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Research News

多能性幹細胞から三次元骨様組織の作製に成功

培養皿上での機能的な三次元骨組織の再現を目指して

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医学系研究科・医学部
2017/06/27

© 2017 Shinsuke Ohba.(A)位相差像。担体内部の小孔に細胞が凝集して存在する。(B)骨芽細胞マーカーであるSP7蛋白質の発現(赤)。担体内部の細胞がSP7陽性の骨芽細胞であることを示す。(C)核染色像(青)。(D)A、B、Cの重ね合わせ像。

マウスES細胞由来三次元骨様組織断面の組織像
(A)位相差像。担体内部の小孔に細胞が凝集して存在する。(B)骨芽細胞マーカーであるSP7蛋白質の発現(赤)。担体内部の細胞がSP7陽性の骨芽細胞であることを示す。(C)核染色像(青)。(D)A、B、Cの重ね合わせ像。
© 2017 Shinsuke Ohba.

東京大学大学院医学系研究科の大庭伸介准教授、鄭雄一教授らの研究グループは、薬剤のみを誘導剤として用い、組成が不明なものを一切含まない(培地や担体の組成の全てが明らかな)培養系で、あらゆる組織に分化できる能力(多能性)と無限の増殖能を持つマウス多能性幹細胞から三次元的な骨様組織を作製する方法を開発しました。本研究成果は、生体内の臓器を模倣した三次元組織を培養皿上や試験管内で作製する基盤技術となると期待されます。

胚性幹細胞(ES細胞)や体細胞を初期化することで多能性が獲得される人工多能性幹細胞(iPS細胞)といった多能性幹細胞から種々の細胞を作製し、培養皿上で三次元的に自己組織化させて、組織様構造体(オルガノイド)を作ることは、再生医療のみならず、組織形成過程の理解や治療用薬剤の開発に貢献すると考えられます。作製にあたっては、安全性やコストの観点から、従来から用いられてきたウシ胎仔血清のように組成が不明なものや、遺伝子導入、組換えタンパク質を使用しないことが理想的です。

大庭准教授らの研究グループは2014年に、4種類の薬剤のみを誘導因子として用いることで、多能性幹細胞から発生の初期過程において分けられる三つの区域の一つであり、骨格、筋肉、心臓、血管などのもととなる中胚葉を経由して効率的に骨芽細胞(骨形成性細胞)を誘導する方法を開発しました。

本研究では、この誘導方法を、生体に存在するコラーゲン分子から免疫反応を起こす性質を除去したアテロコラーゲンのスポンジを担体として用いた三次元培養系に応用することで、マウス多能性幹細胞から骨芽細胞・骨細胞を誘導し、三次元的に骨様組織を作製することに成功しました。さらにこの培養系において、マウスES細胞から骨細胞を誘導したのちに破骨細胞(骨吸収性細胞)の前駆細胞を担体中に加えると、担体内で破骨細胞が形成されました。これは、本法によりマウスES細胞から誘導された骨芽細胞・骨細胞が、生体内と同様に破骨細胞形成誘導能を有し、機能的であることを示唆しています。

「本研究は、骨芽細胞・骨細胞・破骨細胞という骨の形成と維持を制御する細胞が三次元的に機能する骨様組織を、多能性幹細胞を用いて培養皿上・試験管内で作製できる可能性を提示するものです。」と大庭准教授は話します。「骨粗鬆症をはじめとした種々の骨疾患の治療薬開発や骨再生医療のみならず、骨組織に生じる疾患の理解や骨組織の形成と維持のメカニズムの理解に貢献することが期待されます。」と続けます。

本研究の内容は、2017年5月12日に、米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science: AAAS)のオンライン科学雑誌「Science Advances」で発表されました。

プレスリリース

論文情報

Denise Zujur, Kosuke Kanke, Hironori Hojo, Alexander C. Lichtler, Ung-il Chung, Shinsuke Ohba, "Three-dimensional system enabling the maintenance and directed differentiation of pluripotent stem cells under defined condition", Science Advances Online Edition: 2017/05/12 (Japan time), doi:10.1126/sciadv.1602875.
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