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Editor’s Choice

第3回 UTokyo Research, on site

脳に迫る東京大学の研究者たち

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2014/03/06

脳は私たちの体の中で最も複雑な組織であり、科学や社会などの複雑なシステムを可能にするものです。しかし、脳は未だに多くの謎に包まれています。東京大学の神経科学者は、トップダウンとボトムアップの両アプローチにから脳の謎に迫っています。私たちの行動や精神状態を司る脳のしくみや脳の機能不全の原因、神経細胞を構成するタンパク質の機能などを理解しようとしています。

2014年1月30日(木)、第三回目の「UTokyo Research, on site」研究室ツアーが大学院医学系研究科と医学部付属病院を中心に開催されました。今回は “Top Down, Bottom up: Neuroscience at the University of Tokyo” (トップダウン、ボトムアップのアプローチで脳に迫る:東京大学の神経科学研究)というテーマのもと、研究の現場に15名(メディア関係者:12名、大使館関係者:3名)の参加者を迎えました。

イベントでは、まず医学系研究科 神経細胞生物学分野の岡部繁男教授から本学の脳科学研究についての概略説明とそれに続いて、同研究科細胞生物学・解剖学分野の廣川信隆特任教授から細胞内輸送に関わるモータータンパク質の研究について紹介(ブリーフィング)がありました。その後、参加者は三つのグループに分かれて、廣川特任教授、医学部附属病院 脳神経外科の斉藤延人教授、そして同精神神経科の笠井清登教授の研究室を訪れました。研究室訪問(ツアー)後には懇親会が開かれ、参加者は研究者と直接話をし、より突っ込んだ説明を聞くことができました。

ブリーフィング:東京大学の神経科学研究
医学系研究科 神経細胞生物学分野 岡部繁男教授

東京大学では、神経科学研究は多岐にわたり、医学系研究科だけではなく医科学研究所、理学系研究科、工学系研究科など大学全体で幅広い研究が行われていると、岡部教授は強調しました。神経科学の研究は、心理学や言語学、社会学とも関連が深いことから、東京大学は関係各部や附置研究所間での共同研究、頻繁な意見や情報の交換、技術や研究試料の提供を行うには絶好の環境との説明がありました。中でも、医学系研究科では基礎的な研究から医学部付属病院と連携した臨床に関連するものまで行われている特徴があります。

ブリーフィングとツアー:縁の下の力持ち-細胞内輸送を担うモータータンパク質の機能と輸送メカニズム
医学系研究科 細胞生物学・解剖学分野 廣川信隆特任教授

ブリーフィングの後半では、廣川特任教授が長年取り組んできた細胞内の輸送に関わるモータータンパク質、キネシンスーパーファミリー(KIF)の研究を説明しました。廣川研究室では、神経細胞におけるKIFタンパク質の働きを明らかにしてきました。神経細胞では、タンパク質は細胞体で作られ、細胞体から伸びる軸索を通ってシナプスと呼ばれる神経細胞間の接合部位へと運ばれ、また、細胞体へと運ばれるため、神経細胞はKIFタンパク質の働きを調べるためにはうってつけです。電子顕微鏡観察、遺伝子配列解析、タンパク質相互作用解析、遺伝子改変マウスの作製、マウスの行動実験、X線結晶構造解析といった多様な手法を駆使して、KIFタンンパク質のほとんどがどのようにして積み荷のタンパク質を認識し、結合し、運び、そして目的地で降ろすのかを明らかにしてきました。研究の進展とともに、KIFタンンパク質は細胞内の輸送だけではなく、学習や記憶といった高次の脳機能にも関わっていることが分かってきました。ツアーでは、KIFタンパク質の研究に用いられているさまざまな装置を見学しました。

ツアー:マルチモーダル融合3次元コンピュータグラフィックスによる手術シミュレーション
医学部附属病院 脳神経外科 斉藤延人教授

医用画像技術の進歩のおかげで、脳神経外科医は術前の患者について多様な画像データを取得することができるようになりました。しかし、これらの画像データは、一人の患者につき、数百枚から数千枚に及ぶことが稀ではなく、脳神経外科医はこれらの画像データを解読しなければなりません。膨大な画像情報を自分たちの頭の中で時空間的に統合して、術前計画を立てるために頭の中で患者の脳を再構築しなければなりません。斉藤研究室では、膨大な画像情報を統合して、患者の脳の高解像度な3次元コンピュータグラフィックスを構築できる融合三次元画像構築法や画像処理技術を開発しました。ツアーでは開発したシステムを使って脳のさまざまな情報を融合して作った3次元画像をコンピュータやそれ用に設定されたiPad上で見たり、動かしたりするデモンストレーションを斉藤教授が行いました。このような脳の3次元画像は術前のシミュレーションを可能にし、また、経験の浅い若手医師の教育用にも特に有用です。

ツアー:精神疾患の早期で正確な診断を補助するためのバイオマーカーの開発
医学部附属病院 精神神経科 笠井清登教授

客観的なバイオマーカーは、早期に正確な精神疾患の診断と治療を可能にし、患者やその家族、ひいては社会に与える大きな疾病負担を減らせる可能性があります。しかし、現状は、患者本人や家族らの報告と医師による見立てにより精神疾患の診断は行われています。笠井研究室では、簡便で脳を傷つけることがなく、患者への負担も少なく精神疾患のための臨床応用が期待されている光トポグラフィー検査を精神疾患の新たなバイオマーカーとして注目しています。笠井教授らは世界に先駆けて、国内の医療・研究機関と共同で、光トポグラフィー検査を精神疾患の補助検査法として実用化する研究を行ってきました。ツアーでは、大規模な多施設研究で実際に行われている光トポグラフィー検査のデモンストレーションを笠井教授が行いました。

懇親会

懇親会には、ツアー参加者と研究者や大学関係者が集まりました。研究者自身の口から実際に行われている研究について話が聞けるこのような機会は重要という点が強調され、参加者からも大変好評のうちに終わりました。「このイベントに3回とも参加していますが、毎回毎回よくなって、興味深くなっていると思います」との感想を述べる参加者もいました。そして、研究者に個別の取材を後日に依頼したいという声も多く聞かれました。

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