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育つ環境が賢さに影響を及ぼす 刺激の多い環境下での記憶・学習能力の向上にKIF1Aが不可欠

掲載日:2012年5月17日

コミュニケーションや運動などの刺激が多い環境は、記憶や学習能力を向上させることが知られています。さらに、アルツハイマー病などの脳神経疾患によい効果があることも分かってきました。

© Nobutaka Hirokawa

このような環境下では、記憶を司る海馬でのシナプス新生や、神経栄養因子BDNFという物質の増量など、脳内の神経細胞に変化が起こります。しかし、どのようなメカニズムで、刺激の多い環境が細胞や行動の変化を引き起こすのか、まだ解明されていません。

東京大学大学院医学系研究科の廣川信隆特任教授らは、神経細胞間の情報伝達に不可欠な物質を運ぶモータータンパク質として知られるKIF1Aが、刺激の多い環境下での記憶・学習能力の向上に重要な役割を担っていることを初めて示しました。

研究グループは、刺激の多い環境で育ったマウスの海馬においてBDNFがKIF1Aの発現量を増大させていることを突き止めました。遺伝子改変によってマウスのKIF1A発現を抑えると、刺激の多い環境下で生育しても、海馬のシナプス新生も、プールの中でゴールを探すなどの行動実験における学習能力の向上も見られませんでした。

刺激などの経験によって脳内に変化が生じる仕組みの解明は、脳神経疾患治療への新しいアプローチとして期待されています。今回の成果は、その基礎的理解を深める重要な一歩です。

(広報室 南崎 梓, ユアン・マッカイ)

プレスリリース本文へのリンク

論文情報

Makoto Kondo, Yosuke Takei, and Nobutaka Hirokawa,
“Motor protein KIF1A is essential for hippocampal synaptogenesis and learning enhancement in an enriched environment”,
Neuron Vol.73 Issue 4, 743?757, doi:10.1016/j.neuron.2011.12.020
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分子細胞生物学専攻 細胞生物学・解剖学講座 細胞生物学 廣川研究室

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