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柔軟な熱伝導材料としてのカーボンナノチューブ膜 引き裂きと絡みつきが決める単層カーボンナノチューブ膜の弾性係数

掲載日:2013年12月26日

熱電変換によって自動車の排気などの比較的低温の廃熱を利用した発電は、新規のエネルギー有効利用技術として期待されているが、熱電変換素子と高温・低温電極との接合部の劣化が装置設計の大きな問題となっている。この問題を解決できる素材として、機械的に柔軟で高い熱伝導率を有する単層カーボンナノチューブ(CNT)の垂直配向膜の活用が期待されている。

© 丸山茂夫, (左図)単層CNTの垂直配向膜のイメージ図。ファンデルワールス力による単層CNTの引き裂きと絡み合いを表現している。(右図)単層CNTの垂直配向膜の内部構造

東京大学大学院工学系研究科 機械工学専攻の丸山茂夫教授らは、スタンフォード大学のケン・グッドソン教授らや中国中山大学の項 榮准教授との共同研究により、単層CNTの垂直配向膜の膜平面方向の弾性係数(材料の変形しにくさを表す値)が、「CNT束の引き裂きと絡みつき」によって決まることを見出した。膜の上部に存在するランダムな構造部分とそれ以外の高配向性の部分とで異なる力学特性を有していることが分かった。ランダム構造部分はCNTの曲げが弾性係数を決める主因であり、それ以外の高配向部分では、ファンデルワールス力(分子と分子の間に働く弱い力で、本研究では共有結合をしていない炭素原子間に働く力)によるCNT束の引き裂きと絡み合いが主な決定因子となっていることが明らかになった。本研究はこれまで単層CNTの垂直配向膜の微細構造の複雑さゆえに困難であった力学特性を、実験と粗視化分子動力学シミュレーションを組み合わせることにより解明した。

このような、単層CNT膜の微細構造と弾性係数、熱伝導率および導電率を結びつける解析技術は、透明かつ柔軟な薄膜トランジスター、太陽電池や柔軟な透明導電膜などの単層CNT応用デバイスを設計する際の指針となることが期待される。

プレスリリース

論文情報

Yoonjin Won, Yuan Gao, Matthew A. Panzer, Xiang Rong, Shigeo Maruyama、 Thomas W. Kenny, Wei Cai, Kenneth E. Goodson,
“Zipping, entanglement, and the elastic modulus of aligned single-walled carbon nanotube films”,
Proceedings of the National Academy of Sciences 2013, 110 (51), pp. 20347-20348. Online Edition: 2013/12/5, doi: 10.1073/pnas.1312253110.
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リンク

大学院工学系研究科

大学院工学系研究科 機械工学専攻

大学院工学系研究科 機械工学専攻 丸山・塩見・千足研究室

MARUYAMA’s カーボンナノチューブとフラーレン

丸山茂夫教授のHP

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