UTokyo Research

  • Japanese
  • English
検索閉じる
言語閉じる
  • 日本語
  • 英語
Research News

ツメガエル胚の細胞にかかる張力を調べる

細胞を傷つけることなく、生きたまま観測することに成功

タグ

総合文化研究科・教養学部
2016/08/09

© 2016 Satoshi Yamashita, Tatsuo Michiue. Transferred from the paper (experiments carried out by SY).(上)  FRET現象は、2つのタンパク質の距離が離れると起こらず、近いと起きます。張力が弱い時には2つの蛍光タンパク質の距離は、縮まり高いFRET値を示します。一方、張力が強くかかると距離が広がりFRET値が低くなります。(下)アフリカツメガエルの胚において、将来的に神経系に発生する領域では張力が強く、将来的に表皮に発生する領域では張力が弱いことがわかりました。

張力プローブ(FRETプローブ)を用いたアフリカツメガエル胚の張力実測
(上)  FRET現象は、2つのタンパク質の距離が離れると起こらず、近いと起きます。張力が弱い時には2つの蛍光タンパク質の距離は、縮まり高いFRET値を示します。一方、張力が強くかかると距離が広がりFRET値が低くなります。(下)アフリカツメガエルの胚において、将来的に神経系に発生する領域では張力が強く、将来的に表皮に発生する領域では張力が弱いことがわかりました。
© 2016 Satoshi Yamashita, Tatsuo Michiue. Transferred from the paper (experiments carried out by SY).

東京大学大学院総合文化研究科の道上達男教授、山下慧研究員、石鍋菜々子大学院生、坪井貴司准教授らの共同研究グループは、2種の蛍光タンパク質とそれらを連結する「ばね」タンパク質、およびアクチン結合タンパク質であるアクチニンから構成されるいわゆる「張力プローブ」をアフリカツメガエルの胚に導入し、胚の外胚葉細胞全体にかかる張力を、細胞を傷つけることなく、生きた状態のままで実測することに成功しました。

近年、細胞にかかる張力(細胞膜が内側で引っ張られる力)が細胞分化や形態形成に重要であることを示すメカノバイオロジー研究は、生物学の新しい潮流の一つとして注目されています。細胞にかかる張力を計測する手法は、これまで様々な方法が開発されてきましが、多数の細胞の張力を同時に計測することができない、細胞を傷つけずに張力が計測できないなどの問題があります。

そのような中、一方の蛍光タンパク質から発せられたエネルギーが別の蛍光タンパク質に移り蛍光が発せられる現象(FRET現象)を利用した張力の計測法が2011年に初めて報告されて以来、関心を集めています。しかし、FRET現象を用いて胚の全細胞にかかる張力を計測できた研究はこれまでほとんど報告されていません。

今回、共同研究グループは、これまでよく使われてきた2つの蛍光タンパク質(CFPとVenus)とは異なる組み合わせ(GFPとmCherry)を用い、ばねタンパク質としてクモの糸に含まれるタンパク質(SpiderSilkタンパク質)、アクチン結合タンパク質としてアクチニンを用いた張力プローブを作りました。この張力プローブの機能を培養細胞で試した結果、予想通りの働きが確認されました。加えて、アフリカツメガエルの胚に張力プローブを微量注入したところ、外胚葉の場所に応じてかかる張力に違いがあること、特に外胚葉のうち将来的に神経系に発生する領域では、将来的に表皮に発生する領域よりも強い張力がかかっていることを見出しました。

「ツメガエルの胚全体の張力の強弱を生きたまま細胞単位で実測できたのは、線虫で成功した唯一の例を除いて世界で初めてです」と道上教授は話します。「蛍光タンパク質やバネタンパク質の組み合わせを変えたのが、今回の成果の鍵でした。ツメガエルの胚は蛍光イメージングには必ずしも適していないにもかかわらず今回FRET計測ができたことは、この張力プローブが他の多くの胚や組織、臓器に適用できる可能性があります。今後多くの研究者に利用されれば」と期待を寄せます。

なお、本成果は早稲田大学の北口哲也准教授との共同研究によって得られものです。

論文情報

Satoshi Yamashita, Takashi Tsuboi, Nanako Ishinabe, Tetsuya Kitaguchi, Tatsuo Michiue, "Wide and high resolution tension measurement using FRET in embryo", Scientific Reports Online Edition: 2016/06/23 (Japan time), doi:10.1038/srep28535.
論文へのリンク(掲載誌

関連リンク

大学院総合文化研究科

大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系

大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系 道上研究室

前の投稿へ 次の投稿へ
Page Top