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オートファジーはマウスの聴覚に重要である 聴覚の感覚細胞の形態維持に働く

掲載日:2017年7月13日

© 2017 Chisato Fujimoto.14日齢以降において細胞の障害が進行している。スケールバー: 10 µm.

Atg5欠損有毛細胞における走査型電子顕微鏡所見
14日齢以降において細胞の障害が進行している。スケールバー: 10 µm.
© 2017 Chisato Fujimoto.

東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の藤本千里助教、山岨達也教授らの研究グループは、細胞の恒常性維持に寄与し、細胞内の主要分解機構の一つであるオートファジーが、マウスの聴覚機能に重要な役割を果たすことを明らかにしました。本成果により、オートファジーと聴覚障害の病態形成との関連性について、さらなる研究の進展が期待されます。

聴覚系の感覚細胞である蝸牛有毛細胞は、一度障害されると機能的回復は困難であり、その恒常性維持は聴覚機能に非常に重要です。

今回研究グループは、オートファジーに必須の遺伝子であるAtg5(autophagy-related 5)を有毛細胞にて欠損させた遺伝子改変マウスを作製し、有毛細胞におけるオートファジー活性が聴覚機能および細胞形態に及ぼす影響を検討しました。有毛細胞におけるAtg5の欠損により、マウスは先天性の高度難聴を呈しました。また、Atg5欠損マウス有毛細胞の組織学的検討では、5日齢では正常の細胞形態でしたが、14日齢において聴毛の変性、および一部の細胞の脱落を認めました。8週齢においては、有毛細胞の変性がさらに進行していました。

本研究により、有毛細胞における恒常的オートファジーは聴覚機能および細胞形態の維持に重要であることが示されました。

近年オートファジーは、さまざまな病態との関連が指摘されているが、内耳有毛細胞における役割については知られていなかった」と藤本助教は話します。「本研究を契機に、聴覚障害の病態形成におけるオートファジーの関与について、新たな知見が蓄積することを期待したい」と続けます。

プレスリリース

論文情報

Chisato Fujimoto, Shinichi Iwasaki, Shinji Urata, Hideaki Morishita, Yuriko Sakamaki, Masato Fujioka, Kenji Kondo, Noboru Mizushima and Tatsuya Yamasoba, "Autophagy is essential for hearing in mice", Cell Death and Disease Online Edition: 2017/05/11 (Japan time), doi:10.1038/cddis.2017.194.
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大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

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