電場が遮蔽されることを理論的に導きました。これは今まで知られていなかった現象です。さらに、この現象はトポロジカル絶縁体や他の絶縁体の物性として、実験で確認できる可能性があります。

それぞれの分野の蓄積が新しい発見につながった今回の研究成果は、カブリ数物連携宇宙研究機構と物性研究所という、柏キャンパスで隣接する二つの研究所の交流によって実現したものです。今後も、キャンパス内の交流から、一つの分野だけではたどり着けないような大きな成果が生まれるかもしれません。

プレスリリース本文へのリンク

論文情報

Hirosi Ooguri, Masaki Oshikawa,
“Instability in magnetic materials with dynamical axion field”,
Physical Review Letters April 20, 2012 Online. arXiv:1112.1414v2 [cond-mat.mes-hall]
論文へのリンク

リンク

国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構

物性研究所

参考

“対談・素粒子論と物性論の出会い:アクシオンとトポロジカル絶縁体がもたらす夢…大栗博司・押川正毅” 「科学」2012年7月号 岩波書店

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