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繊毛の長さを決めるメカニズムの解明 繊毛のハサミKIF19Aの発見

掲載日:2012年11月22日

野生型マウスとKIF19Aノックアウトマウスの卵管の顕微鏡像 © Nobutaka Hirokawa and Shinsuke Niwa
KIF19Aノックアウトマウスの卵管では繊毛が2-3倍の長さになっているのが見られる。この結果、KIF19Aノックアウトマウスでは卵管閉塞による女性不妊が引き起こされていた。

東京大学大学院医学系研究科 廣川信隆特任教授、丹羽伸介特任研究員らの研究グループは、繊毛の長さを決める新しいモーター蛋白質KIF19Aを発見しました。

我々人間を含む哺乳類の脳室や卵管などには、繊毛と呼ばれる長さ5~10ミクロンほどの「動く毛」が生えており、この繊毛の運動によって脳脊髄液の循環や卵巣から子宮への卵子の輸送などが行われています。繊毛の運動や長さの異常は、水頭症や不妊症などの病気を引き起こすことが知られていますが、50年以上もの間、繊毛の長さを決めるメカニズムは謎のままでした。

研究グループは、新しいモ―ター蛋白質KIF19Aが繊毛の先端に局在することに着目し、試験管内の実験でKIF19Aタンパク質が伸びすぎた繊毛の先端を切りそろえるハサミとして働くことを発見しました。

また、KIF19Aタンパク質が働かないマウスを作成したところ、繊毛の長さが2倍から3倍になり、繊毛がうまく動けずに適正な水流を生じることが不能となることを発見しました。このマウスでは水頭症や卵管閉塞による女性不妊といったヒトの病気と同じ症状が見られます。

 

今回の成果より、水頭症や不妊症のリスクの予測や予防、正確な遺伝子診断や遺伝子治療に結びつく可能性があります。

この成果はDevelopmental Cell誌電子版に11月15日付で掲載されました。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Shinsuke Niwa, Kazuo Nakajima, Harukata Miki, Yusuke Minato, Doudou Wang, Nobutaka Hirokawa,
“KIF19A is a microtubule-depolymerizing kinesin for ciliary length control”,
Developmental Cell Online Edition: 2012/11/16AM2:00 (Japan time), doi: 10.1016/j.devcel.2012.10.016.
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