ARTICLES

English

印刷

X線レーザーの集光強度を100倍以上向上 4枚の超高精度ミラーを駆使し50ナノメートル集光に成功

掲載日:2014年6月9日

強力なX線レーザーを発生させるX線自由電子レーザー(XFEL: X-ray Free Electron Laser)施設SACLAでは、生きた細胞の内部構造など、これまで観察が不可能であったものが観察できるようになりました。こうした研究では、物質に照射されるX線レーザーの強度が鍵を握り、強ければ強いほど新たな情報が得られます。

© 2014 三村秀和
4枚の鏡を利用した2段集光によるXFELナノビーム。
SACLAに新規に導入されたX線レーザーの集光システム。直線的に進むX線レーザーを一度拡大し、集光することでX線レーザーをナノメートルサイズに集めることができる。

これまでSACLAでは、日本が得意とする超精密加工を駆使した超高精度ミラーによりマイクロビームを実現し、世界に先駆けて最も高い集光強度(6×1017W/cm2)を実現していましたが、その強度でもなお観察できていない物理現象もあり、X線を更に微小に集光することで強度を向上させる、複雑なシステムが必要でした。

一般に使われているカメラや顕微鏡には複数のレンズやミラーが組み込まれています。これは、光を拡大や縮小を繰り返すことで光のサイズや、観察領域の視野や分解能を向上できるからです。しかし、波長の短いX線レーザーでは、十分に高い精度のミラーを準備できてもそれを高精度に制御する必要があり、一般的なカメラのようにこれまで複数のミラーを用いた複雑なシステムは実現されていませんでした。

東京大学大学院工学系研究科の三村秀和准教授と大阪大学大学院工学研究科の山内和人教授らは、公益財団法人高輝度光科学研究センター、及び独立行政法人理化学研究所と共同で、SACLAにおいて、世界で初めて集光強度1020W/cm2のX線レーザービームを確認しました。X線レーザーの高精度波面計測、高精度ミラー姿勢制御装置を導入することで、4枚の超高精度ミラーから構成された複雑なシステムを開発しました。そして、30ナノメートル(縦)×55ナノメートル(横)のサイズに集光し、1020W/cm2という、 従来に比べて大幅(100倍以上)に集光強度を向上させることに成功しました。

今回実現した1020W/cm2X線レーザーにより宇宙物理、高エネルギー物理や量子光学などの基礎物理分野において、未だ観察されていないさまざまな物理現象の発見が期待されます。

プレスリリース

論文情報

Hidekazu Mimura, Hirokatsu Yumoto, Satoshi Matsuyama, Takahisa Koyama, Kensuke Tono, Yuichi Inubushi, Tadashi Togashi, Takahiro Sato, Jangwoo Kim, Ryosuke Fukui, Yasuhisa Sano, Makina Yabashi, Haruhiko Ohashi, Tetsuya Ishikawa, and Kazuto Yamauchi,
“Generation of 1020Wcm-2 hard X-ray laser pulseswith two-stage reflective focusing system”,
Nature Communications Online Edition: 2014/4/30, doi: 10.1038/ncomms4539.
論文へのリンク

リンク

大学院工学系研究科

大学院工学系研究科 精密工学専攻

大学院工学系研究科 精密工学専攻 国枝・三村研究室

X線自由電子レーザ施設SACLA

大型放射光施設SPring-8

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる