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止まっている図形に動きを感じる錯覚をつくりだす脳 誘導運動錯覚のヒト大脳皮質における神経相関を解明

掲載日:2013年3月7日

私たちは物を見るとき、対象物だけでなく周りにあるものとの関係を計算に入れて、その物を含む世界を心の中に構築しています(文脈効果)。動きの文脈効果には、周辺が動いていると静止図形が反対方向に動いて見えるという誘導運動錯覚があります。この心理現象と脳活動を直接対応させた研究はこれまでありませんでした。この現象は、背景中に他と異なる動きをする対象を抜き出すという基本的な情報処理と関連するため、誘導運動とその神経対応を解明することで視覚の本質に迫れます。


© Ikuya Murakami

東京大学大学院総合文化研究科の竹村浩昌博士研究員と村上郁也准教授らは、誘導運動錯覚を体験している際のヒト実験参加者の大脳皮質の活動を記録して、誘導運動の神経相関を同定しました。

実験では、中心部と周辺部からなる同心円領域に視覚刺激図形を提示します。周辺部の図形を一方向に動かすと、中心部が静止していれば誘導運動が生じます。中心部で誘導運動の相殺に必要な相殺速度で動く図形を与えると、物理的に運動、主観的に静止していることになります。誘導運動が生じると応答が生じ、相殺速度のときに視覚応答が最小になる大脳皮質領域、つまり誘導運動の神経相関が同定できました。

空間的文脈の知覚特性を利用すれば、錯覚の力で感度がよくなる「錯視メガネ」のような応用も考えられ、錯覚現象とその神経基盤の解明は視覚弱者の感度増強につながることが期待される貴重な研究です。

プレスリリース

論文情報

Hiromasa Takemura, Hiroshi Ashida, Kaoru Amano, Akiyoshi Kitaoka, Ikuya Murakami,
“Neural correlates of induced motion perception in the human brain”,
Journal of Neuroscience Online Edition: 2012/10/10 (USA Eastern time), doi: 10.1523/JNEUROSCI.0570-12.2012
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