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次世代パワーデバイスの理想性能に近づく絶縁膜材料作製手法を開発 SiCとゲート絶縁膜の界面欠陥解消によるデバイス性能向上へ

掲載日:2014年8月6日

大電流・高電圧あるいは、高周波数の電力制御に用いられるパワーデバイスは、高性能化によって大きな省エネルギー効果が見込める技術ですが、中でも炭化ケイ素(SiC)を使ったものは従来の材料(シリコン)に比べて低エネルギー損失での動作が期待されています。しかし、SiCのトランジスターは電気抵抗が高く、また動作信頼性が低いなどの課題があり、その大きな原因となる、ゲート絶縁膜である二酸化ケイ素とSiCの界面での不純物の混入や原子の過不足による構造の乱れ(欠陥)を低減することが求められています。

(c) 2014 喜多 浩之。(左) SiC/SiO2界面酸化の模式図。界面欠陥の低減には、副生成物の炭素を一酸化炭素として脱離させることが有効。(右)本研究で得られた4H-SiC/SiO2界面の欠陥準位密度を従来の報告値と比較した。実線は本研究結果、また、斜線領域は従来報告されている典型的な値を示す。横軸には、界面欠陥準位のエネルギーをSiCの伝導帯エネルギー端を基準にとって示した。

© 2014 喜多 浩之
(左) SiC/SiO2界面酸化の模式図。界面欠陥の低減には、副生成物の炭素を一酸化炭素として脱離させることが有効。(右)本研究で得られた4H-SiC/SiO2界面の欠陥準位密度を従来の報告値と比較した。実線は本研究結果、また、斜線領域は従来報告されている典型的な値を示す。横軸には、界面欠陥準位のエネルギーをSiCの伝導帯エネルギー端を基準にとって示した。

東京大学大学院工学系研究科の喜多 浩之准教授らは、ゲート絶縁膜を形成する際に、副生成物として生じる炭素を一酸化炭素(CO)として排出する反応条件を用いることで界面欠陥が減少することを発見し、試作したMOS(金属―酸化膜―半導体)構造の欠陥の密度が世界最小値となることを実証しました。

本手法は、窒素系ガスを添加するなどの付加的プロセスなく、高品質の界面を実現したものであり、産業上の利用価値も高い手法です。本手法によってSiCパワーデバイスの性能向上と普及が進めば、送電、電気自動車、工場設備など多くの用途で省エネルギー効果が期待できます。

プレスリリース (JST)

論文情報

Richard Heihachiro Kikuchi and Koji Kita,
“Fabrication of SiO2/4H-SiC (0001) Interface with Nearly-Ideal Capacitance-Voltage Characteristics by Thermal Oxidation”,
Applied Physics Letters Online Edition: 2014/07/25 (Japan time), doi: 10.1063/1.4891166.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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