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てんかんを知る

幼児期の複雑型熱性けいれんとの関連について

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薬学系研究科・薬学部
2012/11/22

てんかんは全身の激しい痙攣発作を伴う神経疾患で、患者数は世界の成人の1%にも及びます。その過半数を占める側頭葉てんかんは、薬物で抑えられない難治性の疾患です。側頭葉てんかん患者の多くは幼児期に、複雑型熱性痙攣という発熱時に長時間続く痙攣を経験しています。しかし、てんかんの原因は不明で、幼児期の痙攣との関連性もわかっていませんでした。

左:正常なラットの海馬。顆粒細胞(緑)は層状に存在する。神経信号は、歯状回門の外側から樹状突起を通して顆粒細胞に入力され、長い軸索を通してCA3野へ伝達される。それをCA3野の錐体細胞が受け取りCA1野へ伝える(黒矢印)。 右:熱性けいれんを生じたラットの海馬。不適切な場所に配置された顆粒細胞がCA3野にも顆粒細胞層にも軸索を伸ばし、さらに錐体細胞から顆粒細胞へ向かう異常回路が形成される。CA3野はてんかん発症に関係している。 © Yuji Ikegaya

解明のヒントは赤ちゃんの脳にあります。ヒトの海馬は3歳ごろまで未完成で、この時期に脳細胞が脳内で作られ正しい場所に配置されることによって神経回路が成熟します。ところが、側頭葉てんかん患者の脳では、海馬で厚い層を作る顆粒細胞の一部が不適切な場所にあることが知られています。成人のてんかん発症は、幼児期の神経回路の発達に関係があるのです。

今回、東京大学大学院薬学系研究科の小山隆太助教と池谷裕二准教授らの研究グループは、ラットを用いた実験において、てんかんの発症原因が、幼児期の熱性痙攣による海馬の発達障害であることを証明しました。

幼児期に熱性痙攣を起こしたラットの海馬にも、顆粒細胞の異所性が観察されました。熱性痙攣が起こると、顆粒細胞が神経伝達物質GABAによる興奮を受けやすくなり、その影響で適切に配置されなくなることがわかりました。研究グループは、GABAの興奮作用を担うNKCC1共輸送体を阻害するブメタニドを投与すると顆粒細胞の異常移動が阻止され、成長後のてんかん症状も抑制できることを突き止めました。

現在、幼児期の複雑型熱性痙攣の治療にはGABA賦活剤が用いられています。しかし今回のラットを用いた成果は、この治療法が将来のてんかん発症の危険を高めてしまう可能性を示唆しています。今後のさらなる研究が待たれます。

(東京大学本部広報室 南崎梓,ユアン・マッカイ)

プレスリリース本文へのリンク

論文情報

Ryuta Koyama, Kentaro Tao, Takuya Sasaki, Junya Ichikawa, Daisuke Miyamoto, Rieko Muramatsu, Norio Matsuki & Yuji Ikegaya,
“GABAergic excitation after febrile seizures induces ectopic granule cells and adult epilepsy”
Nature Medicine 18, 1271?1278 (2012). doi:10.1038/nm.2850
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大学院薬学系研究科・薬学部

薬品作用学教室

池谷裕二准教授

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