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たった一個のDNAがもたらす性決定 トラフグ性染色体の雌雄差は一塩基のみだった

掲載日:2012年8月9日

ヒトの性を決定しているSRY遺伝子はY染色体にあって、X 染色体上には存在しない。これら二つの染色体のDNA配列は著しく異なっていることが知られており、ヒト以外の脊椎動物においても、性染色体間の配列はかなり異なっていると考えられていた。ところが、東京大学大学院農学生命科学研究科の菊池潔 助教らの研究により、トラフグのY染色体とX染色体の間に常に認められる差は、たった一つのDNA塩基であることが判明した。

(左)トラフグのY染色体とX染色体の配列は、常に一カ所だけ異なっている。このDNA塩基は、抗ミュラー管ホルモンII型受容体遺伝子上にある。(右)野生のトラフグ。本研究では、野生の魚がもつゲノムの多様性を解析に活用した。 © Naoki Mizuno

本研究により、これまで仮説でしかなかった「性染色体が分化する初期段階」が実在することが示された。基礎科学への大きな貢献に加えて、本研究からは、産業および文化上の波及効果も期待できる。フグの精巣は、我が国では食材として珍重されてきたが、トラフグの雌雄を外見から判別することは困難であった。本研究の成果は雌雄判別法の確立へと結びつき、食材としての「白子」の安定供給に寄与するだろう。また、フグを殺すことなく雌雄を見分けることが可能となるので、「野生集団の雌雄比」を知ることが容易となり、枯渇が懸念される野生フグの保護や生態把握が促進される。

プレスリリース

論文情報

Takashi Kamiya, Wataru Kai, Satoshi Tasumi, Ayumi Oka, Takayoshi Matsunaga, Naoki Mizuno, Masashi Fujita, Hiroaki Suetake, Shigenori Suzuki, Sho Hosoya, Sumanty Tohari, Sydney Brenner, Toshiaki Miyadai, Byrappa Venkatesh, Yuzuru Suzuki, Kiyoshi Kikuchi,
“A Trans-Species Missense SNP in Amhr2 Is Associated with Sex Determination in the Tiger Pufferfish, Takifugu rubripes (Fugu)”,
PLoS Genetics 8 2012: e1002798, doi: 10.1371/journal.pgen.100279.
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