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脳内マリファナは大雑把に一括処分される ~脳内マリファナ類似物質のシナプス周辺での分解の仕組みを解明~

掲載日:2012年9月11日

脳の神経細胞の活動が高まると、マリファナに似た作用を持つ「2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)」という物質が作られる。2-AGはシナプスに働いて神経伝達物質の放出を抑え、シナプス伝達の強さを調節することが知られているが、その役割を終えた後、どのようにシナプス周辺から取り除かれるのかが分かっていなかった。


MGLは、平行線維終末(赤)とバーグマングリア(ピンク)の細胞質にのみ発現する© Masanobu Kano
登上線維終末(青)と星状細胞軸索終末(深緑)にはMGLは存在しないが、ここに作用した2-AGは、周囲を取り囲む平行線維とバーグマングリアのMGLによって分解されると考えられる。一方、平行線維終末やバーグマングリアから離れている籠細胞に作用した2-AGは、MGLによる分解を受けにくいものと考えられる。

東京大学大学院医学系研究科の狩野方伸教授らは、2-AGの分解酵素であるモノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)が、小脳のプルキンエ細胞の4種類のシナプスのうち、平行線維のシナプス終末と周辺のグリア細胞にのみ存在することを確認した。MGLを持たないマウスと正常マウスを比較すると、平行線維シナプスだけでなく、その他のMGLが存在しないシナプスに作用した2-AGも、シナプスの種類に関係なく“非特異的”に分解されることが分かった。即ち、脳は2-AGの分解に関しては、大雑把な省エネ戦略をとっていると言える。

2-AGの作用を強めることで、抗不安、抗うつ、鎮痛などの効果が得られることが知られており、MGLの働きを阻害して2-AG分解を抑制することで新たな治療薬の開発につながることが期待される。

プレスリリース

論文情報

Asami Tanimura, Motokazu Uchigashima, Maya Yamazaki, Naofumi Uesaka, Takayasu Mikuni, Manabu Abe, Kouichi Hashimoto, Masahiko Watanabe, Kenji Sakimura and Masanobu Kano,
“Synapse type-independent degradation of the endocannabinoid 2-arachidonoylglycerol after retrograde synaptic suppression”,
Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA Online Edition: 2012/7/10 (Japan time), doi: 10.1073/pnas.1204404109.
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