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生物時計の周期が約24時間を保つ不思議 温度変化の下で一定に概日リズムを保つメカニズムの発見

掲載日:2012年8月15日

Image ©Tomo.Yun

ヒトからバクテリアまで、多くの生物は体内に約24時間周期の時計を持っています。「概日リズム」と呼ばれるこの周期は、特定のタンパク質が繰り返す一連の化学反応で生み出されているのですが、実は、ここに数十年来の大きな謎があります。

それは、一般に化学反応は温度が高くなると反応速度が速くなるのに、なぜ、概日リズムの周期は温度変化によらず約24時間に保たれるのか、という問題です。以前は、生物の体が何か複雑で特別な仕組みを備えているからだと考えられていましたが、最近になって、試験管の中にたった3種類の特定のタンパク質を入れただけでも、温度に影響されない概日リズムを再現できることがわかり、謎は深まるばかりでした。

今回、東京大学大学院総合文化研究科の金子邦彦教授と畠山哲央(博士学生)は、とてもシンプルな仕組みで、概日リズムの一定性を説明することに成功しました。

彼らは、化学反応で使用できる酵素の量に注目しました。温度が高くなると、酵素と結合しやすい状態にあるタンパク質の割合が上がります。ただし、酵素全体の量は一定であるため酵素の取り合いとなり、使用できる酵素の量が減ってしまいます。金子教授らは計算機シミュレーションにより、温度による反応速度の上昇を、酵素の減少分がちょうど打ち消し、システム全体では、概日リズムが一定に保たれることを示しました。

この仕組みは、一連の化学反応の各ステップで同じ酵素を用いるシステムであれば成り立ちます。本成果は、概日リズムだけに限らず、外環境の変化のもとで生物が生体機能を維持していける仕組みに関わる一般原理につながる重要な鍵となるかもしれません。

(広報室 南崎 梓, ユアン・マッカイ)

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論文情報

Kunihiko Kaneko, Tetsuhiro Hatakeyama
“Generic temperature compensation of biological clocks by autonomous regulation of catalyst concentration”
Proceeding of the National Academy of Sciences of the USA, doi:10.1073/pnas.1120711109
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